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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第47話 俺は親方の頼みを引き受ける

 8月中頃。

 姉さん達もマルテ達も、まだ帰って来ていない

 依頼を出してから約1か月。依頼が完了されたのは船着場の親方に頼んだ電撃アンコウの依頼のみ。

 マルテ達が行っている依頼が遅くなるのは分かるけど、姉さん達も帰って来ないのは不思議だ。


「最近青のりの注文が増えて来たんだが、また何かやったのか?」


「え、なんで俺に聞くんですか?」


 態々依頼の魔石を家まで持って来てくれた親方に絡まれた。


「ゲオルグが青のり粉を買った翌日から売り上げが上がったって売店の店主が喜んでたぞ。反対に料理屋の主人はなんでこっちにも教えてくれないのかと文句を言っていたな」


「えええ、文句を言われることじゃないと思うんだけど」


「ははは、それだけ皆青のり粉に注目してなかったんだ。俺達は普段は生で食べるからな。乾燥させた海藻は基本的に保存食の役割だった。だから他の種族で人気となったことに驚いているんだ」


「はあ、そうですか。誕生祭の屋台でも青のり粉を使った料理を販売すると思うので、もうちょっと入荷しておいてください」


「そうか、それは大変だな。河口の街に頼んでおくよ。もし気が向いたら、料理屋の主人にも何か教えてやってくれ」


 そう言って親方は帰って行った。海産物が売れたら魚人族全体の利益になるだろうから態々親方が頼みに来たのかな。

 うーん。でも基本的に醤油なんだよな。醤油が無いと俺の知識は活かせないと思うんだ。

 何か料理を、ねぇ。


 フライヤーを渡してフライでも作ってもらうか。考えるのも面倒だから有る物で対応しよう。

 味付けはソースかな。アジフライには醤油が俺は好きなんだけどな。タルタルとかマヨネーズは卵が怖いから試せないよね。


 ソースは、よし、ニコルさんに相談しよう。似たような物は口にした事あるけど、地球のソースの方が絶対美味しい。俺は作れないからニコルさん頼みだ。


 もしニコルさんが作れなかったら?

 塩胡椒も悪くないでしょ。




 ニコルさんの診療所を尋ねると、丁度幼児の診察中だった。

 待合室で待たせてもらう。殺風景な待合室だ。子供が喜ぶような物でも置いたらどうかと思う。

 絵本とか、おもちゃとか、そういうやつ。

 病院の待合室で待つのって暇なんだよな。重い空気を感じて気が滅入るし、なかなか呼ばれないとイライラするし。


「物が多いと掃除しにくくなるし、絵本やおもちゃを媒介して細菌やウイルスが感染するかもしれない。個室で入院しているのならともかく、人の出入りが多い受付や待合室は物が少ない方がいいと私は考えている」


 出会って早々質問した答えがこれだ。

 なるほど、わかりやすいね。俺は子供達を楽しませる事を考えていたけど、ニコルさんの視点は病気を広めない事。診療所に行って病気を貰って帰るなんて絶対だめだよね。


「で、ソースだっけ。ウスターシャのソースでいいのかな。それとも何かアレンジする?」


 診察室に呼ばれてニコルさんと2人きりだから遠慮なく相談出来る。


「いえ、とりあえず基本的なソースで。魚人族の好みも分かりませんから。必要なら自分達で改良するでしょう」


 簡単な方が作りやすいし、広まりやすいと思う。


「作るのは良いけど、お父さんに相談した?」


「え、相談して無いけど。必要ですか?」


「目立つ行動は控えなさいって言ったはずだけど。最近は魔導具作りで頑張ってるみたいじゃない。魚人族の患者さんが来たらほぼ間違いなくゲオルグの話をするわよ。皆速度の出し過ぎで怪我してるのに、貴方を褒めるんだから」


 もう魚人族から注目されるのは仕方ないと諦めています。


「すみません、魔導具作りが楽しくて忠告を忘れてました。次から気をつけますので、ソースはお願いします」


「はあ、本当に分かってるのかな。ちゃんと大人に目が行くよう考えて動きなさいよ」


 はーい。気を付けまーす。

 危ないって言うのは分かってるんだけど、つい、ね。

 とりあえず鷹揚亭の唐揚げは屋台で出すからそっちの名前が広まるだろう。今回のフライもその線で行こうかな。ニコルさんの言う通り、父さんを利用させてもらおう。




「分かった。今年の誕生祭は唐揚げとフライで決まりだな」


 父さんは問題なく話に乗ってくれた。揚げ物ばかりでちょっと脂っこいかなとも思うけど。

 フライも串カツ風に串に刺して揚げれば食べ歩きしやすいよね。

 串のポイ捨てが多くなりそうなのと、揚げ物が広まったら火事が怖い。思いついた問題点を父さんに伝えた。


「そうだな、祭中はゴミ箱を増やすように商業ギルドへ申請するか。ゲオルグのフライヤーが広まれば火事も起こり辛くなると思うんだが、そうなると爺さん達が文句言うだろうな。これから店を出そうとしているんだから」


 火事に気を付けるよう注意喚起に留まっちゃうかな。油もそのまま捨てないように注意しないと。


「新しい事が広まるって大変だね」


「そうだな。皆の意識を変えないといけないからな。ギルドにも少しお金を渡して、彼らに油の扱い方を広めてもらうしかないな」


「あ、ゴミ箱増やすんだよね。そのゴミ箱に注意喚起の紙を張り付けとけばいいよ。ついでに屋台の場所を載せておけば宣伝になるし。今年もニコルさんの診療所前でやるんだよね?」


「いや、今年は大通りのくじ引きに挑戦しようかと思ってたけど。でも毎年場所が決まってる方がいいか。よし、それで行こう」


 これでニコルさんも納得してくれるだろう。あ、ニコルさんのフライドポテトにも青のり粉をオススメしよう。あれ、ルトガーさんが滅茶苦茶気に入ってるんだよね。きっと他の人たちにもウケるはずだ。

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