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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第16話 俺は5人組の冒険者に出会う

 俺達が魔石を購入してマルテを迎えに行くと、相変わらずマルテの周りは騒がしかった。

 だがマルテに絡んでいるのは、おっさんから青少年達に代わっていた。


「俺達、戦争の英雄に憧れているんです。是非マルテさんの元で修業させてください」


「私はもう只の主婦だから、他の人を頼りなさい」


「武闘大会で戦うマルテさんを観ました。俺達もあんな風に戦いたいんです」


 断るマルテに青少年が喰らいついている。彼と同様にマルテを取り囲んでいる人が4人。彼の仲間かな。喋るのは彼に任せているようで、じっとマルテを見つめている。


「私よりも魔法が上手な人は沢山いる。武闘大会を観ていたんなら“暴風”が所属しているクランを紹介するよ」


「俺達はこの春に学校を卒業したばかりです。あそこのクランは俺達じゃない他の同級生を新人として仲間に入れました。もう新たに新人を雇ってくれる枠は無いんです」


「なるほど、魔法の才能が同級生に及ばなかったんだね。才能が無いなら冒険者を目指さず、兵士になるとか役人になるとか、進む道は色々あったじゃないか」


 マルテがはっきりと断言した。魔法の才能が無いって言い切られるのは辛いよな。俺もよく分かるよ。俺は自分が神様に頼んだせいだけど。

 弟子になりたいと熱く語っていた彼も口ごもってしまった。痛いところを突かれたんだろうな。


「それは、その、お金と名誉のために」


「はあ、最悪だ。冒険者は手っ取り早く稼げるとでも思ったのかね」


 彼がなんとか絞り出した言葉を聞いて、マルテが頭を抱えている。

 話を聞いていた周りの冒険者達も呆れた様子。

 だからと言って自分達の仲間に入れてやろうと手を差し伸べる人は居ない。その辺りは自己責任だと言うことだろう。


 このまま様子を見ていてもマルテが青少年達の心をへし折るだけだろうから、声をかけてさっさと終わらせよう。


「なんだお前たちは。今は俺達がマルテさんと話しているんだ。邪魔をするな」


 マルテに近づいて声をかけようとしたら、今まで黙っていた青少年の一人が遮って来た。

 俺とマリーが明らかに年下なのを見て強気に出たんだと思うが、やってしまったな。


「私の息子と娘が邪魔をして悪かったな」


 ああ、マルテが怒っちゃったよ。

 怒気を隠そうとしないマルテに青少年達だけじゃなく、周囲の冒険者達からも謝罪の声が飛ぶ。

 どうしてそんなに慌てているのか。俺達が居ない間に起こった出来事を教えて欲しい。


「マルテ、俺達は怒ってないから抑えて抑えて。もう魔石を購入したから帰ろう」


 どうどうとマルテを宥めて帰宅を促す。さっさと帰らないと皆の迷惑だ。




「尾行が下手じゃな。あれでは弱い魔物を狩るのも難しいじゃろう」


 冒険者ギルドから鍛冶屋への帰り道、青少年達は俺達の後をつけていた。

 素人の俺でも気付くんだから、下手と言うより隠れるつもりが無いのだと思いたい。これまでの彼らに褒められる所があるとしたら、諦めない根性かな。


「面倒を見てあげたら?」


 少しだけ彼らの手助けをしてみる。


「ダメですね。だいたい冒険者に拘る必要は無いんですよ。地方の寒村と違って、王都には仕事は沢山あるんですから」


 外気を吸って落ち着いたのか普段のマルテに戻ったようだ。


「このまま家までついて来たとして、中で騒ぐなら追い出すからな」


 追い出すくらいで済ませるなんて優しいですねと、マルテがソゾンさんを煽っている。

 普段のマルテじゃないな。




「マルテさん、先程伺った人相の子達が来てるんですけど、帰ってくれないので少し話をしてくれませんか?」


 工房で魔石に細工をする準備をしていた俺達の所へ、受付で座っていたヤーナさんがやって来た。青少年達は諦めることなく鍛冶屋に入ってきたようだ。


「分かりました。すみません、出来るだけ早めに終わらせます」


 他に客が居ないから良いんだけどねと言うヤーナさんと共に、マルテは行ってしまった。

 暴力的な行為に出なきゃいいけど。


 それはそうと、俺は俺でやりたいことをやろう。


 リザードの魔石を取り出し、魔力を込めたナイフでドワーフ言語を刻み込んでいく。魔力はマリーに込めてもらった。相変わらず一人では何も出来ないが、もうそんなことは気にしない。


 俺が作業をしている間に、マリーには魔石を入れる土台を作ってもらう。

 完成品のイメージはしっかり伝えてある。ソゾンさんも手伝ってくれるだろうから、多分大丈夫だろう。

 マリーも金属加工が大分上手くなってきた。まだまだソゾンさんや姉さんには勝てないけどね。




 ふう、疲れた。1つの小さな魔石を削るだけでこんなに体力を使うのか。ソゾンさんがよく使う大きさの魔石を集中して削り切る自信はないぞ。


「ふむ。もっと突拍子も無い内容を刻むかと思ったが、意外と手堅いな」


 手を止めた俺に様子を見ていたソゾンさんが意見を述べる。


「まずは勉強した内容でちゃんと動くかどうか知りたかったので。これが正常に動いたら、次は俺なりに言語を工夫します。マリー、魔導具の本体は出来てる?」


 バッチリだよと言うマリーから本体を受け取り、それの右側面に魔石をセットする。

 魔導具をマリーに返し、魔導具から少しだけ顔を出している魔石に魔力を込めてもらう。

 その間にソゾンさんが、魔導具の試運転用に数切れのパンを持って来てくれた。


 魔導具を机の上に置く。

 前面右側には温度を調節するつまみと、加熱時間を調節するつまみがある。どちらのつまみも回し、魔導具を起動する。

 魔導具の前面にはつまみ以外に、前方に倒れるように開くドアが付いている。ドアの中央にはガラスが嵌っていて、魔導具の内部が覗ける仕組みだ。マリーが作るガラスはまだちょっと曇っている。

 ガラスから覗ける魔導具の内部では、上部と下部にあるヒーターが赤く光っていた。


 魔導具の内部が熱を持っていることを確かめ、上下ヒーターの間にある金属網の上に一切れのパンを乗せる。


 まあつまり、オーブントースターだ。

 後は思った通りに食材を加熱出来たら完成。問題無く出来ていたら魔石に使う言語の改良だ。

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