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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第22話 俺は熱い男に水を差す

「何故すぐにでも結婚したいのか。それは俺達が愛し合っているからだ」


 ノックも無しに応接室に入ってきたラインハルトさんが、恥ずかしいセリフを臆面も無く言い放った。

 先ほどまで暗い顔していたヴィルマさんが一転笑顔になる。


「愛し合っている2人は何時も一緒に居るべきだ。そうだろ?」


 知らないよ。前世を通して愛し合った事が無いんだから。

 俺が反論しないのを肯定と取ったのか、1人でうんうん頷いている。もう、それでいいや。


 それよりもヴィルマさんとの話が終わってないんだ。


「まだヴィルマさんと話をしている所です。勝手に入って来ないでください」


「そうは行かない。俺はヴィルマを助けるために産まれて来た男だ。これ以上婚約者を虐めるのは止めて頂こう」


 俺の拒絶を全く意に介さず、ラインハルトさんはヴィルマさんの横に座ろうとする。

 エルヴィンさんが俺に申し訳ないと小声で伝えて立ち上がり、ラインハルトさんに席を譲った。

 ラインハルトさんは当然のようにソファーに座る。


 ヴィルマさんは先程までの俺の追及をラインハルトさんに報告。

 まるで俺が悪役で、ラインハルトさんが救世主のように。

 確かに言い過ぎた所はあったかも知れないけど、それは話を盛り過ぎじゃない?


 愛し合う2人には苛立ちを覚えるが、仲間から見えない位置に立ってニヤニヤしているヴェルナーさんが一番むかつく。ラインハルトさんがこういう行動をとるよう入浴中に誘導したんだろうか。


「君、女性に対する扱いがなっていないようだね。謝罪を要求する」


 俺と視線をしっかり合わせ語りかけて来る。自分が正しいと信じているようだ。


「貴方こそ御自身の立場が分かっていないようですね。将来的に皆さん俺の部下になるんですよ。俺の方が立場は上です」


「その話は無かったことにしてくれ。やはり伯爵家の男が男爵家の配下になるなど良くなかった。マルテさんの弟子になることは諦めよう」


 また行動を変えるのか。それならもう俺には関係無いから出て行ってもらおう。

 それまで俺の目を見て話していたラインハルトさんが、視線を横に動かした。


「そこで俺は考えた。お嬢さん、君の素晴らしい魔法に惚れてしまった。俺達の仲間になって一緒に冒険しよう」


「へ、わたし?」


 急に話を振られた姉さんが素っ頓狂な声を上げた。ラインハルトさんはしっかり目を見て話す人みたいだから、目が合ってたら姉さんだよ。

 惚れたと言う言葉を聞いてヴィルマさんがちょっとだけ嫌そうな顔をしているのには気づかないんだろうな。


「そう、君だ。俺とヴェルが手も足も出なかった。これまで同年代に君みたいな女の子が居るなんて知らなかった。そんな才能を埋もれさせるなんてもったいない。ぜひ一緒に魔物を倒しに行こう」


 レベッカさんが笑いを堪え、エルヴィンさんは大きなため息をつく。


「ええっと。貴方には、こちらの女性が、同年代に見える、ということですか?」


「そうだ。少し幼くも見えるが、俺の母親もいつまで経っても若い人だ。外見だけで判断してはいけない。俺達を圧倒する程の力を見るに1つ上から1つ下くらいだろう。下なら卒業を待つつもりだが、学業と並行して我々に魔法を教えて欲しい」


 自分が正しいと言わんばかりの力強さ。その力の源は何処にあるんだろう。


「ラインハルトさんが兵士や役人じゃなくて冒険者に拘る理由は何ですか?」


「子供の頃、母親と2つの約束をした。1つ、愛した女性を守る。2つ、歴史に名を残す英雄になる。最愛の女性は見つけた。後は英雄になるだけだ。戦争の無い時代に兵士や役人では英雄になれない。凶悪な魔物を退治し、未開の地を切り開く。そんな英雄になる為、俺は冒険者を選んだんだ」


 選挙演説でもしているかのような気迫が有る。悪く言えば、暑苦しい。

 冒険者ギルドでマルテに問い詰められていた時とは別人のようだね。


 そんな彼を見てヴィルマさんが拍手を送る。1人は俯き、2人は声を殺して笑っている。皆色々な思惑がありそうだ。


 姉さんとマリーはラインハルトさんに対して引いている。あまり凝視しない方がいいよ。


 俺はこの2人ほど引いてはいない。自分の信念に熱くなるのは分かる。

 でもちょっと暑苦しいかな。涼しくなるよう、熱い男に水を差してあげよう。


「姉さん、今何歳だっけ?」


「え、9歳だけど。忘れないでよ」


 頬を膨らませ不機嫌を露わにする。ラインハルトさんに対する不快感を俺にぶつけないでよ。


「いや忘れてないけどね。来年学校に行くんだよね」


「そうそう。ほんとは行きたくないんだけどね。自由に動けなくなっちゃうから」


 俺達の会話で姉さんが就学前だと言うことに気づいてくれたようで、ラインハルトさんが絶句している。

 それはヴェルナーさんも同じだ。笑顔が消えたな。自分たちの力の無さをもっと自覚しろ。


「姉さん、この人達が魔法を教えて欲しいって言ってるけど、どうする?」


 断れ、断れ。


「教えるのはいいけど、私について来れるなら」


 げ、了解しちゃった。


「おお、それはありがたい。では早速教えて欲しい」


 一瞬で元気を取り戻したラインハルトさんが積極的に行動する。

 ずっと年下だという不都合な点は脇に置けるんだね。羨ましい性格してるよ、まったく。


「今日はこれからヴルツェルに行く予定だから、教えるのはヴルツェルに着いてからだね」


「もうお昼も近いのにこれから出発するのはダメだ。宿場街へ着く前に夜になってしまうぞ」


「ゲオルグ、この人の言っている事が分からないんだけど」


 あまりあの人の考えは分かりたくないけど、分かってしまうから通訳しようか。


「姉さん、普通の人はね、ヴルツェルまで半日で到着出来るとは思わないんだよ」


 姉さんクラスの風魔導師じゃないと理解出来ないんだわ。


「え、そうなの。ついて来られないのなら魔法を教えるのは無理だね」


「そ、そんなこと言って最初から教える気が無かったんだろ」


 ラインハルトさんが発言する。まあ普通は信じられないよね。


「姉さん、もうヴルツェルに行く準備は出来ているの?」


「アンナが用意してると思うからすぐ出られるよ」


 それならと、皆を連れて庭に出る。何をする気かと聞かれるが答えない。見れば納得するよ。


 庭には既に荷物を持ったアンナさんが控えていた。相変わらず急に現れる人だ。


「じゃ、行ってきます」


 姉さんの体が飛行魔法で少しずつ上昇する。


「行ってらっしゃい」


 俺の返事を聞いた姉さんが、ドンっという音を残して飛び去って行った。

 8日ほどで帰ってきますと言葉を残し、アンナさんも姉さんに続く。


「アンナさんが追いつけるようゆっくり飛んで行きましたね。アリー様の本気を見られるのは、外門での出入手続きが終わってからですね」


 そういうマリーの言葉を聞いて、5人は黙り込んでしまった。

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