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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第66話 俺はある約束を思い出す

 年が明け、1月も終わりに差し掛かったころ。

 俺は少しずつ近寄ってくる魔力検査に不安を感じるようになっていた。

 今まで改良を重ねてきた魔導具で大丈夫だろうか、きちんと評価されるだろうか、そもそも魔導具の使用は許可されるんだろうか。

 父さんに聞いても分からないそうだ。調べておくと言った後から何も音沙汰がない。ダメならダメで早めに教えてくれる方が助かるんだが。


 マリーは落ち着いた様子を見せている。約5か月、隔日ながら走り続けた成果が出て来たのか、少しずつ魔力量が上がっていると嬉しそうに言っていた。どんな魔法を使うのかは魔力検査でのお楽しみだそうだ。参加者同士って検査を観に行ける余裕はあるのかな?


 しかし、最近俺以上にそわそわしている人がいる。姉さんだ。

 こっちを見て目が合うと視線を外し、話しかけると何でもないと立ち去る。明らかに挙動不審だ。そんな姉さんを始めてみた。


 暫く様子を見ていたが、変わらないどころかどんどん悪化していくその様子に耐えかねて、アンナさんに確認してみた。


「初めてゲオルグ様から貰う誕生日のお祝いに浮かれているんですよ。今更忘れていたとか言ったらどうなるんでしょうね。ゲオルグ様は王都から追い出されてしまうかもしれませんよ」


 げっ。忘れてた。

 エマさんの誕生日にプレゼントを渡した時に約束したんだった。

 誕生日プレゼントと入学祝いをかねて何か贈るんだ。しまった、何も考えてないぞ。


 え~、どうする?

 魔導具、は姉さんには必要ないか。自分で何でも出来ちゃうもんな。

 一時期自分にも部下が欲しいって言ってたけど、エルヴィンさん達に魔法を教えるようになってそんなことは言わなくなった。今では師匠だもんな。ていうか部下は無理だ。

 武器か防具か、いやいや女の子の誕生日に何贈ってんだよ。

 アクセサリーか、部屋に飾る小物か。そういえば姉さんの自室に入ったことない気がする。俺の部屋には勝手に入って来るけどな。姉さんの部屋の雰囲気が分からないから小物は止めておくか。

 そんなこと言ったらアクセサリーの方が想像できない。ネックレスとかつけたりするだろうか。


 ダメだ。良い案が思いつかない。前世の時は妹に何を贈ったっけ?

 何も贈ってないな。最後の誕生日に生クリームたっぷり乗せたプリンを作ったくらいか。記憶の中の妹は今の姉さんより子供だった。凄く喜んでくれたことも覚えている。

 姉さんは食べ物でも喜びそうだけど、出来れば形が残る物にしたい。


「ゲオルグ様が作った物なら何でもいいんじゃないですか?」


 何も思いつかずマリーに相談したら適当な返事をされた。

 何でも良いってことはないでしょ。初めてのプレゼントだよ。


「そう思うなら自分でしっかり考えたらどうですか。私もゲオルグ様から贈り物をされたことはないので分かりません」


 なんか、怒ってるよね?

 マリーにもいずれプレゼントするから、今回は協力してよ。




 結局マリーは相談に乗ってくれなかった。話し相手くらいにはなって欲しかったのに。

 本人に直接聞いてみる?

 欲しい物あるかなんて聞いたら怒られそうだ。姉さんはサプライズを楽しむタイプだからな。

 どうしよう、やっぱり無難にアクセサリーかな。

 ルトガーさんを連れて王都内を散策してみるか。




 貴族御用達という貴金属店に足を運ぶ。

 綺麗な宝石を散りばめた指輪やネックレス、大きなものではティアラまである。売り物は全て装飾用で、魔導具として使える物ではないようだ。

 姉さんに指輪やイヤリングを渡しても直ぐに無くしそうだ。ピアス用の穴ってどうやって開けるんだろう。無難なのはネックレスかな。う~ん、保留。


 本屋。どんなに為になる本でも、姉さんが喜ぶ姿は想像できない。費用対効果が得られないので却下。


 服屋。今は冬だから暖かそうな服が並んでいる。綿や羊毛が多いのかな。安価なのは麻、一番高い素材は大福兎という魔物の毛皮らしい。

 明らかに名付け親は日本人だろ。白さで名付けたのか?それとも餅のような手触りなのか?

 服はサイズが分からないから保留。


 雑貨屋。皿やコップといった食器、掃除用具、置物などを店の入口に色々置いてある。ここは他の店と比べるとかなり安い気がする。

 ディスカウントストアの雰囲気を思い出していると、ルトガーさんが教えてくれた。


「ハンデル商会が所有する店ですね。エルヴィンさんの実家でしょうか」


 あ、そうなの?


「革製品や織物が主力って聞いたけど、色々取り扱ってるんだね」


「店の奥では革製品の修理なんかも請け負っているみたいですよ」


 ルトガーさんが指さす店の奥に目をやる。色々な革で作られた商品に囲まれ、修理を請け負うカウンターも設置されている。こちらも動物の革から魔物の革まで取り扱っているようだ。エルヴィンさんが獲って来た大角山羊の革もどこかにあるんだろうか。


 雑貨屋の入口付近には割と安価な商品が並び、奥に行くほどに高価な革製品などが陳列されている。財布、靴、鞄、革のジャケット。革製品が並ぶ列とは離れて、こちらは布製品が並ぶ。生地の状態で売られている物もあった。


 鞄かぁ、いいなぁ。


 見てると俺も欲しくなってくる。空を飛びまわる姉さんには背負えるリュックサックタイプがいいかな。

 よし、保留。


 時計屋。

 壁掛け時計、置時計。ネジ巻き式に重り式、魔導具で動かす物もある。いわゆる鳩時計やからくり時計まであって多彩だ。家に昔からあるのは全部壁掛け時計で、使用人がネジを毎朝巻いてくれるんだ。

 姉さんに渡して、ちゃんと動かせられるかな。魔導具式でも魔力を込めるのを忘れそうだ。


 一通り見て回ったけど腕時計や懐中時計がないな。

 店員さんに聞いてみると、小型の時計は高価なので受注生産になるらしい。治安が良い王都でも偶に盗みを働く人が居るようだ。




 さあ、どうしよう。ルトガーさんも助言はくれなかったから自分で考えないと。

 今日見て回った中では鞄が良いかな。俺としては懐中時計も心揺さぶられるアイテムなんだけどな。


 よし、ソゾンさんに頼んで、制作を手伝って貰おう。この世に1品しかないアイテムをプレゼントするんだ。

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