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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第19話 俺は5人の事情を聴取する

 エルヴィンさんとレベッカさんの緊張も薄れたみたいだから、5人についての話を聞こう。


「まずは皆さんの関係を知っておきたいです。ヴェルナーさんとヴィルマさんが兄妹ということは分かりましたが、他の皆さんは学校で知り合ったんですか?」


 エルヴィンさんとレベッカさんが顔を見合わせて譲り合っている。じゃあ代表してエルヴィンさんどうぞ。


「ええっと、先ずは残り3人の境遇を話しましょう。ヴェルナーとヴィルマはリーベン伯爵の子共です。ヴェルナーは正妻の3男、ヴィルマは妾の娘。なので同年齢ですが双子という訳ではありません」


 どうりで似てないと思った。いや、二卵性双生児ならそこまで似ないか。


「もう1人がラインハルト・シュナイデン。シュナイデン伯爵の4男です。シュナイデン伯爵家とリーベン伯爵家は派閥が異なり元来仲は良くないんですが、学校に通ううちにラインハルトとヴィルマが恋仲になってしまいまして」


「あ、そういう」


「ヴィルマは妾の子とはいえリーベン伯爵家で唯一の娘。とても大切に育てられたそうですよ。ヴェルナーが我々と行動を共にしているのは、妹を守る為です。父親からは2人を別れさせろとでも言われているかもしれませんが」


「なるほど。ヴェルナーさんもめんどくさい立場なんですね」


「ヴェルが嫌々私達と一緒に居るのには同情するけど、ラインと喧嘩したらヴィルマが悲しむって常日頃言っているのに全く態度を改めない。私が農家の娘だからって馬鹿にして」


 急にレベッカさんが話に割り込んできた。俺がヴェルナーさんを少し擁護したのが気に入らなかったのかな。


「レベッカ、口調が普段の感じに戻ってますよ。貴族と会話する時は少し抑えてくださいって常日頃言ってますよね」


 エルヴィンさんに窘められたレベッカさんが反抗的な態度を見せる。地を隠すのって難しいよね。


「あ、俺は気にしないので、普段の話し言葉で大丈夫ですよ」


「ありが」「ダメです。気軽に話せる時から気をつけないと、いざという時に上手く出来ませんから」


 喜びを表現しようとしたレベッカさんを、エルヴィンさんが上から押さえつける。

 エルヴィンさんの言っていることは正しいと思うけど、堅苦しさも感じる。


 レベッカさんがエルヴィンさんを睨みつけて喧嘩に発展しそうだから、話を変えて気を紛らわそう。


「レベッカさんとエルヴィンさんも学校で知り合ったんですか?」


「そうですね、共に行動するようになったのはラインとヴィルマが付き合いだしてからですが。元々僕は入学前からラインと知り合いで入学時から一緒に居ました。レベッカとヴィルマは入学後に知り合ったんですよね?」


「ええ。村から王都に来たのは私だけ。同じ奨学生でキュステ出身者には村出身をバカにされた。友達も出来ず1人で行動していた私をヴィルマが食事に誘ってくれたのよ。ヴィルマは誰かさんと違って優しい子だからね」


 あえてフランクな話し言葉で会話するレベッカさん。誰かさんって言うのは隣に座っている方だよね。よくそんな至近距離で喧嘩を売れるな。


「あー。じゃあラインハルトさんと共に行動しようとしているのは恋人のヴィルマさんと友人のエルヴィンさん。ヴェルナーさんとレベッカさんはヴィルマさん次第って感じですか?」


「そうね。私はヴィルマが嫁に行くまで一緒に居るつもり」


 レベッカさんが王都に残りたい理由はヴィルマさんを心配しているからかな。


「ラインハルトさんが冒険者を選んだのはお金と名誉の為だってギルドで言ってましたよね」


「お金を稼いで有名になって、リーベン伯爵に結婚を認めてもらうのがラインの目的です。僕が一緒に行動しているのは友人だという点の他に、魔物革を欲している事情と上手く折り合いがついたからです」


「王都に居るより、魔物がよく出る地域を拠点にした方がいいんじゃないですか?」


「ヴィルマが冒険者になる条件として王都を拠点にする事と伯爵から言われたそうです。ずっと手元に置いておきたいんでしょう。ただゲオルグ君の言う通り魔物が出ない王都の依頼は殆ど護衛依頼です。新米の冒険者には受け辛い」


 そうでしょうね。


「僕1人でも王都から拠点を移そうかと思っていた時に武闘大会を観戦し、ギルドでマルテさんを見かけました。マルテさんに弟子入りして力をつけようと、皆を焚きつけたのは僕です。どうかマルテさんに弟子入りを認めてもらうよう、ゲオルグ君からも助言してください」


 エルヴィンさんが頭を下げて、俺に懇願して来る。レベッカさんも一緒に。

 1人は寂しい。出来れば気の合う友人とって思うよね。

 しかし、マルテが出した条件に問題がある。


「マルテに弟子入りする条件に、俺の部下になるっていう内容があると聞いたんですが、皆さんはそれを納得しているんですか?」


「私は大丈夫。他にやりたいことも無いから」


 レベッカさんが即答する。


「僕は、正直まだ考えています。ゲオルグ君の部下になって魔物革が手に入らなくなるのは困ります。しかし僕が部下になることでハンデル商会が両フリーグ家や東方伯家と太い繋がりを持てるなら、それも家族の役に立つことかなという思いもあります。他の3人の考えは分かりません」


 エルヴィンさんが少し考えた後、ゆっくりと自分の考えを伝えてくる。


「お2人の考えは分かりました。2人が希望するなら、マルテに師事出来るよう口添えします。後は3人次第ですね」


 2人は悪い人じゃなさそうだ。将来の事を深く考えていないレベッカさんは少し気になるけど、そのうちやりたい事も出来るだろう。男爵家のメイドとして働いてもらってもいいしね。


 2人との面接を終えてソファーから立ち上がろうとした時、3人を庭に連れて行ったメイドさんが慌てた様子で戻ってきた。


「アリー様が、喧嘩に割り込んで、ぼこぼこに、大変なことに」


 ルトガーさんに落ち着きなさいと叱られているメイドさんは普段から慌てん坊な人だ。

 よく分からないけど、多分姉さんがやり過ぎたんだろうな。

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