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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第32話 俺は5種類の魔物を知る

 ソゾンさんが紙束と睨めっこを始めた翌日、逸る気持ちを抑えて朝食の時間が終わった頃に鍛冶屋を訪れた。


「遅かったなゲオルグ。寝坊でもしたか。儂は寝てないけどな。わはは」


 鍛冶屋に入ると、異様なテンションのソゾンさんに出迎えられた。

 そんなソゾンさんを始めてみたな。


「楽しい事に熱中するといつもこうなのよ。ここまで楽しんでいるのはアリーちゃんが家に来た時以来だから、何年振りかしらね」


 ヤーナさんがソゾンさんの現状を説明する。

 そこまでソゾンさんの琴線に触れるようなことだったのかな。


「ほれ、ついてこい。工房で魔石について話をするぞ」


 ヤーナさんに謝罪をして工房へついて行く。俺も楽しみだったからソゾンさんの歩行が早いのは気にならない。


「では早速どの魔石を使うかだが、この紙を見てくれ」


 ソゾンさんから渡された紙には魔石を狙う魔物について書かれていた。


 火の魔石。マグマスライム。討伐は容易だか、火山内に生息するため探索には手間取るだろう。

 土の魔石。大角山羊。土魔法の得意な個体が群れを率い、巨大な角と魔法で仲間を守っている。

 金の魔石。メタルマイマイ。ジメジメした炭鉱に生息し、硬い殻を破るのは容易ではない。要検討。

 水の魔石。電撃アンコウ。普段は深い海の砂地に隠れる。空腹時の行動力は他の魔物を凌駕する。

 木の魔石。丸呑み錦蛇。毒を持たない種だが、何でも丸呑みできるほど巨大化する。要検討。


 他にも生息地や周囲の生態系が細かく記載されていた。

 魔物の得意な魔法が魔石の属性に影響するんだったな。魔物の名前から得意魔法を想像できる奴と、出来ない奴がいるね。

 その中でも要検討と書かれた2種の魔物が気になる。


「要検討というのは、この魔物が危険な物だからですか?」


「いや儂も初めて扱う魔石だからじゃ。今まで四属性を主軸に考えてきた。他に加わるのは氷結と雷撃魔法くらいじゃ。金属魔法を土魔法と同じ扱いをしておったし、草木魔法に至っては扱った記憶が無い」


 長年魔導具を作って来たソゾンさんでも、初めての事には自信が無いということか。

 雷撃。まだ姉さんが覚えていない魔法だな。魔導具への興味が薄れたら、またどこかへ行って修業を始めるんだろうね。


「金属魔法を扱う時は土系の魔石を利用していたんですね。氷結と雷撃はどうしていたんですか?」


「それぞれの魔法が得意な魔物の魔石を使っておったが、氷結の代用に水を使ったことはある。雷撃を何かで代用したことないのぅ」


「雷撃魔法は金属魔法の派生じゃないかと思います。乾燥した冬の季節に金属を触って、バチッと痛みを感じた事があると思います。それは静電気と呼ばれる物で、雷撃魔法と同じ物だと考えています」


「ふむ。ゲオルグの言う通り金属魔法を土と分けて考えた方が上手く行きそうじゃな。メタルマイマイの魔石を多めに用意して雷撃の魔導具を試してみるか」


「この電撃アンコウっていう魔物は、水魔法と雷撃魔法が得意なんですか?」


「雷撃魔法を使うが得意というほどではない。そいつは獲物を狩る時に弱い雷撃を放つんじゃが、目眩まし程度にしか効果が無い。しかし、眩んだ獲物に素早く近づき一息に呑み込む。その姿が敵に素早く接近して攻撃する電撃戦を連想させ、電撃アンコウと名付けられたと聞く。もちろん水魔法は得意じゃから電撃アンコウの魔石は水じゃ」


「水と雷の2属性に使える魔石なら面白いと思ったんですが、残念です」


「そういう魔石もある。魔吸に使われている物は多属性の魔石じゃな。世の中にはとんでもない魔物がおって、そいつの魔石を使ってとんでもない魔導具を作る馬鹿がおるんじゃ。ゲオルグも子孫から馬鹿にされないよう気を付けるんじゃぞ」


 自分の祖父に対して酷い言い様だ。俺の祖父はそんなことない、こともないか。

 俺も気をつけようとは思うが、その前に孫まで産まれるかな。


「メタルマイマイは恐らく大丈夫じゃ。あいつの殻は自らの魔法で鉄のように硬く強化していくからのぅ。問題は草木魔法の方じゃな。森林に生息していて良好な魔石が手に入るから錦蛇を選んだんじゃが、いまいちピンと来ないんじゃ」


「動物系の魔物って草木魔法が似合わないですよね」


 ソゾンさんの悩みにマリーが口を挿む。その意見には賛成だけど、似合う似合わないの問題でもないよね。


「マリーもそう思うか。実は儂もじゃ。そうなると動物系を避けて植物系の魔物を選択することになるが、あいつらはあまり大きな魔石を作らないんじゃ」


「なるほど、良い魔石を確保し辛いってことですか。どうしてそんな差が出来るんですか?」


「そもそも魔石とは体内で魔力が結合していって出来るものだと言われておる。それは植物系、動物系、無機生物系問わずじゃ。もちろん我々人も。その中でも植物系の魔物は土の養分や水分と同じように、魔力を自らの成長に利用すると考えられている。じゃからいつも体内の魔力は少なく、大きな魔石が出来辛い。これは昔エルフから聞いた話じゃから、概ね間違ってはおらんじゃろう」


「動物系は魔力を成長に使わず貯めて行くから魔石が出来やすいと言うことですね。それならば人にも魔石が出来るんですか?」


「出来る。が、大きくはならない。それは人が生活面で多くの魔力を消費するからじゃ。基本的に魔物が魔法を使用するのは、獲物を狩る、捕食者から逃げる、縄張り争い、求愛行動、子供への教育、この5つが主で、他には特訓や遊びで偶に使うくらいじゃ。しかし人は、特訓や遊びに使う分量が多い。そして魔導具に魔力を注いで、生活を豊かにする。魔石の魔導具を使うことで魔法を使うのが苦手な者も安定して魔力を放出しているんじゃな。あー、ゲオルグは、例外じゃ」


 話の途中で何かに気付いたソゾンさんが言葉に詰まり、急に俺から目線を逸らした。

 全く気にしていなかったのに、そういうことをされた方が傷つくじゃないか。


 隣で話を聞いていたマリーに肘で突かれ、何かの合図を貰う。

 ああ、あれね。わかった。


 2人で作った変顔にソゾンさんは爆笑してくれた。


 最近マリーが面白がって変な流れが出来ています。誰かマリーを止めてください。

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