第15話 俺は魔石を購入する
武闘大会後、日常が戻ってきた。
俺はドワーフ言語の勉強を継続している。
だいたい言語も理解できるようになった。漢字を知っていたアドバンテージを考慮しても上手く行っていると思う。
そろそろ簡単な魔導具を作ってみたい。
「そうか。じゃあ魔石を買いに行かないとな」
作りたいとソゾンさんに相談したら、そんなことを言われた。
「魔石ってどこで売ってるんですか?」
「まあ色々な商人が取り扱っているが、冒険者ギルドに行くのが一番じゃな。魔物を討伐してきた冒険者が売りに来るから」
「王都周辺って魔物はいませんよね。どこから獲って来てるんですか?」
「護衛依頼で他国まで行った冒険者が、道中襲ってきた魔物を狩ってくるのが多いじゃろうな。魔石が欲しいと依頼を出せば、それ専門に熟す冒険者が獲って来てくれるぞ。あとは各地の冒険者ギルドで売れ残った魔石が王都のギルドに集められるんじゃなかったかの」
王都から遠く国境に近い方が魔物は出るんだっけ。グリューンは山に近いし、あの辺りは生息しているのかな。
「じゃあちょっとギルドまで行ってくる。一番安い魔石でええじゃろ?」
「あ、俺もついて行きたいんですけど」
知識として売られている所を見ておきたい。選べるなら自分で魔石を選びたいしね。
「子供がギルドに行くと危ないんじゃが、マルテさんが一緒なら大丈夫か」
マルテは武闘大会で活躍してから知名度が上がった。一緒に街を歩いていたら声をかけられるもんね。芸能人みたいな感じで、なんか新鮮だ。
「じゃあみんなで行こうか」
マリーにも声を掛けて外に出た。
冒険者ギルドに入ると案の定冒険者達に絡まれた。
「おう、こんなガキがギルドに何のようだ。ここは託児所じゃねえぞ」
以前もこんなセリフ聞いたな。もしかして嫌がらせをする時のセリフを決めているんだろうか。
しかも絡んで来たのは同じ人だ。貴方も武闘大会で優勝して知名度が上がったんだから、そういう事は止めた方がいいよ。
そんな彼に対して、マルテが一歩前に出て対応する。
「文句があるなら今から勝負しようか?」
「な、なんだと俺を知らないようだな。俺は先日の大会で優勝したその名も」
名乗りの途中でマルテが右手を頭上に掲げ、魔法の準備をする。
それを見た周りの冒険者達が、1人を残して俺達から一斉に離れた。
「おい、お前は控室に居たから見てないんだ。その女は“炎獣”だぞ。ギルドが壊されるから早く謝れ」
遠のいた冒険者から声が飛ぶ。なんかこの展開も見たな。前回は“暴風”に怯えてたっけ。
もう放って置こう。冒険者達の相手はマルテに任せて、ソゾンさんを促し受付に向かう。
「お騒がせしてすみません、魔石が欲しいんですがどうしたらいいですか?」
「魔石の販売は左手の扉を抜けた所にある販売部をご利用下さい」
騒動にも動揺していない様子の受付嬢さんが笑顔で案内してくれた。プロですね。
ありがとうと告げて販売部へ向かう。マルテ、トラブルが解決出来たらこっちに来てね。
「態々受付に聞かんでも儂が売っている所を知っておるんじゃが」
「あの空間に居た人達に俺達が来た目的を伝えた方がいいかと思って」
ああしておけば喧嘩を売りに来たんじゃないってわかるよね。
販売部には魔石の他に魔物の素材も売られていた。
「こっちはロンリーウルフの牙、これは突撃兎の角、それはアイアンゲッコの鱗だ。このミツメフクロウの羽なんかは久し振りに入荷されたんだぞ」
「いや、儂らは魔石を買いに来たんじゃ」
積極的に素材を売ろうとする売店のお兄さんをソゾンさんが止めに入る。
「偶には魔石以外も買ってくれよ」
「近頃は魔物素材が必要な仕事が無いんじゃ。今日は子供が練習に使う用の安価な魔石がいくつか欲しいんじゃが」
「それなら昨日入った魔石がいくつかあったな。これはリザードの魔石、こっちはゴブリンの魔石、これは」
次々と魔石を取り出してくる。見た目は綺麗だが小粒な物ばかり。値段も手軽な物ばかりだ。
「魔物の種族によって魔石の違いがあるんですか?」
「ドワーフや魚人などで得意な魔法の属性が違うじゃろ。魔物にも得意な魔法があるんじゃ。そのため魔法と魔石に相性が生まれるんじゃが、まあ安価な魔石での差は微々たるもんじゃ。気にせんでもええぞ」
そうなんだ。なら適当に。
「ええっと、リザードの魔石を3つ下さい」
上着のポケットから財布を取り出し、必要な硬貨をお兄さんに手渡す。
船外機を売ったお金がまだ残ってて良かった。
素材の説明で結構時間を潰したのに、マルテはまだこっちに来ない。何をやっているのかな。
販売部から受付の所へ戻ると、マルテを取り囲んで何やら騒がしい。まだトラブっているんだろうか。
「マルテさんが了解してくれるまで何度でも言います。俺達を貴女の弟子にして下さい」
トラブルの内容が変わっているじゃないか。




