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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第58話 俺は魔石にナイフを向ける

 倉庫から工房に机と椅子を持ってくる。椅子に座り深呼吸。

 魔力を充填させた魔導具のナイフをマリーから受け取る。これが無いと俺は魔導具が作れないからね、いつもありがとう。

 気持ちを落ち着かせ、机の上の金魔石に挑む。


 武闘大会でジークさんが使っていた魔吸と同じように、魔法を吸収して別の魔法を発動させる魔導具を作りたい。魔吸とは違い5つの魔導具を作るんだけど、そこで問題が発生した。


 金の魔石で、金属魔法を吸収し、水魔法を発動させる。

 水の魔石で、金属魔法を吸収し、水魔法を発動させる。


 最終的に水魔法を発動させたいが、どっちが良いんだろうか。他の3つの魔石を使うのが間違いだと言うのは分かるけど、この2つで迷った。

 発動よりも吸収の方に属性を合わせた方が良いかと思って今回は前者のパターンで魔導具を作る。

 魔石に余裕が出そうなら、後者の方も試してみたいとは思うが。


 さて、先ずは魔石に魔力を吸収し、貯蔵するためのドワーフ言語を刻み込む。

 これが無いと魔石は役に立たない。すべての魔導具にこれと同じ意味の文字列は存在するはずだ。


 そしてさらに、空気中に漂う魔力を少しずつ吸収して貯蔵、容量限界まで貯蔵しきった魔力を空気中に放出するための言語を書き加えて行く。

 これは他の魔導具にはあまりないはずだ。魔導具の使用者が魔力を込めて調節したらいいんだから。でも俺は魔力を放出出来ないから、この機能が必要になる。

 人が魔力を込めるより効率が悪く時間が掛かるし、魔石に言語を刻む手間や言語を書くスペースの問題から、これからも他の人が作る魔導具では利用され辛いと思う。

 まあこれはあくまで補助的な機能だ。基本的には誰かに魔力を込めてもらうことになるだろう。そのうちもっと効率よく魔力を吸収できる言語を考えたい。


 左手で魔石をクルクルと回転させながら、一画一画丁寧に文字を刻み込む。魔石を回転させるのは文字の歪みを少なくするためだ。ナイフを持つ右手の動きはなるべく一定にした方が良いからね。

 静まり返った工房内で、両手を止めることなく作業を進めた。




 ふう、最初から長文で疲れる。

 次は書き終わったこの文字列に、別の文字列を連結していく。

 金属魔法を吸収する為の物だ。


 金属魔法を吸収する作業は、金属魔法を感知する所から始まる。

 先ずはそのための言語を入力する。感知する距離を設定し、感知する魔法の属性を決定する。属性はもちろん金属性。


 感知する距離は4尺までの範囲と定めた。

 たしか剣道に使っていた竹刀が3尺6寸か7寸だったと記憶している。それよりちょっと大きめの範囲に設定。メートルに直すと約1.2メートルかな。俺が中学生時代に竹刀を構えた時の先端までの距離が、そんなものじゃないかと思う。


 この世界での長さの尺度はメートル法が使われている。きっと転生者の誰かが広めたんだ。いやこっちが起源で地球に転生した人が広めた可能性もあるか。


 本当はメートルで魔石に刻みたかったんだけど、ドワーフ言語は昔から尺を使っているようだからそれに習った。

 そうだ、確かメートルって米って書くよな。今度米で距離を理解してくれるのか安価な魔石を使って試してみよう。今回はもう尺で作っちゃったしな。

 作業をしながら、ああしたらよかった、こうすればもっと綺麗かも、と思い立つ。次に繋げられるよう閃いたことはメモしておく。




 金属魔法を感知したら、それに向けて金属魔法を発動させる。同じ属性の魔法をぶつけて相殺させ、相手の魔法を分解する仕組みだ。

 その後分解した金属魔法を魔石に吸収するんだが、それが水魔法を発動させる基材になる。金属魔法を魔力に戻すんじゃなくて、金属性を維持したまま取り込むのがポイントだ。純粋な魔力に戻すには更に手間がかかり、処理速度も落ちる。

 この分解吸収が一番の肝になると思ったから、魔石の属性も金属性に合わせる事にした。


 しかし、分解するための魔法の発動には魔力が必要になる。ここを一番何とかしたかったんだけど無理だった。魔力を必要としない構造を考えたが、そうなると魔法を分解する方法が思いつかない。

 魔吸も同じ構造だ。魔吸は装備者から魔力を吸い上げて、魔法を吸収する為の魔力をため込んでいる。

 ここで必要になって来るのが、空気中に漂う魔力をかき集めること。最初に自動で魔力をため込んでいく構造を入れ込んだのはその為だ。

 一度魔法を吸収してしまえばそれを活用することも出来るが、最初の起動にはどうしても魔力が必要だった。普通の人には問題無い所だが、俺にとってこの点はまだ不完全な仕様だと言える。




 金属魔法を分解する為の言語を刻み終えた所で、マリーから声が掛かった。ナイフの魔力が尽きかけているらしい。危ない危ない、このままだとただ魔石を傷つけるだけになるところだった。


 ナイフをマリーに手渡して、少し休憩する。

 これから分解した魔法を取り込む工程に移る。内容は自動で魔力を吸収する機構と似ているが、一部は魔石内に貯蔵し、大半は直ぐに水魔法へ変換させる予定だ。終わりまではまだまだ先は長い。


「あっという間に昼が過ぎているんだね。ちょうどいいから、お昼休憩にしようか」


 作業を止めた瞬間に空腹を感じるようになった。

 筋肉疲労は治癒魔法が自動で治してくれるから、疲労感は無い。

 でもきっと脳が糖分を欲しているんだな。無理して続けて失敗しても嫌だし、少し休憩しよう。


「分かりました。ルトガーさんに声をかけて来ますので少しお待ちください」


 マリーが出て行った工房で俺は1人椅子に座ってぼーっとしている。気を使ってくれたのかソゾンさんも席を外してくれていたようだ。それならナイフを自分で用意して自室でやった方が良かったかな。でも工房の方が集中出来ると思ったし、現に今までは上手く行っている。

 ソゾンさんには申し訳ないけど、今日一日は工房を貸し切らせてもらおう。また後日、何かで埋め合わせを考えないとな。

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