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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第87話 俺は魔力検査に備える

 翌朝ラジオ体操の為に起き出すと宴会はまだ続いていた。ドーラさんとバスコさんと父さんと母さん。4人は徹夜で飲み食いを続け、シビルさんは無理せず客間で休んでいるらしい。

 庭へ行く前に食堂へ顔を出し、挨拶をする。


「おはよう、早起きだな」


 ドーラさんが元気よく反応する。俺が寝る前より元気になっているのはどういう理屈なんだ。母さんとバスコさんは普通だけど、父さんは真っ青な顔でフラフラしている。あんな様子で今日の仕事は大丈夫なんだろうか。


 酒飲み達は放っておいて庭へ向かう。皆でラジオ体操を始めると父さん達もやって来た。無理してやらなくてもいいと思うんだけど、フラフラで運動するのは危ない。ドーラさんは見学するだけだったがバスコさんはクロエさんに習いながら体操を行った。その後のランニングにもバスコさんは参加したが、お酒が入っているとは微塵も感じられないほど元気だ。


「早朝から体を動かすのは気持ちいいな。王都に居る間は毎日参加しよう」


「まだ暫く王都に居るんですか?」


 ランニングが終わり女性陣が汗を流す間にバスコさんと会話をする。

 ランニングに参加するのは良いんだけど、毎日宴会になるのは少し困る。父さんが仕事に行かなくなる気がして怖い。


「何時まで居るかはドーラの気分次第だから俺には分からん。特に用事もないはずだから暫く動かないとは思うが、俺はまだ秘技を教え終わってないからその方が助かる」


「クロエさんは秘技を覚えられそうですか?」


「そうだな、頑張れば一月もかからず覚えられるだろう。その前にアリーの方が覚えそうで俺は驚いている。人族が覚えられるなら面白いな。ゲオルグもやってみるか?」


「俺は明日魔力検査なんで、それが終わったら参加させてください」


「魔力検査か。獣人族は参加しないから助言は出来ないが、検査を受けなくても死ぬことは無いんだ。気楽に頑張れよ」


「俺は獣人族も参加するべきだと思います。魔力はきっとあるはずですから」


「う~ん。秘技を他人に見せるのを嫌がる種族も居るから、参加可能になっても参加したがらないだろうな。秘技は一族で受け継ぎ守っていく物と考えている獣人がほとんどだぞ」


「バスコさんとクロエさんは同じ一族では無さそうですが、そこは気にしないんですか?」


「俺が個人的に気にしないだけで、同族に知られたら止めろと言われるかもしれん。クロエの種族の方がもっと厳しいとは思うが」


「そう言えば王子を誘拐した1人がクロエさんは珍しい種族だって言ってましたけど、そうなんですか?」


「ああ、この国では珍しいな。クロエは見た目から判断すると天狐種だ。天孤は綺麗な容姿と華麗な秘技を持つから、昔はよく人族やドワーフ族に攫われ見世物にされたらしい。百年ほど前に海の向こうの大陸へ逃げてからは、こっちの大陸には集落が無いはずだ。クロエは幼い時に向こうの大陸から連れて来られたんだろうな」


「そうなんですか。クロエさんの昔話は聞いたことがありませんでした。向こうの大陸に連れて行って親元に帰してあげた方が良いんでしょうか」


「ゲオルグ、そんな言い方はクロエを傷つけるだけだぞ。あいつは今、この地で生きて行こうと必死に頑張っている。農業も、秘技も、な。クロエの事を思うなら、あいつが求めた時に手を差し伸べてやればいい。何時でも助けられるよう力を磨く事がクロエの為になると思うぞ」


「わかりました。クロエさんの願いを叶えられる男になるよう頑張ります」


 勢いでバスコさんと変な約束をしてしまった気がする。とりあえず明日の魔力検査を頑張ろう。




 日中は鍛冶屋の工房で魔導具の最終確認を行った。技能試験で使うのは4つ目の魔石で作り上げた魔導具達。3回目の制作でもまだ改善点が見つかったため、ソゾンさんに魔石を1つずつ売ってもらって作ったんだ。

 よし、魔導具の動作も問題無いし、新たに調整するべき所も無かった。細工は流々仕上げを御覧じろってね。


 時間はあるし、もう一回チェックしようかな。




 帰り道にちょっと寄り道をして、両教会でお祈りをした。特に神様達の力を借りる場面でもないんだが、大事な試験や試合の前に近所の神社へ参拝に行っていた前世の習慣だ。中学に入って敵が居なくなり、調子に乗り出してからはやらなくなったけど。


 夕食は俺の希望でトンカツにしてもらった。これも前世の習慣。母親が験を担ぐ人だったからな。中学に入ってもう必要無いと言っても、必ず試合前日には食卓に上った物だ。


 トンカツを食べて風呂に入り、前世の事を思い出しながら眠りについた。

 この世界に来て初めて、前世の両親と妹の夢を見た。妹が生まれてから、俺が死ぬまでの断片的な夢。途中に出て来た傲慢な態度を取る俺が心底憎たらしく思えた。中学生のくせに調子に乗りやがって。その人を見下したような笑い方を止めろ。そう思った次の瞬間には病院の受付で俯く俺が居た。前世では色々あったが、俯瞰して見たら嫌な人間だった。その教訓を基に今世では悔い改めようと再確認した時、目が覚め魔力検査の当日を迎えた。


 さあ、涙を拭いてまずはラジオ体操だ。

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