表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
171/907

第67話 俺はソゾンさんにお願いする

「というわけで、革で鞄を作ろうと思います」


 お店巡りを切り上げ、鍛冶屋にてソゾンさんに事情を説明する。


「はあ。まあ革でもなんでも使えばええが、ゲオルグではアイテムボックスに出来ないと思うぞ」


 ん?

 アイテムボックス?

 そんなこと全く考えてなかった。でも姉さんはその方が喜びそうだ。


「アイテムボックスにするつもりは無かったんですが、作るならどれくらい時間が掛かるんですか?」


 参考までに教えてもらおう。


「かかる時間は空間の大きさにもよるから何とも言えん。既にアイテムボックスとして設定されている空間と繋げるだけなら直ぐに出来るんじゃがな」


 ソゾンさんの言うアイテムボックスは、この世界上の空間と空間を繋げるタイプの奴だ。箱と箱、鞄と倉庫、財布と箪笥。片方は場所を固定して動かさず、もう片方を持ち運んで運用する。

 アイテムボックスの作り方はまだ教わってない。俺には出来ないって言うのは魔導具じゃなくて魔法だからだろうか。


「ソゾンさんに言われて思いました、アイテムボックスの方が姉さんも喜ぶかなと。魔導具で作った入れ物同士を繋げてアイテムボックスとすることは出来ますか?」


「ふむ。出来なくはないだろうがやったことはないからわからん。ドワーフ族は魔法でアイテムボックスを作るからのう」


 アイテムボックスが世間にあまり浸透していないのは、熟練のドワーフ族しか作れないからだって言ってたっけ。

 熟練の、ドワーフ。ん?

 これは、土魔法の派生がアイテムボックス関連の魔法ということなのかな?

 空間魔法とでも言うのかな。有りそうな気がする。実は土魔法の派生は重力を操るような魔法なのかなと想像していた。でも重力魔法って見た事も聞いたことも無いからね。今はアイテムボックスが派生ということにしよう。


「熟練した土魔導師ならアイテムボックスを作れるんでしょうか。例えば、父さんとか」


 “土葬”なんて異名を付けられているくらいだから、父さんは熟練した土魔導師と言っていいだろう。


「さあ、教えたら出来るかもしれんが。男爵にそんな時間は無いじゃろ。誰かさんのおかげで忙しいらしいからのう」


 誰かさんって誰ですかね?

 俺は最近大人しくしていますからね。本当ですよ。


「よし、決めました。革の鞄を作って、ソゾンさんの倉庫と繋げさせてください」


「なにを勝手に決めておるんじゃ。ダメじゃ」


「そんなことを言わずに協力してくださいよ。鞄の取り出し口を狭めておけば必要以上に大きな物は出し入れ出来ませんし、ソゾンさんの迷惑にならないよう姉さんには伝えます。そのうち姉さん専用のアイテムボックスを作りますから、その間だけお願いします」


「どんなに小さな取り出し口にしてもアリーの私物で倉庫が溢れかえる未来が見えるから、ダ、メ、じゃ」


「ならアイテムボックスの本体側を作ってください。姉さんの自室に置ける大きさの箱でいいので。ソゾンさんが作ったら速く出来ますよね?」


「作るのはいいが、依頼料は貰うぞ」


「姉さんの入学祝いです。ソゾンさんも協力してください」


「別に入学がめでたいと思っておらん。じゃから儂からアリーに何か贈る必要は無いんじゃ」


 なんて冷たい人だ。姉さんの新しい門出じゃないか。ソゾンさんの人でなし。


「最近アリーちゃんが鍛冶屋に来ないから寂しがっているの。学校に行ったら更に鍛冶屋に来る機会が減るから、めでたくないなんて言ってるのよ」


 ソゾンさんと言い合いに発展しそうになった所で、ヤーナさんが仲介に入った。

 子供だ。ソゾンさんは髭を生やした子供だった。

 ソゾンさんは全く反論しない。まさに図星だったんだろう。


「子供や孫たちがこの家に寄りつかなくなった時の私の寂しさを理解してくれましたか?」


 ここぞとばかりにヤーナさんがソゾンさんを攻撃する。

 間違えた、仲介じゃなかった。ヤーナさんは俺の味方だ。


「それに倉庫も随分と空いているじゃないですか。倉庫と繋げておいた方が定期的にアリーちゃんが来てくれるかもしれませんよ」


 そうだ、いいぞ、もっと攻め込んで。


「それからゲオルグ君。いくら仲の良い間柄と言っても、頼み事をするのにはそれなりに準備が必要になります。親しき仲にも礼儀ありと昔のドワーフ族は言ったものです。いきなり押しかけて、はいそうですか、と了解される方が稀。あまり思いつきだけで行動していると、いつか後悔しますよ」


「はい、すみませんでした」


 今までに見た事のない迫力で注意され、すぐさま謝罪した。昔一緒に捕まった時もそんな態度は見せなかったのに。

 ついでにソゾンさんへも謝罪をする。無理を言ってすみませんでした。

 ニコルさんにも言われたことがあるが、割と考えなしに発言や行動をする時があるらしい。不用意な発言には気を付けたいと反省した。




「うわぁ、可愛い鞄をありがとう」


 2月の姉さんの誕生日、丈夫な布で制作した鞄をプレゼントした。

 空を自由に飛び回る姉さんにはリュックサックタイプの鞄が良く似合う。メインどころは紐で縛る巾着型にして、側面と前面に付けたサブポケットはボタンで留めるタイプにした。

 布に使われている素材は穀雨大蜘蛛の糸。蜘蛛の魔物から獲れる糸は耐久耐水性に優れた物らしい。雨の中でも飛び回りそうな姉さんには耐水性が必要だろうと言うことで、これを選んだ。随分とお金は無くなったが。

 喜んでもらえたからお金の件は気にしないでおこう。誕生日に間に合ってよかった。




 一週間もしないうちにソゾンさんから呼び出され、倉庫の整理を手伝わされたことには俺も驚愕した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ