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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第13話 俺は魔剣を間近で眺める

 国王の言葉を以って、武闘大会が無事に終わった。

 大きなトラブルも無く終了し、大会は成功だったと言っていいだろう。


 徐々に帰っていく観客の波と離れて、俺達は控室に向かった。


 先頭で入っていった姉さんに続いて控室へ足を踏み入れると、誰かにギュッと抱きしめられた。


「なんで母さんじゃなくてアンナを応援したのよ。そのせいで負けちゃったじゃない」


「か、母さん。苦しい。ゆ、ゆるして」


 力強く母さんに抱きしめられたことで顔が母さんに密着して息が出来ない。死んじゃう、死んじゃう。


「リリー様、悔しいのは分かりますがゲオルグ様が窒息してしまいますよ。我が子を殺す気ですか」


 アンナさんの指摘によってようやく母さんの拘束が解かれた。はああ、ふうう。空気が上手い。


「ごめんね、ゲオルグ。でもアンナを応援するからいけないのよ」


「ごめんなさい。アンナさんへの応援が少なかったから、つい。別に母さんが負けた方が良いって思ってた訳じゃないよ」


 ここは謝るしかない。

 母さんの嫉妬が酷いとは思うけど、そこを突いたらもっと状況は悪化する。さっさと謝って許してもらおう。


「分かった、許すわ。でも次は母さんを応援してね」


 そう言って母さんはもう一度俺に抱きついた。今度は後ろから俺を抱き上げる。呼吸は問題ないんだけど恥ずかしいから止めて欲しい。


 俺と一緒に入室した姉さんとマリーは、マルテと話し込んでいる。マルテの魔法が凄かったとか、業火を止められるとは思わなかったとか、模擬試合の出来事を熱く話し合っている。俺もそっちに行きたいんだが。


 じたばたして抜け出そうとするが全くほどけない。アンナさんに救いの目を向けるが、首を横に振られてしまった。


「そろそろ子供扱いを止めないと、ゲオルグ様に嫌われるぞ。男の子は早めに自立したがるものだからな」


 おお、なんとジークさんが俺の味方になってくれた。ジークさんも男だし、息子が2人いるから俺の気持ちを分かってくれるんだな。


「これは私を応援しなかった罰だからいいの。それよりもジーク、久しぶりに魔吸を使った感想はどうかな。もう倒れそうなんじゃない?」


 え、あの剣って倒れそうになるほど危険な物なのか。


「あと1時間くらいなら使用しても大丈夫だな。平和になって俺の体力が落ちたのもあるけど、あの剣もなまくらになったんじゃないか?」


 ジークさんは部屋の隅にある机の上に置かれた無骨な剣を見る。あれが魔吸なのか。なんとなくだが禍々しい雰囲気を感じる。なんか独りでに動き出しそうな。


「誰がなまくらじゃ。ジークの扱い方が悪いだけじゃ」


「うわ、剣が喋った」


 動き出すどころか、喋るなんて。この世界にはそんな生物も居るのか。


「誰が剣じゃ。儂じゃ、鍛冶屋のソゾンじゃ」


 机の向こうからソゾンさんがひょっこりと顔だけ出して抗議している。ああ、びっくりした。


「驚かさないでください。机に隠れて何やってるんですか」


「机の下に工具を落としたから拾っていただけじゃ。そもそも剣が喋り出すって思う方が変じゃろ」


 へ、変とまで言いますか。


「なんとなく、その剣から嫌な雰囲気を感じたんで、動き出してもおかしくないなって思ったんです。そうしたら丁度声が聞こえたから。変なのはその剣でしょ」


「お、この剣が気になるか。でもこの剣は子供が触っていい剣じゃない。こいつは魔剣じゃ。握った者の魔力を吸い取る魔剣。子供が持ったらあっという間に魔力が枯渇してぶっ倒れるぞ」


「どうしてそんな剣が存在するんですか?」


「この剣は儂の祖父が若い頃に遊びで作った剣じゃ。作ってもらった貴族は特に使用するつもりも手放すつもりも無かったそうじゃが、没落したときに没収されたらしい。それ以来各地を転々としジークの手に渡ったんじゃな。儂とジークが知り合ったきっかけがこの剣じゃ」


「この剣を使って名を上げていた頃に、危険じゃから使うのを止めろといきなり言ってきてな。俺だって剣を頼りにそれまで戦って来たから今更手放すわけには行かないと、大揉めしたよな」


 ソゾンさんとジークさんが懐かしそうに昔語りを始めてしまった。ちょっと今は、その話は興味ないかな。


「使用者の魔力を吸わないと、その剣が魔法を吸収したり、剣身に魔法を纏わせることは出来ないんですか?」


 思い出を断ち切るように俺が割り込んで質問する。


「ま、そういうことじゃな。儂は危ないから壊したいんじゃがな」


 そう言ってソゾンさんが剣を金属製の光沢がある箱にしまおうとした時。


「ちょっと貸して」


 姉さんが魔吸を掠め取ってしまった。


「おお、魔力を吸われてるの感じるよ」


「こらアリー。危ないと言っておるじゃろうが」


「平気平気、私はジークより魔力量多いから」


「そういう話ではない」


 姉さんとソゾンさんが返す返さないの押し問答をしている。アンナさんもソゾンさんの味方として加わり、姉さんから剣を取り上げようと動いている。


「ゲオルグ、はい」


 ソゾンさんとアンナさんの追跡を掻い潜り、母さんに抱かれた俺に近づいてきた姉さんは俺に剣を差し出す。

 はい、と言われてつい手に持ってしまった。


「ゲオルグ、直ぐに剣を手放すんじゃ」


 ソゾンさんがそう言いながら近づいてくるが、他の剣との違いが分からない。


「ねえ、魔力を吸われるってどんな感じかな。全然分からないんだけど」


 俺の言葉に皆首を傾げている。

 あら?

 聞いてはいけないことでしたか?

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