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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第1章 俺は異世界で発育する
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閑話 アマちゃんの逃避

 桃馬さんが旅立ってもう2年が経ちます。

 あっという間の2年です。時が経つのは早いですね。

 ご家族は皆元気ですよ。妹さんも随分大きくなり、与えた力にも慣れて来たみたいです。

 でも、ふとたまに、妹さんは寂しそうな顔をします。そんな時は決まって母親にプリンを強請っています。

 きっと、桃馬さんのことを思い出しているんです。

 妹さんは2年経った今も、桃馬さんのことが大好きなんです。

 桃馬さん、元気でやっていますか?こちらのことは心配せずに、成仏してくださいね。


「ねぇ、何してんの。次はアマちゃんの番なんだよ」


 はっ。私は何をしていたんでしょう。

 えっと、マキナが遊びに来て、またゲームで対戦しようってなって、シューティングのスコア対決に決まったから、古い名作を棚の奥から引っ張り出して来たんですよね?

 うん、そこまでは覚えています。

 それから、あー、思い出して来たら腹が立って来ましたよ。


「なんで一回も被弾せずに全クリしちゃうんですか。もう私に勝ち目は無いじゃないですか」


 そうでした。そのプレイを見せつけられて、逃避してしまったのです。詩的なこと考えて現実から逃げようとしてました。


「何体か撃ち漏らした敵がいるから、それらを全部落とせれば勝ちは見えるんだよ」


「その敵はマキナが全力で回避に集中していた、あの弾幕のところの敵ですよね。無理です、私にあんな超絶回避テクは無いんです」


 もう負けでいいです。別のゲームにしましょう。


「次はこっちのゲームにしましょう。2人プレイで、先に全機無くなった方が負けです」


 私はこっちの方が得意だった気がします。目が横スクロールに慣れたところで縦スクロールをぶつける。卑怯ではありません、これが戦略です。これで1勝1敗は決まりですね。


「はい、スタートです」


 さあ始まりましたよ。まずは画面の端っこでアイテム確保です。




「ちょ、ちょっと、それは私が丹精込めて育てた鈴ですよ。なんで取るんですか」


「勝つためには前に出ないと行けないんだよ」


 ぐっ、確かに。私は亀のように縮こまって、アイテムが降ってくるのを待つだけでした。ええい、仕方ない。私も前に出ます。私もマキナの鈴を掠め取ってやりますよ。


 さあ、集中です。ここから巻き返してやります。


「アマちゃん、ちょっと話があるんだけど、いい?」


 え、なんですか?人が気合入れたところに。

 その声はマギーですよね。背後からど突かなくなったのは成長ですが、急に声かけないでください。


「今は忙しいので後にしてください」


 マギーだってDVD観ている時に話しかけられたら嫌ですよね?


「割と急用で、大事なことなんだけど」


 もう、しつこいですね。うわ、鈴に気を取られて被弾してしまいました。でもまだまだこれから。回復アイテムもいずれ来ます。集中集中。


「桃馬のことなんだけど」


 桃馬さん?もう私の手から離れたんですから、マギーの方で上手くやって欲しいです。


「桃馬のことなんだけど」


「マギー、聴こえていますから情報を小出しにせず、一度に全部言ってください」


 うう、また当たってしまいました。話していると手元がぶれます。後1発被弾で負けてしまいますよ。慎重に、慎重に。


「桃馬の件がシュバルトに見つかった」


「うわああ、何やってるんですかああ」


 てへっ、じゃないですよ。いい歳して舌出さない。なんでバレたんですか。説明してください。


「ふふふ、私の勝ちなんだよ」


 あ。いつのまにかコントローラを手放し、マギーの肩を揺さぶってました。


「今のは邪魔されたからです。ノーカンです」


「再戦はいいけど、先にマギーを助けてやって欲しいんだよ」


 いいえ、このまま首が千切れるまで揺さぶってやります。日頃のうらみぃぃ。


「止めなさい」


「いったああい」


 また背後からど突かれました。もういい加減にして下さい。


「もう、誰ですか。げっ、シュバルトさん」


「お久しぶりですね。マギーがいつもお世話になってます」


 シュバルトさんは男神には珍しく、腰が低く丁寧な神ですが、外面だけです。頭が硬く怒ると説教臭くなるネチネチタイプの神です。私は、苦手です。マギーはよく一緒に居られますね。


「お久しぶりです。わざわざこんなところまで、何か御用ですか?」


「お話の前に、マギーをそろそろ解放してやってください」


「はい、今すぐに」


 シュバルトさんの登場に驚いて、いつのまにかマギーの首を締めてました。これは手違いです、すみません。


「ではこれから色々質問します。嘘偽りなく答えてくださいね」


 う、嘘ついたらどうなるんですか。


「ちょっと待って欲しいんだよ」


 ああ、マキナ。助けてください。


「アマちゃんはさっき私との対戦に負けたから、今日は私に所有権が有るんだよ。横取りはやめて欲しいんだよ」


 所有権という言い方がちょっと気になりますが、今はそんなこと言ってられません。マキナ、頑張って。


「そうですか、わかりました。確かに急ぎ過ぎましたね。また改めて伺うことにしましょう」


 ふうう、助かりました。意外と簡単に引いたのが気になりますが、もうそんなことは忘れましょう。


「マキナ、ありがとう」


「この作戦は多分1回しか効かないんだよ」


 大丈夫大丈夫、今の危機を回避出来ればシュバルトさんの気も変わってなんとかなるんですよ。


「マギーは帰らないんですか?」


 もう用は済みましたよね?


「私もゲームしようかな。3人でやろうよ」


 あ、マギーもシュバルトから逃げてますね。マギーがここにいるとシュバルトさんがまたすぐに来そうですが。


 まあ、いいでしょう。マギーとは逃亡者同盟です。しばらく匿ってやりますか。


 3人になったのでどうしましょう、人生ゲームでもしましょうか。ビリになったら罰ゲームですからね。




「2人とも、そんなに人生甘くないんだよ」


 マキナが1位でゴールした時、私達の背後にはシュバルトが立っていました。


 ちょ、ちょっと。今のビリはマギーですから、連れて行くならマギーだけにしてください。マキナ、助けて。

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