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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第18話 俺は初めての面接を行う

 翌朝、朝食を食べていると、青少年達がやって来た。

 朝食を食べる時間への訪問が常識的かどうかは迷う所だ。朝食を食べ終わるまで応接室で待たせても大丈夫だろう。


「おはようございます。朝早くからどうしたんですか?」


 朝食を食べ終えゆっくりした後、応接室に向かって挨拶をした。

 マルテが居たら話辛いこともあるかと思って入室したのは俺だけ。応接室内には彼らの他に、ルトガーさんと2人のメイドさんが控えていた。朝早くからありがとう。

 俺の言葉にソファーに座って紅茶を飲んでいた彼らが反応する。


「おはようございます。昨日は失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした」


 リーダー格と思われる人が立ち上がって頭を下げる。

 他の3名は同様に頭を下げたが、一番遠くに居る1人がもの凄く悔しそうな顔を一瞬見せた。


「一番後ろに居る貴方、そう貴方です。不服そうですね。そんなに嫌なら帰ってもらえますか?」


 あいつは冒険者ギルドで俺とマリーを邪険に扱った奴だ。元々そういう性格なのかもしれない。


「おいヴェルナー、きちんと謝罪してマルテさんに弟子入りするんだって皆で決めただろ。お前独りの態度で皆が迷惑するんだ。態度を改めろ」


 リーダーが不遜な態度を見せる青少年を窘める。客前で店員を叱りつける店長って嫌いだったな、と何となく思い出した。


「“炎獣”に弟子入りするのは賛成したが、こんなガキの下につくのは納得していない。だいたいお前がリーダーなのも認めていない。妹のヴィルマを守るために俺はここに居るんだ」


 あらら、ヴェルナーさんはシスコンか。

 女性が2人居るけど、少し恥ずかしそうにしているのがヴィルマさんかな。

 他の2人は彼らの言い合いに溜息をついている。普段からこんな感じなんだろうか。でもここで仲違いされるのはめんどくさい。


「すみません、喧嘩なら外でどうぞ。貴方と貴方と貴女、3人は退席してください。庭に咲いている花を見ると心穏やかになると思いますよ」


 部屋の隅に控えていたメイドさんにお願いして、3人を庭に案内してもらう。

 喜んで出て行く人と、渋々な人。ヴィルマさんには2人の仲を取り持つよう動いてほしいな。


 3人が部屋を出るのを見送った後、残された2人に向き直り、再度挨拶をする。


「おはようございます。俺はフリーグ男爵家長男のゲオルグ・フリーグです。今6歳で、次の3月に魔力検査を受ける年齢ですね。お2人の名前をお聞きしてもよろしいですか?」


 笑顔で挨拶をした俺を見て、残された2人は少しほっとしたような表情を見せた。


「おはようございます。僕は王都に本店があるハンデル商会の5男、エルヴィン・ハンデルです。ハンデル商会はヴルツェルのフリーグ家と懇意にさせてもらっています」


「おはようございます。私はレベッカ。実家はキュステの北にある小さな村で、農業を営み麦藁帽子を売っています。東方伯が行なっている奨学金制度を利用して、王都の学校に入学しました」


 おや、意外にも男爵家と縁があるんだね。この2人は話がしやすそうだが、まだちょっと緊張しているかな。


 ルトガーさんに紅茶を入れなおすようお願いする。2人はソファーに腰かけてもらい、俺はその間に自室と応接室を往復した。


「2年前くらいにキュステの北の村で買った麦藁帽子なんですけど、レベッカさんの実家の商品ですか?」


 自室から持って来た麦藁帽子をレベッカさんに手渡す。


「2年前なら麦藁帽子を売っている店は1店舗だけになっていたはずです。私の母が作った物で間違いないかと思います」


 懐かしそうに帽子を撫でながら、レベッカさんが漸く笑顔を見せてくれた。


 ソファーに座って2人と対面し、まだ帽子を手放さないレベッカさんに話しかける。


「東方伯の奨学金制度なら、卒業後は東方伯の下で働くとか、そういう条件はなかったんですか?」


「働くなら奨学金は返金しなくていい、働かないなら無利子で返済という条件でした。私はもう少し王都に居たかったので、返済の方を選びました」


 無利子だなんて東方伯も優しい所があるじゃないか。

 王都に残りたかった理由は恋人かな。3人の中に好きな人でも居るのかも知れない。聞き辛いから聞かないけど。


 紅茶に一度手を付け、今度はルトガーさんに話しかける。


「不勉強でハンデル商会の事を知らないのですが、王都では有名な商会ですか?」


「そうですね。王都には大きな商会が3つありまして、その1つがハンデル商会です。革製品や織物が主力製品だったと思います」


 ルトガーさんの言葉を聞いてエルヴィンさんと目を合わせる。


「大きな商会なら実家の仕事を手伝えばよかったのでは?」


「僕は5男ですから、もう商会内では居場所が無いと長兄に言われました。内がダメなら外から商会の役に立とうと冒険者になったんです。僕が魔物の革を獲り商会に卸すことで、さらに商会が発展すると考えました」


 ルトガーさんに目配せをして、応接室から出て行ってもらう。


「商会内で革製品の加工も行っているんですか?」


「はい、各地の革職人と契約していて、王都内では兄の1人が職人として働いています。動物革と魔物革、どちらも扱っていますよ」


 エルヴィンさんの実家の話をしていると、ルトガーさんが帰って来た。

 俺はルトガーさんから剣帯を受け取り、エルヴィンさんに見てもらう。


「この剣帯を見てどう思いますか?」


「キメが細かくて綺麗な革ですね。この手触りと硬さは牛革でしょうか。留め具との繋ぎ目も素晴らしいですね」


 真剣な顔で剣帯を批評している。その言葉が俺のご機嫌取りかどうかは置いておこう。


「昨日会ったドワーフ族の職人が作ってくれたんです。良い出来でしょ」


「はい、是非うちの商会と契約して欲しいですね。今度話を伺いに行ってきます」


 エルヴィンさんも笑顔を見せてくれた。家族の役に立てるって嬉しいよね。


「お2人の気持ちが和んだようなので、少し質問をさせてもらいますね」


 さて、何から質問しようかな。

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