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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第45話 俺は姉の友人に見惚れる

 マリーに踏まれた左足が痛い。


「ごめん、ふらついちゃった」


 もう、今いいところなんだから気を付けてよ。


 マリーから視線をエマさんに戻す。良かったさっき迄と変わってない。


 エマさんと目が合った。微笑んでくれた気がする。もしかして待ってくれてた?


「行け、流星」


 エマさんの号令に従って衛星達が次々に周回軌道を飛び出し、動く的目掛けて飛来する。

 総勢8つの水泡は2つずつに分かれ、違える事なく的に衝突した。


 爆発、することもなく的となっていた土塊を取り込み、宙にプカプカと漂っている。


「本当は取り込んだ後爆発するんだけど、室内で危ないからこれで終わりね」


 終了を宣言したエマさんに盛大な拍手を送る。

 水魔法を綺麗に見せようと拘ったいい魔法だと思う。4種の魔法を操った姉さんとは全く違う構成だ。


「あんまり褒められると恥ずかしいから止めてね」


 そういうところも姉さんと全然違う。

 姉さんなら、褒めて褒めてと迫って来たはずだ。性格が全く違うのにどうして二人は仲良くなったんだろう。


「流星って名付けてましたけど、エマさんは星が好きなんですか?」


 マリーが質問する。俺が図書館で魔法関係の本を読み漁っている頃、マリーも色々な本を読んでいたから知識の幅は広い。天体系の絵本もあったからそれで気付いたんだろう。


「そうね、夜空を眺めるのが好きなの。王宮には星々を観測する部署があって、大きな望遠鏡が有るらしいよ。いつか星を覗いてみたいな」


 眼鏡があれば望遠鏡もあるか。自分の好きな物を魔法で表現するって言うのは良い考えだね。


「エマさんはどうして水魔法に拘ったんでしょう。表現するなら色々な属性を使った方が綺麗に魅せられると思うんですが」


 マリーが続ける。お前は取り調べをする刑事か。っていうか俺にも喋らせろ。


「水魔法を使える子が珍しいって言うのと、私が水魔法と火魔法しか使えなかったから、かな」


 え、どういうこと?

 水と、火、しか?


「土も風も使えずに水が使えるって、その若さでそんなことって有るんですか?」


 驚いて声が出ない俺に変わって、マリーがさらに発言する。


「さあ、嘘はついてないわよ。私は火と水しか使えない、生まれつきこうだったの。マリーちゃんより幼い頃は火魔法しか使えなくて悩んだわ。私の母や兄達は土魔法も風魔法も使えたから余計に悩んだのよ」


 なんとなく俺と似ている。立派な家族、大好きなんだけど、ついていけない事に悩むんだよな。


「6歳の秋が終わり魔力検査まで半年を過ぎた頃、私はある女の子に出会ったの。お父さんと魚を仕入れに船着場へ行った時、その子は寒さを気にせず魚人族の子供達と一緒に水浴びをしていた」


「近くで様子を見ていると声をかけられた。魚人族に水魔法を習いに来ているんだって言ってた。でもその子はもうほとんど水魔法を使えていたけどね。一緒にやろうと誘われてしばらく遊んだ。人族の子供が居なかったから嬉しかったのかもしれない」


「遊びながら魔法の使い方を教えてもらった。火魔法しか使えなかった私には無理だと思っていたけど、少しだけ水流を作ることができて手応えを感じた。私はもっと時間が掛かったのに凄いね、って褒められた。お父さんの仕事の時間になるまで魔法を教えてもらった。またねと言って別れたけど、それ以来会えなかった」


「魔力検査まで一生懸命水魔法を練習したら、全体2位で表彰された。慰労会でアリーちゃんに再会した時は驚いた。最初は私のことに気付かず、私が平民だからと男の子に虐められていたところを助けてくれた。後で船着場の事を話したら、ああ、あの時の、と喜んでくれた。それ以来アリーちゃんは私の大事な友達なの」


「なんの話だっけ?」


 姉さんとの思い出を語り切ったエマさんが、ようやく異変に気付いたようだ。

 急に熱く語り出すから皆ポカンとしてたもんね。

 周囲との熱量の違いに気付いたエマさんが顔を真っ赤にしている。そんな姿も可愛らしい。


「エマさんが水魔法に、とぉっても思入れが有るっていうのはよく分かりました」


 マリーの言葉に手で顔を押さえて恥ずかしがっている。いやぁ、良い話でしたよ。


 しかし火と水かぁ。何でそんなことになってるんだろう。全く分からないな。


「ゲオルグの理論を否定する存在じゃな。面白くなって来たじゃないか。彼女の事をどう考える?」


 うーん。取り敢えず今日は綺麗なエマさんを見れただけでいいかな。よく分からないから落ち着いてゆっくり考えよう


 マリーに揶揄われているエマさんをぼーっと眺めて、残りの時間を楽しんだ。




「お店に帰る前にちょっと寄り道していいですか?」


 鍛冶屋を出たところでエマさんに提案した。なんとなく声が上擦ってしまった気がする。


「まだ時間あるからいいよ」


 ありがとうございます。じゃあちょっと遠回りしますね。


「船着場、久しぶりに来たなぁ」


 目的地に着いたところでエマさんが声を漏らした。エマさんの話を聞いて思いついた事があるんだ。

 船着場に設置されている売店を覗き込む。近くの川で採れた物や河口の街から運ばれて来た物を売っているお店。


「すみません、青のりって有りますか?」


「おう、乾燥して粉状にした物なら有るぞ。生が欲しいなら注文になるが」


「青のり粉で大丈夫です」


 買い物を終えて帰路に就く。調子に乗って買い過ぎたかな。ある程度は自宅に持って帰ろう。


「ふふ、そんなに買ってどうするの?」


 エマさんに笑われてしまった。笑顔も素敵ですね。


「あ、ごめんよろけた」


 足を踏む前に宣言するのは違くないか?

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