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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第10話 俺は2人の試合を観戦する

 マルテが作った炎壁に、姉さんの業火が襲い掛かる。


 正面衝突した2つの魔法は轟音と強烈な閃光を発する。

 音は会場全体を揺るがす振動となって広がり、炎壁の閃光を防いだサングラスを使用していても眼が眩む。

 轟音の影響が残る耳に、実況解説の声が聞こえた。


「観客席から散発的に放たれた魔法を処理したと思ったら、更に大きな火球が出現しました。しかしマルテさんは冷静に炎の壁を出現させて防御、見事に巨大火球を防ぎましたね」


「さすがは“炎獣”のマルテ。彼女は昔から火魔法が得意な女性でした。多少歳を取り、ふくよかな体形になっても腕は衰えてませんね」


「そこ、煩いよ」


 実況席に向けてマルテが火球を放り込む。

 さほどの大きさも速度もない火球、恐らく威嚇用だろう。これ以上父さんが余計な事を言わないように。


 その火球は父さんの土魔法によって難無く防がれた。


「ははは、危ない所でした。みなさんも“炎獣”にちょっかいを出すと反撃されますよ。あ、因みにですが、先程マルテが火球を防いだ壁の魔法。あれが先日王都中に光を届けた魔法です。うちの息子にせがまれて狭い庭で使ってしまったようです。マルテと息子に代わり、王都民の皆様をお騒がせした事に対して謝罪いたします」


 父さんが解説席から立ち上がり、皆に見えるよう頭を下げる。下の競技場ではマルテも頭を下げ、俺達も立ち上がってそれに倣う。


「あの光は凄く話題になっていましたね。先程の攻防もこのサングラスが無ければ実況出来ませんでした」


 クルトさんは普段の眼鏡の上にサングラスを装着していた。サングラスが視界の邪魔にならなかったようで良かったよ。


 このサングラスはソゾンさんと姉さんに急遽作ってもらった物だが役に立った。

 会場中に無料配布するから余分にお金がかかるフレームは無し、手で持って顔に添える物だ。終わったら持って帰らずに、入口で返却してくれると助かります。

 姉さんは自分で使用するサングラスにフレームを付けていた。最初から両手を自由にして魔法で攻撃するつもりだったのかな。


「さて、マルテさんの実力は十分すぎるほどに分かりましたね。ではジークフリードさんの力はどうでしょうか。そろそろ競技場に居る兵士や魔導師も痺れを切らしている様子。いつでも始めてもらいましょう」


 観客席から競技場に向かって歓声が送られる。それと一緒にところどころから魔法が飛んで行くが、マルテは問題なく捌いてる。


「女は大きな魔法使って魔力は残り少ない。そして観客の対応だけで手いっぱいのはずだ。今が勝機。いつまでも剣術師範にデカい顔をさせるな、いくぞ」


 兵士の一人が仲間全体に激を飛ばし、士気を上げる。その声に導かれ、全員が行動を開始した。

 先ずは全員で火魔法を使用し、ジークさんに向けて発射。

 その後魔導師達を残し、兵士全員がジークさんの方へ駆け出す。

 魔導師はもう一度火魔法を放ち、走る兵士の頭上を飛び越えジークさんを攻撃する。


「マルテ、土をくれ」


「あいよ」


 第一陣の魔法を見やり、ジークさんがマルテに注文した。

 それに答えたマルテがジークさん目掛けて土の塊を発射。

 ジークさんはその土塊を自らの剣で受け、飛来する火球への準備をする。


「でましたね。あれがジークの持つ魔剣、魔吸です。敵の魔法を自分の力にする特殊な魔剣ですよ」


「なるほど、あれが異名の元になった魔吸ですか。ジークさんの持っていた剣の剣身が土塊を纏い、巨大化していってますね。身長の3倍はあると思います。あれで迫る兵士を薙ぎ払うんでしょうか」


「いや、ジークは剣術馬鹿ですからね。もう少し楽しむでしょう」


 ジークさんは迫ってきた第一陣の火球を、巨大な剣で防御した。

 剣に纏う土が火魔法の衝突によってボロボロと剥がれ落ちる。

 露わになった剣身が飢えを凌ぐように、第二陣の火魔法を吸収する。


「魔導師達の魔法が吸収されていってますね。それが出来るなら、最初に土を纏う必要はあったんでしょうか?」


「あの剣も万能では無いんです。火魔法を吸収するにはある条件が必要なんです。それは土魔法で剣を覆うこと。見ていて下さい、敵の火魔法によって削られた土の部分を」


 父さんの言葉に皆がジークさんの剣へ視線を向ける。炎を吸収した剣身から土が生まれ、剣を覆い隠していく。

 そのころには兵士達がジークさんに肉薄し、斬り合いが始まった。


 巨大な剣を見事に操り、兵士達の攻撃を防ぐ。

 ジークさんからは攻撃せず、兵士達に攻撃させて指導しているようにも見える。

 兵士達は数を活かして交互に攻め立て、ジークさんを休ませない。


「マルテ、補充」


「ほいさ」


 兵士と斬り合い土塊が削れてくると、マルテにもう一度魔法を要求する。

 マルテは補充と言われただけで意味を察し、小さな火球をジークさんに向けて発射。

 観客席からの援護は相変わらずマルテに向かっていた。


「させるか」


 1人の兵士が火球の射線上に割り込み、自らの体で魔法を受け止め妨害する。


 それと同時に他の兵士達がぱっと移動し、後方の魔導師への道を開けた。


 ジークさんを視界に捕らえた魔導師達は、今度は吸収されないようにと土魔法を発動。


 移動した兵士たちはそのままジークさんとマルテの間に陣取り、マルテが援護出来ないよう行動する。


「いい連携ですね。平和な時代になっても、兵士の錬度は衰えていないようです」


 クルトさんが兵士の連携を褒めたが、父さんは反対の立場をとる。


「そうですね。しかし、それだけでは勝てない」


 土魔法が届く前にジークさんが兵士に突撃し、反対側からマルテも兵士に突撃する。

 2人の連携を絶ったつもりの兵士だが、視点を変えると2人に挟み撃ちされる兵士達。

 兵士達と2人の乱戦となり、魔導師も観客達も援護できない。兵士の動きが自らの生命線を絶つことになってしまった。


 2人は容易に兵士達を各個撃破した。

 その後ジークさんが走り出し、マルテが魔導師に向かって業火を放つ準備をする。

 それを見た魔導師達がギブアップを宣告し、模擬試合1試合目はあっけない幕切れとなった。

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