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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第23話 俺はマリーに揶揄われる

「もし俺の部下になってマルテから魔法を習いたいという気持ちが残っているなら、明日の朝もう一度家に来て下さい」


 飛んで行った姉さんを見て唖然としている5人にそう伝えて帰した。出来ればもう来て欲しくないけど。


「今日は怒ってたね」


 5人を見送って2人きりになった後、マリーにそう言われる。


「怒っているように見えた?」


「ヴィルマさんから話を聞いていた時に凄い顔してたよ。すぐ顔に出るんだから」


 その時の表情を思い出したのか、マリーがクスクスと笑っている。

 怒っていたのかな。怒っていたのかもしれない。自分でもよく分からずに喋っていた事は覚えている。


「貴族の女の人は早めに結婚を考えるもんだ、って母さんが言っていたよ。ヴィルマさんが結婚をしたがっているのは普通の事なんじゃない?」


 確かにその通りなんだろう。でも、その考えが皆の足枷になっていると思うんだけど。


「ははは、また怖い顔になってるよ。そろそろお昼御飯だから、食べたら魔石を買いに行こう。外に出て気晴らしをした方が良いよ」


 怖いと指摘された顔をマッサージする。

 ついでに変顔をしてマリーを笑わせよう。何やってるのとか真顔で言わないで、ただの気晴らしだよ。




 昼を幾らか過ぎて冒険者ギルドにやって来た。今日は絡まれなかったね。マルテの顔を見て逃げ出す冒険者さんがいたけど、昨日何をやったのか教えて欲しい。


「すみません、昨日俺達が帰ってからラインハルトさん達は来ましたか?」


 受付のお姉さんに5人の事を尋ねる。昨日も居た人だから、俺達の事は覚えているはずだ。


「昨日君達を追ってギルドを出て行った後、夕方にもう一度来て5人のうち3人が謝罪してきたわ。それ以来来ていないわね」


「5人じゃなくて3人ですか?」


「ええ、他の2人は言い争いをしていたから。いつもの事だけどね。4月からよく喧嘩しているのよ」


 まったく、どこでも迷惑をかけている人達だな。


 マリーに肘で突かれた。

 なんだよと非難の視線をマリーに向けると、顔を手で押さえて変顔をしていた。なんだその顔、破壊力が凄い。


 腹を抱えて笑っていると、マルテが受付嬢に謝罪し、俺達を販売部の方へと誘導する。

 受付嬢の笑顔が凍っていたけど、どうしたんだろう。


 販売部では昨日買った物より少し大きな魔石を2つ買った。大きくなると費用も上がる。そろそろ手持ちが寒くなってきたな。


 ギルドから鍛冶屋への道すがら、お金の事を考える。最近は船外機も売れなくなってきたから、また何か作らないとな。


 ソゾンさんに挨拶をして作業の準備を行う。昨日に引き続き、改良ドワーフ言語を魔石へと刻み込む。


「あれ、上手く行かないな。言語内容は昨日と大きく変えてないんだけど」


「私も昨日と同じように作りました。魔石が入る所だけ少し広く作りましたけど」


 マリーも失敗はしていないと主張する。もう一度言語を紙に書いて組み立ててみるが、どこも間違ってないと思うんだけどな。


「ゲオルグ、今日はもう止めておけ。失敗した理由はゲオルグの精神が安定してないからじゃ。気が高ぶっている時は文字がぶれる。自分では気づいていないようじゃが、同じ文字でも大きさが違うし、ここは線が途切れている。それに全体がやや右上がりになっておる。そういう小さな違いが影響するほど繊細なんじゃ。特に長い文章になればな」


 昨日刻んだ魔石と見比べてみると、確かに言われた通りの違いがある。

 1つ魔石を無駄にしてしまった。もっと早く教えて欲しかったな。


「こういうのは経験してみないと分からないことじゃ。まあしばらくは作業を休んで、気晴らしでもしておけ」


 くっそ、あの人達と知り合ってまだ2日目なのに、迷惑をかけられっぱなしじゃないか。

 万が一彼らが明日家に来たら、絶対に文句を言ってやる。


 マリー、もうその顔では笑わないよ。




 翌朝、朝食を食べ終わりゆっくりしていると来客が現れた。

 エルヴィンさんとレベッカさんだ。今日はマルテにも居てもらおう。


「僕達を君の部下にして下さい。よろしくお願いします」


 頭を下げる2人に疑問点を伝える。


「他の3人はどうしたんでしょうか」


「彼らはやはり男爵家の下に付くことを拒否しました。なので、彼らと別れて僕達だけで来ました。僕らは君の部下として仕えます。しかし、ここで教わった魔法を彼らに教える事は許可してください」


 そういう風になったか。いつまでも時間を掛けているとこっちも作業が進まない。どうせマルテに全部やってもらうんだから、その話を承諾しよう。


「マルテ、この2人の教育をお願いね」


「畏まりました。この2人を今後どのように扱うか、お考えはありますか?」


 考え。どのように扱うか、か。


「そこまで深く考えてないけど、エルヴィンさんはルトガーさんのように、レベッカさんはマルテかアンナさんのようになってもらえると将来助かるんじゃないかな」


「ではそのように。君達は私の家で寝泊まりしなさい。魔法と共に貴族に仕える基礎を叩き込みます。その後ルトガーに付けて仕事を学ばせましょう。定期的に休みを与えるので、その日は好きに使わせます」


「あの、冒険者としての仕事も続けたいのですが」


「暫くは諦めなさい。頑張っていれば私からゲオルグ様にお願いして、長期休みをもらいます。その時は実戦について詳しく教えましょう」


 エルヴィンさんの言葉にスラスラとマルテが答える。もうどうするか決めていたんだろう。

 部下ってことになると、俺から給料を出すんだろうか。お金、無いんだけどな。


 今日はマリーの変顔を見ずに済んでホッとしている。

 誰か俺に、ポーカーフェイスを教えてください。

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