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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第1章 俺は異世界で発育する
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第10話 俺は王に謁見する

 昨日は王様の挨拶を聞いた後、大通りにある沢山の屋台を見て回った。


 肉の串焼きは色んな種類があった。牛、豚、鳥、羊、それと兎もあったかな。それぞれ香辛料やタレを工夫して、店の個性を出していた。うちのコックがやらない味付けのお肉は新鮮だった。ソーセージ、ベーコン、ハム、チーズと言った加工食品を売るお店もあった。大きな骨付きハムから身を切り出して提供するお店は見応えがあった。


 お肉だけじゃなく、野菜や果物を売るお店もあった。そのまま売ったり料理にしたり、果汁ジュースやジャムも見つけた。この辺りは日本のお祭りの屋台というより、東南アジアとかで日常的に店を出している屋台って感じだった。テレビでしか見たことないけど。


 この国の主食は小麦と芋。小麦があるなら屋台の定番のたこ焼きやお好み焼きが作れる。タコは見たことないから別の物で代用するとして、ソースが無いと話にならない。ソースの焦げる匂いが食欲をそそるんだ。どうやって作るんだろう。自分で料理出来るようになったら、色々試してみたい。


 芋を焼いている店を見つけた。芋はジャガイモだな。塩と香辛料をかけて焼いたもの。ホクホクして美味しいけどバターが欲しい。バターは高価だから無いらしい。それならと別の屋台のチーズを買って来て細かく削って食べた。うん、これはこれで美味しい。芋屋の店主が興味を示したのでチーズを分けてあげた。


 パンを売っているお店を覗いた。この国のパンはライ麦の硬いパンが主だが、俺は余り好きじゃない。パンは柔らかい方がいい。柔らかいパンはなかったけど、クルミやレーズンが入っているパンは美味しそうだった。


 小麦関係のお店で、クレープのような薄い生地の物を販売しているお店があったが、ハムやチーズを巻いて売っていた。それも美味しいんだけど、子供のお祭りでしょ?甘いおやつが食べたいんだよ。別の屋台から果物とジャムを買って来て、作ってもらった。こうなると生クリームが無いのが残念だ。


 あと甘いものでは、クッキーやゴーフルかな。この辺りは普段のおやつでもよく食べるやつだ。トッピングに蜂蜜を置いてあるところがあった。蜂蜜がかかった物は高かったから一つ購入して子供達3人で食べた。高いだけあって美味かった。蜂蜜を購入する時年齢を聞かれた。確か蜂蜜って赤ちゃんに食べさせちゃダメなんだっけ。


 そういえば飴って無かったな。りんご飴とか屋台にあるよね。日本の千歳飴とか昔からあったと思うから、そんなに難しい物じゃないと思うけど。


 子供のお祭りなんだから甘い食べ物を出すお店が増えて欲しい。その点、あの店のジャムは美味しかった。また買いに行こう。




 1日経ち、今日はお城に行く日。午前中はゆっくりして、お昼を食べたら余所行きの立派な服に着替える。豪華な馬車に母さんと2人で乗り込む。綺麗な馬車だねと母さんに言うと、借り物なのは内緒よと言われた。そう言う母さんも綺麗だった。恥ずかしくて言えなかったけど。


 窓の外を見ると、他の馬車とすれ違う。お城の方から来ていたから、あれにも子供が乗っているんだろう。あっちも豪華な造りの馬車だった。きっと豪華さを競っているんだ。

 昨日は馬車が少なく、割と自由に通行出来た大通り。今日は馬車が列を作っている。ゆっくりと進むその姿は、きっとパレードを見ているような豪華さだろう。俺も横からこの行列を見てみたい。母さんに聞くと、明日以降はこんな行列にならないらしい。大きな商家の子ぐらいしか馬車を使わないからだそうだ。


 残念だな、来年を楽しみにしよう。来年はどこから見ようかな。屋根の上は怒られるかな。自分で屋台を作って販売しながら観るってのも面白いかな。3歳じゃ無理か。


 馬車はゆっくりと動きながら、お城の南門に吸い込まれていった。




「今日はよく来た、ゲオルグ・フリーグよ。元気に暮らしているか?」


「はい、おかげさまで、げんきにくらしています」


 マルテに言われた通り、元気に挨拶する。ちょっと声が上擦った。


「ふふ、難しい言葉を知っているな。そんなに畏るな」


「はい、ありがとうございます」


「君たちの世代は我が息子と同年代だ。もし、どこかで会ったら仲良くしてくれ」


「はい、きもにめいじておきます」


 あ、ダメだ。緊張して変なこと言った気がする。


「君のお姉さんとは大違いだな。数年前だがよく覚えているよ。元気な女の子だったな」


「あねも、げんきにくらしています」


「そうか、それは良かった。子供達の成長は私の願いだ。これからも体調に気をつけて、元気に暮らせよ」


「はい、ありがとうございます」


 これで終わり?ああ、緊張した。


「最後に宰相から贈り物を受け取ってくれ」


「では、ゲオルグ・フリーグ。この剣を」


 宰相と呼ばれた人が剣を持って近づいてくる。王様と同じくらい若い人だ。鋭い目付きがちょっと怖い。

 質素な鞘に収まった剣。刃渡りは短めで少し湾曲している。柄頭に赤く光る宝石が備わっている。

 宰相から剣を受け取る。想像したよりちょっと重い。短めの剣だけど、今の体格には大きな剣だ。


「それは君の家族が選んだ剣だ。剣の贈り物には、自身を守り未来を切り開く、という願いが込められている。その剣を大切にして、力強く成長してくれ」


「ありがとうございます」


 これで王様への挨拶は終わり。後ろで控えていた母さんに促され、退室する。剣は片手で持つのが辛いので、両手で抱きかかえている。

 しかし、剣か。魔法に関する本とかの方が良かったな。俺は今世では剣を振るつもりが無いんだよ。


「よく頑張ったね。疲れたでしょ。美味しい物を用意してもらってるから早く帰りましょう」


 うん、疲れたよ。偉い人と話すのって大変だ。早く帰りたいけどその前に。


「かえるまえにいきたいところがある」


「どこ?」


「きょうかい」


 こういう日があるって聞いた時、王様にあった後には神さまに会いに行こうと決めていた。2年間、魔法が俺を護ってくれた。そろそろ神様にお礼を言わないと。

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