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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第74話 俺は実験を発案する

「気、ですか。僕は魔力だと思うんですけど。ちょっと僕の実験に付き合ってもらえませんか?」


 バスコさんに仕掛ける。この状況を楽しんでいるバスコさんならきっと乗ってくれるはずだ。


「何をする気だ」


「僕を縛ってる植物をバスコさんに巻いて、秘技が発動するか調べたいんですけど」


「そうやって縛りを解いて、魔法で攻撃しようという考えだろ」


 まあそうなんだけど、はいそうですと言うはずがない。俺が魔法を使えないなんて教える訳もない。


「いえいえ、そんなことは考えていません。純粋な興味です。バスコさんも興味ありませんか?」


「興味無くはないが、今は出来ない」


 よしよし。興味はあるんだな。もう一押し。


「ではこの子、獣人ですから魔法は使えません。すべての拘束を解くのは不安でしょうから、両足の拘束だけ解いてください。それで実験しましょうよ」


 獣人の子は安全ですよ。魔法も秘技も使えませんよと念押しする。

 ちょっと安全アピールをし過ぎている気もするがもう止められない。


 バスコさんは俺のアピールを聞きながら、色々と表情を変えている。

 どうしたって大人と子供だ。例え魔植物によって秘技が使えなくなっても、負けるはずがないと思ってるよね。


「バスコさんの言う“気”はおそらく“魔力”ですよ。それが魔力ならば魔法が使えるはず。獣人族が魔法を使えたら面白いことになると思いませんか?」


 視界の端で姉さんがもぞもぞしているのが分かる。きっともう起きていて話を聞いているんだろうが、今はじっとしてほしい。


「わかった」


 バスコさんが立ち上がりクロエさんに近づいて行く。

 動かずにじっとしているクロエさんの両足に手を伸ばし、きつく縛られた魔植物を取り除く。


 うねうねと動く魔植物を持って立ち上がり、自らの左手に巻き付けて行く。


「これで満足か?」


 巻き終わったバスコさんが問いかけてくる。


「はい、では秘技を使ってみてください」


 秘技が目に見える物じゃなかったら発動しているかどうかこちらでは分からないが。


 むんっ、という掛け声の元、バスコさんが力を込める。それが秘技の発動方法なのかな?


 特に変わった様子は無い。発動したらどうなるのか聞いておけばよかった。


 バスコさんが先程より気合を込める。恐らくもう一度秘技を試しているんだ。


 やはり何も起きない。これは上手く行っていると見て間違いないだろう。

 自らの右手に集中しているバスコさんから目線を外し、クロエさんと目を合わせる。


「はああああっ」


 バスコさんが右掌を目線まで持ち上げ、唸る。

 本気になって最大限の力を籠めようとしている。俺もついついバスコさんの右手に集中する。


 たっぷり10秒ほど粘ったが、何も起きなかった。


 その現状に、バスコさんはおおっと感嘆の声を漏らし破顔する。


「秘技は発動できなかったようですね。これでその魔植物があれば獣人族は秘技を使えないと証明できました。後はその魔植物が“気”を吸収しないという事を証明する必要がありますね。気と魔力は別物だけど魔植物は気も魔力も吸収する、となると話は変わってきますからね」


 ゆっくりと回りくどく、まだ魔法が使えるとは限らないよとバスコさんに説明する。


「おい、獣人の子はどうした」


 こちらに注意を向けるつもりが失敗した。まあ隣で寝ていたんだから、気付くか。

 でも、もう遅いんだな。


「後ろですよ」


 左手の魔植物を取り外される前に、クロエさんの行方を教える。

 俺の言葉と共に何か重い物が床に落ちた音が響く。

 バスコさんは振り返り、剣の切先を相手に向けるクロエさんを確認した。


「呪縛」


 クロエさんが放った言霊に、俺の剣が反応し、俺の懐に仕込んでいた南瓜達が活動を開始する。

 魔植物に魔力を吸われて失敗する可能性も考えたが、杞憂に終わって良かった。


 5本の根っこがバスコさんに絡みつき、振りほどく暇なく包み込んでいく。


 クロエさんは南瓜達の活躍を横目に、姉さんを縛っていた魔植物を切断。


「姉さん、南瓜達を強化して」


「わかってる」


 姉さんは未だ倒れずもがいているバスコさんに近づき、草木魔法を発動させる。

 南瓜達は普通の南瓜だ。呪縛の魔力が切れたら力で引きちぎれる。それを防ぐために別の草木魔法で南瓜達を強く太く強化していく。エルヴィンさん達が依頼に行って暇になった姉さんと色々話しながら新しい魔法を作っていた成果が出た。


 バスコさんが床に倒れ動かなくなったところで、俺達全員が魔植物から解放された。姉さんはまだ魔力を送り続けている。


「よし、他の2人が帰って来る前に此処を出よう」


「ちょっと待って。お腹空いた」


 俺の言葉に姉さんが否と答え、ずっと背負っていたリュックからクッキーと水筒を取り出し、皆に手渡していく。

 上手く行って良かった。ゆっくりしている暇はないが俺も水分は欲しい。水筒を受け取りながら今後どうしようかと考えを巡らせた。

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