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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第42話 俺は長話を聞き入る

 鉄剣を使った俺にはどんな魔法がかけられているのか全く分からない。

 ソゾンさんが持っている鉄剣をチラッと見て姉さんが発言する。


「ん~。剣の周りをグルグルと魔力が渦巻いているね」


「そうですね。薄く魔力が張られているのが分かります」


 姉さんの言葉にマリーが賛同する。

 目を凝らしてみるが俺には全く見えない。隣でレベッカさんも首を捻っているから、仲間だね。


「そんなにずっと見ててもわからんぞ。目に見えるもんじゃない。ゲオルグはともかく、レベッカはこれを感じられないと先に進めないぞ」


 レベッカさんに剣を手渡し、確認を促す。


 その間に姉さんとマリーは実験に使っていた鉄柱を剣に作り替えていた。2人も自分達で試している。


「剣を金属魔法で覆ってるんだよね。これをやってどんな意味があるんだろ」


「金属魔法で鉄を硬化させてるんだと思いますが、鉄柱は折れ曲がることなく切断されてました。切れ味が良くなる理由が分かりません」


 姉さんとマリーが相談し合っている。俺は全く口出しできない。


「これはな、どんな鈍らな剣でも鋭利な業物に変える事が出来る魔法じゃ。マリーがやった方法より時間が掛からず、アリーがやった方法より魔力消費が少ない。勿論使い続ければ魔力を消費し続けるがな。何より便利なのは、魔導師の手から離れても暫く持続する所じゃ。魔力が切れれば元に戻る所は欠点の一つじゃな」


 ソゾンさんの解説が始まった。


「じゃからゲオルグでも使える。矢や投擲武器に使用すると貫通力が増して便利じゃぞ」


「斬るなら風魔法で出来るし、矢を使わなくても魔法で攻撃出来るよ」


 姉さんが私ならこうすると意見を述べる。


「アリーのように多種の魔法を器用に使い熟す者ばかりではない。魔法が苦手な者は魔物と戦う時どうするか、武器を使うしかない。その武器を一時的にでも強化しようと考えられた魔法じゃ」


「ドワーフ族は昔から土魔法を利用して鉱山を掘る仕事を行なって来た。山に入ると危険な魔物に遭遇する事がある。鉱山を掘り進めていると魔物の巣と繋がる事もある。そういう時は魔法が苦手な者も戦う必要がある。しかし山に棲む魔物は往々にして土魔法が得意で、同じく土魔法を使うドワーフ族では苦戦するんじゃ」


「これは魔法が得意だったドワーフ族が仲間の身を守る為に考えられた魔法じゃ。レベッカの仲間達は前衛後衛の差が無くなってきたと言っておったが、いざと言う時に覚えておいて損は無いと思うぞ」


 姉さんの意見に対して、ソゾンさんはドワーフ族の過去を振り返りながら魔法の成り立ちを語った。


「そんなドワーフ族の秘技の様な魔法を教わっていいんですか?」


 レベッカさんの不安に大丈夫じゃとソゾンさんが答える。


「別にドワーフ族だけで秘匿している物じゃない。ドワーフ族以外で金属魔法に注目する者は少ないから認知されとらんかもしれんが、金が掛からず武器の強化が出来ると一時期冒険者に広まったんじゃ。今の冒険者ギルドマスターは、この魔法で成り上がったんじゃぞ」


 へえ、あのギルドマスターが。見かけ通りの武闘派だな。


「まずこの魔法に必要な力は、触っている金属を思い通りに変化させる事じゃ。これが出来ないと金属魔法は何も出来ないがな。次に金属の状態を部分的に変化させられる事。溶接を学ばせたのはその為じゃ。勢い余って全体を溶かしてしまう様ではこの魔法は使えん」


 なるほどとレベッカさんが首肯する。


「後は金属の一部を溶かす要領で、剣身よ鋭い刃に成れと念じるだけじゃ」


「え、それだけ?」


 つい声が漏れてしまった。


「魔法は想像力じゃ。溶接は本来高温で熱して溶かす必要が有る。しかし魔法を使えばそんな事しなくても出来る。それは魔導師がそうなる様に想像しているからじゃ。溶接を練習している時にマリーが火魔法を併用してはどうかと助言していたが、想像力を補うには良い方法じゃ」


 褒められたマリーが照れ臭そうにしている。


「我々ドワーフ族は火魔法を使えないが金属を魔法で溶かし、変形させる事ができる。それは幼少期から鍛冶に触れ、炉で金属が溶ける様子を見て来たからじゃ。知識と経験が有れば想像は容易い。儂が今でも炉に火を焼べて鍛冶をやるのは、子供の頃に見た光景を忘れない為じゃ」


 工房にある古めかしい炉にはそういう役割が有ったんだね。


「ゲオルグが考えた色も言霊も、想像力を補助する物じゃろ。儂にとっての炉じゃな。あ〜、つまり変化させたい部分に魔力を送って、一時的に金属の性質を変化させるって事じゃ」


 長話に飽きて1人遊びを始めた姉さんを見て、急に話が終わってしまった。

 いや、俺はその話興味あるよ。もうちょっと続けようよ。


「一時的じゃなくて本質的に変えようとしたらマリーがやった方法になるんですね」


「まあ、そういうことじゃ」


 ダメだ、姉さんがやっている事に気が向いて返事が適当になっている。姉さんは何をやってるんだ。


「見て見て、面白いこと思い付いたから」


 姉さんが剣を片手にそう告げる。

 いつのまにか先程までのように鉄柱を立ててある。それを斬り落とそうと言うんだろうが、随分と距離を開けて立ってるな。走り込んで斬りつけるのか?


 姉さんが腰を落として半身に構え、剣を顔の前で水平に持つ。


「秘技、飛行剣」


 声と同時に突きを放つ。

 同時に剣の先端が分離し、勢いよく射出される。


 全く届かない距離にあった鉄柱の上部3分の1が地面に落ちた。


「あっ」


 千切れた剣は勢いを失わず、鉄柱の先にあった物に直撃した。


「ああああ、儂の大事な炉がああ」


 てへ、やっちゃった。じゃないんだよ姉さん。

 マリーみたいに炉の修復を手伝って。

 レベッカさんも突っ立ってないで。え、あれは何だって?

 知らないよ、火球や水球を飛ばす様に金属も飛ばしたかったんじゃない?

 金属だから物理的な破壊力が凄いね。

 姉さん、褒めてないから。いいえ、皮肉です。

 それよりも炉を修復しないと出入り禁止になっちゃうよ。大事な炉なんだから。




「以前より大きくなったし使いやすそうじゃ。今回の件は許してやろう」


 姉さんが土魔法で簡単に作り替えてしまった。自分で壊しといて、自慢げな態度は如何なものか。

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