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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第63話 俺は姉さんに部下を育ててもらう

 誕生祭の最終日、マルテ達が漸く帰って来た。

 エルヴィンさんの態度を見るに、我々が企んだ実験が上手く行ったんだろう。


「レベッカさんはどの程度、水魔法を使えるようになったんですか?」


 とりあえずエルヴィンさんの事は置いといて、実験成績を確認しよう。


「存在する水を動かす程度だよ。川の流れを変えさせたり、水を持ち上げたり、そういうことが出来るようになった」


 少し胸を張って自慢げに答える。フランクに話すレベッカさんにエルヴィンさんが嫌そうな顔をするのも久しぶりに見た。

 マリーが気を利かせて、消火用に用意している水を張ったバケツを持って来てくれた。水魔法を使えない人達用に用意していた奴だ。


 レベッカさんの目の前に置いて実演するよう促す。


 バケツに向かって右手をかざし、ゆっくりと手を上に持ち上げる。

 それにつられるように、バケツに張られた水の表面が膨れ上がる。

 山なりに膨れ上がった水は、バケツから零れることなく天に向かってゆっくりと伸びて行く。


 最終的にバケツの4倍くらいの高さで成長が止まった。細長い水の木がバケツから生えているようだ。


「持ち上げるのはこの辺りで精一杯。まだ水を切り離して空中に浮かせることは出来ないんだ」


 こういうことですね、と言ってレベッカさんの横でマリーが水球を出現させた。

 レベッカさんがもう少し上達するとバケツ内の水分を余すことなく空中へ移動できると言うことだろう。重力に打ち勝つのが難しいのかな。


「マリーちゃんは水を浮かせるとか以前に、何もない所に水を出現させているからね。私はまだそれはが出来ない。それが出来るようになるにはもう少し練習しないとダメだね」


 うんうん。あの姉さんでも自在に水魔法を扱えるようになるまでに時間が必要だったからね。そう簡単には行かないよ。


「エルヴィンさんはどれくらい使えるんですか?」


 レベッカさんにバケツの水を元に戻してもらい、次はエルヴィンさんの前に持って行く。


「僕は、まったく使えません。他の3人も同じです。どうか僕にも水魔法が上達するコツを教えてください。レベッカに差をつけられたのが悔しいんです。よろしくお願いします」


「よく言った。後は私に任せろ」


 ばーんっという派手な効果音と共に姉さんが仁王立ちで登場した。どうやったんだろう、火魔法かな。

 さっきまでかき氷や桃ミルクの実演販売に見入っていた子供達にはウケているぞ。

 年下の子供達の声援を聞いて、姉さんは満足そうに腕を組んでいる。

 今年も第一王子は来ていたけど、最終日の姉さんの方がサービス精神旺盛なのは黙っておこう。


「ゲオルグ。この2人は私が預かるよ」


 はい、よろしくお願いします。


「では明日の朝6時に我が家に来るように。そして私の事は師匠と呼ぶのだ」


「はい、師匠」「よろしくお願いします、師匠」


 そのままマルテに任せても良かったんだけど、あんなに楽しそうにしている姉さんを見たら何も言えない。

 朝からってことは体操とランニングにも参加させるつもりか。とりあえず2人には動きやすい服装と靴で来てねと伝えておいた。


「ありがとうございます。では明日からよろしくお願いします」


 姉さんに頭を下げて、エルヴィンさんは去って行った。屋台で何か食べて行けばいいのに。


「今回の依頼で確保した大角山羊の毛皮を速く実家に持って帰りたいんだよ。エルが冒険者になった一番の理由だからね。その辺は許してあげて」


「あ、毛皮獲れたんですね、よかったです。レベッカさんは屋台で何か食べて行ってくださいね。色々と種類が増えていますので」


 マリーがレベッカさんを屋台の方に連れて行った。

 今度は姉さんがバケツの水を使って子供達に魔法を見せている。レベッカさんと同じように水を上空に伸ばし、途中で切断することなくどんどん細長くしていく。

 只真っ直ぐ伸ばしたレベッカさんとは違い、うねうねと動かしながら生き物のように水柱を躍らせる。なぜちびっ子達に人気なのか分からないが、姉さんの水柱ショーはしばらく続けられた。




 誕生祭翌日に行ったランニングは、レベッカさんもエルヴィンさんも難なくこなした。さすがにエステルさんのペースに付いて行けなければ冒険者なんてやってられないか。エステルさんもぶっ倒れなくなったからそろそろ走る時間を増やして行こう。


 マルテ達が獲って来た土魔石を冒険者ギルドから受け取り、魔導具も作った。これで五行全ての魔導具がそろった。

 作ったその日に起動実験もやった。5つの魔導具が連動して動く。土魔石の後は金魔石へと繋がり、ぐるぐるぐるぐると循環する。

 同じ大きさで同じ魔法を繰り返し発動するはずが、徐々に大きな魔法になっていくのには面を喰らった。どうしても吸収発動の途中でロスが出るから、どちらかと言えば徐々に勢いが衰えて行くと思っていたけど。なんとかしてこの辺りを調整したいと思う。


「ゲオルグ様、ランニングをお休みする日は、俺と剣術稽古をしないか?」


 ランニングをしない日、ラジオ体操後に考え事をしていると、唐突にジークさんから稽古に誘われた。


 そのセリフ、久しぶりに聞いたな。

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