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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第29話 俺は派閥の一端を知る

 姉さんに負けてびしょ濡れの5人をこのまま帰す訳には行かないから、女性陣を風呂に入れた。男性陣はとりあえずマルテの魔法で乾かしてもらう。

 ついでにマリーと姉さんも。姉さんはもう入ったんじゃないの?

 汗をかいたままだと気持ち悪いって。涼しい顔していたけど、思ったより大変だったのかな。


「マルテの含みは何だったの?」


 男性陣を乾かし終わったマルテに、戦い前から気になっていた事を聞いてみた。


「最初から負けると思っていたらゲオルグ様は止めるかなと思いまして。何度も力の差を見せつけないとラインハルトは諦めないから、今回も闘わせたかったんです」


 止めはしなかったかもしれないが、最初から負けると思っていたら姉さんを連れて来なかったのは確かだ。

 俺のおかずを犠牲にしたんだから、ラインハルトさんにはもう諦めて欲しい。


「ラインハルトさんはまだ目覚めませんか?」


 姉さんの一撃をまともに喰らったラインハルトさんはまだ意識を失っている。

 傍で様子を見ているエルヴィンさんに話しかけた。


「呼吸はしているので大丈夫だと思います。この負けで諦めてくれればいいんですが」


「簡単に負けてしまいましたからね。挑むのは無謀だと分かってくれるでしょう」


「アリー様を倒そうとしているという部分もあるんですが、アリー様を自分の父親が組している派閥に引き込もうとしていまして」


「は?」


 反射で声が漏れてしまった。ラインハルトさんの父親はシュナイデン伯爵だっけ。


「ちょ、ちょっと待ってください。この前は姉さんを冒険者仲間にしようとしたり、魔法を教わろうとしたりしていましたよね。どうしてまた変な考えを持ったんですか?」


「ラインがまだ入学前の女の子に負けたというのがシュナイデン伯爵の耳に入ったそうで、そうとう怒られたようです。その汚名返上の為にアリー様を倒して、更に自分達の派閥に入れようとしています。熱帯土竜の依頼中にマルテ様から受けた修行で自信を付けたみたいで」


「倒そうと言うのは分かりますが、派閥に誘う理由が分かりません」


「優秀な人材を派閥に取り込めば、伯爵の怒りも収まると考えたんでしょう。アリー様ほどの人材が入れば、派閥内での伯爵の立場も上昇するでしょうし」


「エルヴィンさんは派閥に詳しいんですね」


「すべてヴェルの受け売りですよ」


 ヴェルナーさんは少し離れた所で塀に凭れ掛かっている。目が合ったら少し笑ったような気がした。


「ヴェルナーさんが噂を流したんじゃないですか?」


 彼にも聞こえるように少し声を張る。


「そうだ。親父にラインハルトが女の子に負けたと伝えた」


「ラインハルトさんの印象を悪くして、2人を別れさせる為ですか?」


「親父達の派閥争いにも利用できるからな」


「面倒な話ですね。派閥なんて止めてしまえばいいのに」


「何も知らない子供の意見だな。大人達は権力争いが好きなんだ。現王と王弟は仲が悪い。現王が上の兄達を退けて王位に就いたからな。俺の母親は王弟の妻と姉妹だ。親父が王弟派から鞍替えする事などあり得ない」


 メインは王族の権力争いか。現王の就任に納得行ってない人達が多いのかな。少なくとも俺が生まれる前から王の筈だから、随分と燻ってるようだ。


「シュナイデン伯爵はどの派閥なんですか?」


「現王派閥の中でも第二王子派になる。伯爵が第二妃と従兄だったはずだ」


「それはそれは、お互いに身内なら裏切れませんね」


 こっちは現王の息子同士で争いか。確か3人の王子がいて母親が全部違うって聞いたような気がする。


「そういうことだ。お前はどうする。もう派閥を選んでいた方が良いぞ。入学したら直ぐに派閥争いに巻き込まれるからな」


「ご忠告ありがとうございます。王弟派と第二王子派には入らないよう気をつけます」


「ふん、勝手にしろ。どうなろうと俺には関係ない」


 はい、勝手にします。


「ラインハルトさんやヴェルナーさんは父親の派閥に属しているんですよね」


「余程のバカじゃない限り親の派閥に入るだろ」


「うちの父親や東方伯は何派なのか知ってますか?」


「知らん、自分で調べろ」


 そう告げると、もう喋ることはないと言わんばかりに目を瞑って狸寝入りを始めてしまった。




 女性陣が風呂から出てきた頃、漸くラインハルトさんが目を覚ました。

 どういう風に意識を失ったのか、その辺りの記憶がさっぱり無いらしい。


「そんな負け方をしたのか。全く歯が立たなかったんだな」


 そうがっかりするラインハルトさんをヴィルマさんが必死に慰めている。

 苦手な飛行魔法を使えたのが凄いとか、火魔法を放っていれば勝てたとか、傍から聞いていたら甘やかし過ぎじゃないかと思うけど。


「そうだな。次やったら俺が勝つ。ゲオルグ君、アリー殿にまた再戦を挑みに来ると伝えておいてくれ。ではまた」


 エルヴィンさんに肩を借りて立ち上がったラインハルトさんは少しだけかっこつけた。

 まだやるつもりなのか、もういい加減諦めてくれ。


 目覚めたら風呂に入れようかと思っていたけどもういいや、さっさと帰ってください。




 夕食後、姉さんに派閥争いの事を話した。

 学校に行くと派閥争いに巻き込まれるみたいだよ。2つの派閥は特に良い印象が無いから気を付けて。


「大丈夫。私はエマと2人で新たな派閥を作る予定だから。名前ももう決めてあるんだ」


「へえ、名前を聞いてもいい?」


「内緒だよ。そんなことよりも、明日は朝から鍛冶屋に行くよ。今日魔法を使ったことで閃いたことがあるから、試したいんだ」


 内緒だなんて、絶対悪巧みでしょ。

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