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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第26話 俺は自己満足に浸る

 よしよし。これでいいんじゃないか。

 一晩考えた結果、我ながら良い構成を作れたと思う。

 ソゾンさんがフライヤーに使った言語と俺が作り替えた言語を書いた紙を眺めながら自己満足に浸る。


 ソゾンさんが使う言語は一貫しているから分かりやすい。借りた本に書いてあった通りの言語だ。

 1つ文字を排除出来たら他の文章にも応用できる。用不用を判断しやすくて助かる。


「もう出来たのか。ちょっと見せてみろ」


「はい。小さな魔石になると聞いたので、短い文章で同じ火力を出せるよう変えました。時間を設定する辺りはまだ弄っていません」


「この字を消して大丈夫なのか?」


 ソゾンさんが2つの文章を見比べながら、間違い探しのように指摘した。

 マリーも覗き込んで、違いを確認している。


「その文字は接頭語なので無くても意味が通じるはずです。有った方が丁寧な文章になるとは思いますが」


「ここの文字列がごっそり削られているのは?」


「そこは短い単語に言い換える事が出来たので変更しました。意味は変わっていないはずです」


「なるほど。ならば試してみるか」


 そういうとソゾンさんは倉庫から魔石を取り出してきた。


「熱帯土竜の魔石は1つしかないから、別の魔石を使って言語を試そう。マリーはフライヤーの土台を用意してくれ」


 使って良いと言ってくれるなら試させてもらおう。

 心を落ち着けて、一定のリズムで掘り進めていく。今日はいい感じに手が動く。


 出来た魔石をフライヤーにセットする。油は用意して無いから水で試そう。


「うむ。あっという間に沸騰したな。とりあえず起動は問題ない。後で油を用意して適切な温度まで上昇し維持できるか調べよう」


 水での試験はこれで精一杯だな。

 確か圧力をかけたら100度以上になっても水は沸騰しないんだっけ。

 今から圧力を掛ける魔導具を作る、それは大幅な回り道だな。


 じゃあ温度の事は忘れて、次は継続時間に関する所を改良しよう。

 後は何が出来るかな。長時間一定の温度に油を維持する、それだけ出来れば十分だよね。




 次の改良を考察していると、ルトガーさんがやって来た。

 マルテが弟子の教育で自由に動けなくなってから、俺とマリーについて来るのはジークさんかルトガーさんだ。今日はジークさんが仕事で不在。


「マルテさんが子供達を連れて来ました。少し話をする時間が欲しいそうです」


 話?

 昨日の依頼の件かな。じゃあ、ちょっと行ってきますか。


 ルトガーさんについて鍛冶屋の店舗部分に行くと、マルテの他にエルヴィンさんとレベッカさんが居た。マルテは受付に座るヤーナさんと談笑し、他の2人は棚にある武器を見て回っている。


「こんにちは、エルヴィンさん、レベッカさん。マルテの修業はきつくないですか?」


 俺の言葉を聞いた2人が振り返り、挨拶をする。2人ともちょっと痩せた?


「修業は辛いですが、今は楽しいです。学校にもマルテさんの様な先生が居ればよかったんですが」


 エルヴィンさんの褒め言葉にレベッカさんも頷いている。へえ、マルテって教育者に向いてるのかな。


「お世辞を言われても修業の手は緩めませんよ。ゲオルグ様、今日は暫く王都を離れる許可を頂きに来ました」


「どこに行くの?」


 知ってるけど。


「弟子が勝手にギルドから依頼を受けてしまいました。仕方ないので同行して依頼を熟して来ます。もう私から十二分に叱っていますので、ゲオルグ様はお気持ちを抑えて頂くようお願いします」


 あ、はい。大丈夫です。2人もそんなに頭を下げなくていいよ。


「3人で行くのかな。依頼の内容を聞いてもいい?」


「弟子達の友人と夫を含め7人で行ってまいります。依頼内容は熱帯土竜の魔石を5つ納品です」


 ジークさんも参加するなら心配する必要ないかな。

 しかしジークさんは簡単に仕事を休め過ぎじゃないか?

 父さんなんて全然休めないって零しているのに。


「帰って来る予定は何時頃?」


「移動に10日、狩り及び鍛錬に10日を予定しています。長期の不在となることをお許しください。私達の不在の間、息子達は勝手にさせておきますので、娘をよろしくお願いします」


「分かった、気を付けて。見送りしたいから明朝家に来てね」


 そういって俺は工房に戻った。

 すんなり許可が出たことにエルヴィンさん達が首を傾げていたけど、俺だって文句を言うだけじゃないんだよ。




 翌朝、朝食前に現れた8人を出迎える。

 これから暫くマリーは我が家で寝泊まりだ。流石に一緒には寝ないけど、懐かしいね。


 旅立つ7人に餞別を渡す。昨日マルテ達と別れた後に急遽作った物だ。


「これは水が溜まる水筒。底に設置している魔石に魔力を込めると一晩で水筒一杯に水が溜まるから、寝る前に魔力を込めてね。こっちは黒曜石をはめ込んだ指輪。小さいけど水魔法を込められるから何かの役には立つと思うよ。指に嵌めて反対の手で鉱石に触ると魔法が発動するから。こんな風に」


 やり方を説明し、ジークさんに向かって水球を放つ。

 ジークさんは素早く剣を抜き、水球を一刀両断して魔法を防ぐ。あれは普通の剣だ。今回は魔吸を持って行かないみたい。

 おおっと5人から拍手が起こる。尊敬の眼差しを受けて少し自慢げだ。


 マリーにもう一度魔法を込めてもらい、纏めてマルテに手渡す。


「次からはマルテが魔法を込めてあげて。水筒の魔石は小さいから込める魔力は少量で良いよ。沢山込めても水が溜まる速度は変わらないし、一定量水が貯まったら起動しないようになってるから」


 おっと、あまり長く引き止めていると馬車が出発しちゃう。

 まだ説明し足りない気もするけど、使ったら分かるか。


「これ全部返さなくていいからね。気を付けていってらっしゃい」


 ちょっと荷物になっちゃったかな。全員分の水筒は奮発し過ぎ?

 自己満足かもしれないけど、偶には部下に良い顔をしたいじゃないか。

 あんまり表情に出てなかったけど、みんな喜んでくれていると信じよう。

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