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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第55話 俺は大事な話を忘れる

 エマさんの事をマギー様に確認してみたら、メンデルの法則と言われた。回りくどい言い方だ。


「つまり、遺伝ですよね」


「そうだよ。もうちょっとヒントをあげると、5つの対立遺伝子があり、それぞれ共優性な関係だが、一部そうじゃない所もある」


 キョウユウセイ?

 何だっけそれ。メンデルの法則の一部か?

 単純な優劣関係じゃないってことか?


「ヒントはここまで。じゃあ誕生祭のお供物を楽しみにしているよ。え、何?」


 マギー様が俺じゃない人に向かって話しかけているのが分かる。シュバルト様かな。


「あ〜、桃馬、悪い。お供物を4人分に増やしてくれないか?」


「4人分でも構いませんが、誰に渡すのか聞いても良いですか?」


「アマちゃんとマキナだ。マキナは会った事ないと思うけど、他の世界の神様だ」


 もの凄く言い辛そうにマギー様が教えてくれた。アマちゃんが居るなら聞いておきたいことがある。


「4人分用意します。が、アマちゃんに俺の家族が元気にやってるかだけ聞いて下さい」


「桃馬が地球の家族は元気か、だってさ。うん、そう。はいはい、わかったわかった。元気だってさ」


「短か。もっと長めに話してましたよね」


 明らかに意訳したのが分かる。隠すならもう少し上手くやって欲しい。


「桃馬を怒らせないようにした結果こうなった。恐らく不愉快な気持ちになるだろうが、聞く?」


「いえ、大丈夫です。そのかわり、アマちゃんへ渡す唐揚げは全て激辛にしますと伝えてください」


「アマちゃんの分は激辛にするってさ。えー。もう。みんなで分け合うから色々あった方がいいってさ。ポジティブなバカで悪いな。なんだよ、本当の事だろ」


 その後、マギー様と恐らくアマちゃんの喧嘩が始まった。

 マギー様が言葉にはしたくないような暴言をアマちゃんに浴びせるが、その度に言い返されては憤慨している。明かに口喧嘩では勝てない相手だ。何を言われているか分からないが徐々に気落ちして行くマギー様が可愛そうでならない。

 ていうか、そろそろ回線を切断して欲しいんだが。恐らく興奮して通信しているのを忘れたんだろうな。こっちの呼び掛けにも反応しないし、こちらから切断する事も出来ない。いつまでこの地獄は続くんだ。あ〜、もう。マギー様が泣きかけてるじゃないか。




 奮戦虚しく敗戦したマギー様に優しい言葉をかけ続け、マギー様は何とか復活を果たした。

 しかし、ずっと回線が開きっぱなしになっていたのに今更気が付いたのか、激しく動揺したマギー様がエッチと言う言葉を残して消えていった。

 漸く回線が切れてホッとした気持ちと、エッチと言われて釈然としない感情が鬩ぎ合っている。

 はあ、もう疲れたからひと眠りしよう。何か大事な話を聞いた気がするが、後半のゴタゴタで疲れてしまった。最早考える事を放棄したい。




 眠りから覚めてぼーっとしていると、昼食が出来たとマリーが呼びに来た。

 さっき朝食を食べたばかりなのにという感じだ。それでも走ったからか、朝食は消化されている気がする。

 マリーに急かされるように部屋を出て、食堂に向かった。


 食堂のテーブルには笑顔の姉さんが座っている。途中で俺を置いて行ったマリーとエステルさんも着席していた。


 昼食は唐揚げだった。形は整っているが、色とりどりの唐揚げが早く食べろと主張している。正直食べたく無い色合いの物もあるんだけど。


「今日はアリー様達と強力して新しい唐揚げを考案しました。食べてみてください」


 アンナさんが作ったのか。姉さんと一緒と言う所が物凄く不安だ。


「この、明らかに辛そうな真っ赤な唐揚げも食べられるんですか?」


「はい。まずは一口、冷めないうちにどうぞ」


 アンナさんが速く食べろと強く勧めてくる。皆も食べ始めずに、俺が食べるのを待っているようだ。絶対に食べないといけない奴か。そんな期待された目で見られても困るぞ。


 皆の視線に抗えず、真っ赤な唐揚げをフォークで突き刺す。顔に近づけ、恐る恐る匂いを嗅いでみる。

 うん、匂いは悪くない。もっと刺激的な臭いがするのかと思った。

 意を決して、唐揚げに齧り付く。


 鶏肉から溢れ出た肉汁と一緒に、甘さが口の中に広がる。ん、甘い?

 反応に困り咀嚼を続けていると、最後の方にピリッとした辛さが舌に残った。


「美味しい?」


 姉さんがキラキラした眼差しで聞いてくる。美味しいか、美味しくないかと言ったら。


「う〜ん。もっと辛味が強いのかと思ったけど、そうでもなかった。最初に甘さを感じるとは思わなかったから戸惑ったよ。総合的に判断して味は、普通かな?」


 姉さんがガックリと肩を落とす。うーん、甘辛い味は嫌いじゃないんだけど、そう言う感じでも無かったんだよな。表現し辛い不思議な感覚を植え付けられた。


「やはり砂糖を追加せずに衣に練り込んだ野菜の甘味だけで勝負するべきでしたね。あのパプリカは生で食べても甘味を感じられますから」


「え〜、甘くないよ。生のパプリカは苦い」


 そう言って姉さん真っ赤な唐揚げを頬張った。姉さんは美味しそうに食べているが、エステルさんとマリーはそうでもない。食べられないほど不味いと言うわけではないが、1個食べたらもう良いかなって感じだ。


 皆が赤い唐揚げを食べている間に、俺は別の唐揚げに挑むぜ。

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