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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第77話 俺は嫌な予感を抱く

「第二王子と第二妃が関わっているかはわからないが、公爵が一因なのは確かだ。さてここで質問だが、公爵がこのまま我々や王子を生かしておくと思うかな」


 ドーラさんの問い掛けにしばらく考え、思いついたことを口にする。


「貴女達と王子を殺して、貴女達を犯人とする。もしくは王子だけ助けて第三王子派に取り入る。俺達は殺されるか、よくて奴隷だね」


「ぼ、僕の事はいいので、この人達は解放してください」


 話を聞いていた王子が俺達を助命するようドーラさんに懇願する。

 俺達の事まで心配してくれる王子はいい人だな。王子に静かにするよう指示し、ドーラさんが話を続ける。


「そうならないよう手は打ってあるが、上手くいくかは分からん。上手くやるためにも、君達の協力が欲しい」


「俺達に何かさせようというんですか?」


「何も。とりあえず騒がずに私達の指示に従ってほしい」


 これから何かやる気なんだろか。この3人で王子を護って反乱でも起こすのか?

 3人で相談したいと時間をもらうと、ドーラさんは余裕たっぷりでどうぞと言って来た。

 ドーラさんを視界に納めたまま姉さん達と話し合う。


「これからどうするつもり?」


 姉さんが口を開く。


「ドーラさんがどういうつもりなのか分からないけど、助けてくれるっていうなら話に乗ってもいいかなと思う。もう少し詳しく話を聞きたいけど」


「話に乗るのは賛成ですが、大人しくする代わりに縛られないように持掛けましょう。あのうねうね動く植物は苦手です」


 農業大好きなクロエさんでもあの魔植物は気持ち悪かったか、姉さんもあれは嫌だねと笑っている。この状況でよく笑えるよと感心する。


 笑顔の2人に釣られて無理矢理笑っていると、エルフのシビルさんが屋敷に入って来た。

 この状況を見ても特に驚いた様子は無く、見回りの結果をドーラさんに報告する。


「ドーラ、北から50人ほどがやって来る。兵装は兵士の物じゃなかった。それからこの村、人っ子一人いない」


 この規模の屋敷が有る村で無人?

 何処かへ移動させられたか、最悪皆殺しにされたか。

 それをする理由はなんだ。北から来ると言う人間は何をしようとしている?

 まだ王子が誘拐されてこの村に居ると言う情報は広まってないだろう。王都から助けが来るなら南側から来るはず。本当にドーラさん達も纏めて殺そうとしている?

 村内での戦闘による被害者や目撃者を出さないために無人にしたのか。それともこのまま村ごと焼き払うためか。


 どちらにしろその50人と戦闘になるのなら、ここは手を組んでおいた方が良い。50人が俺達を見逃してくれる保証はない。


 俺の提案に2人も納得してくれた。ではこれからどうするか。

 クロエさんはバスコさんの捕縛を解いて連れて来て。

 姉さんは俺の剣に念のため金属魔法で強化をお願い。


「俺達は貴女達に従います。これからバスコさんを解放しに1人を向かわせます。逃げるつもりではありません。2人が帰って来たらこれからどうするのか詳しく聞かせてください」


 ドーラさんの承諾を経て、クロエさんが走っていく。

 俺は剣を抜いて姉さんに手渡す。魔法を込める様子を王子が興味深そうに観察していた。


 ドーラさんに指示され、シビルさんが王子の捕縛を解く。切断することなく草木魔法で魔植物を解いて行く。動く魔植物がくすぐったいのか、あっ、とか、そこはっ、と声を漏らす。聞いてるこっちが恥ずかしくなるから止めて欲しい。

 解かれた魔植物はそのまま床を這って屋敷から出て行った。その辺で植わって成長を続けるんだろうか。もしあれが実家の敷地内に植わってると思うと、あまりいい気はしないな。


「すみません、水を一杯頂けませんか?」


 解放された王子からの一言。さっきから泣いたり叫んだりで喉が渇いたんだな。姉さんが笑って水筒を出している。

 ついでに姉さんもクッキーを取り出して食べ始める。もはや遠足気分だな。


 王子が水を飲み込んだところで、クロエさんとバスコさんが2人仲良く戻ってきた。

 この短い時間にいったい何があったんだ。俺ですらそんなにボディータッチしたことないぞ。


 緊張感のない面々に苦笑しながら、ドーラさんが口を開いた。


「王子、これからアンタはシビルと共に王都に帰れ。アンタの生存を報告するのが第一だ。王都にいる男爵にひと通り話してある。この計画書を持って男爵邸に行けば色々話が進むようになってる。本当に爵位なんてもらって良いのかって言うくらいバカな奴だが、やる時はやる奴だ。裏切りの心配はしなくていいぞ」


 馬鹿な男爵?

 嫌な予感がする。


「この計画書は公爵達の目を盗んで持ち出したんだ。読み終わった計画書を公爵達の目の前で燃やすふりをして、別の紙とすり替えたのさ。簡単なマジックだ」


 ま、そう言われて見ても分からないだろうけど、とドーラさんが付け加え、王子と姉さんが興味深そうに追及している。姉さんは自分の知らない事には本当にどん欲だ。

 俺は別の事が気にかかった。魔法じゃなくて、マジックと表現する。この世界にもそういう言い回しがあるのか、はたまた転生者か。


 マジックを見せろと煩い2人を退けて、ドーラさんは話を戻した。


「私とバスコは攻撃してくるであろう集団を迎え撃つ。子供達は地下でじっとしてくれていると助かる」


 指示通りにする約束したが、じっとしていろと言われた姉さんが顔で不満を表す。また嫌な予感がするぞ。


「男爵邸の場所はシビルが知っている。邸に着いたらシビルはこちらに帰って来るが、王子はそのまま男爵と城に行くんだ」


「それってフリーグ男爵?」


 王子とドーラさんの会話に姉さんが割り込む。まだ寒い時期なのに嫌な汗が噴き出す。


「そうだが、知り合いか?」


「私の父。私が王子を抱いて飛んで行った方が絶対速いから、私が行く」


 自信に満ちた姉さんの顔は誰にも文句を言わせないと物語っていた。

 バカな男爵の娘ですみません。でもやる時はやる娘なんです。

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