表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
110/907

第6話 俺は鍛冶屋で剣帯を注文する

 鍛冶屋の奥からソゾンさんと一緒に出て来た姉さんは、なぜか胸を張って偉そうにしている。

 どうしてそんな態度なんだろう。


「ゲオルグ、魔法使ったでしょ。使ってみてどうだった?」


 ははぁん、褒められると思ってるな。残念ながら褒められません。

 でもどうしてそんなに自信満々に使ったと断定できるんだろう。


「うむ。あれは凄い魔法じゃった。眩い光がここまで届いておったぞ。恐らく王都中に届いたじゃろうな」


 げ。中心地に居て全く分からなかったけど、そんなに凄い威力なのか。


「姉さん、あれはやり過ぎだよ。魔法を使った後に近所の人から苦情が出て、対応したルトガーさんに怒られたんだから」


 あ、しゅんっとなってしまった。明らかに肩を落としてがっかりしてるな。

 でもいいんだ。偶には叱らないとまた調子に乗って、とんでもないことを仕出かすと思うから。


「いや、儂は素晴らしいと思うぞ。あの大きさの宝石にあれだけの魔法を組み込めるようにする技術が素晴らしいんじゃ」


 なんか今日は珍しくソゾンさんが姉さんを褒めている。

 姉さんに弱みでも握られてるんだろうか。なんとなく不自然。


「私がちょっと前に叱ったのよ。アリーちゃんの暴走を止めず、一緒になって調子に乗ってたんだから。後で謝罪させに行かせるから、許してね」


 俺に向かって謝るヤーナさんを見て、ソゾンさんがバツの悪そうな表情をしている。

 そうか、姉さんがやり過ぎた原因の一つは師匠に褒められたからだな。2人とも何やってんだよ。


「姉さん、草木魔法の方はあれでいいんだけど、火魔法の方は変えてほしい。あの2つの魔法は凄すぎて俺の手に余る。もっと気軽に使える魔法が良い」


 俺の凄いと言う言葉に、ぴくっと反応する姉さん。うんうん、あの魔法は凄いよ。でも自重してね。


「わかった、ゲオルグが使いやすい魔法が1番だよね。どうするかちょっと考えるね」


 姉さんの良い所は素直な所だ。次は魔法を込める前に実演してもらおう。

 あ、そうだ。ソゾンさんも居るからちょうどいい。


「前にジークさんから貰った剣でずっと素振りをしていたんですけど、この魔導具の剣で素振りをすると違和感を感じたんです。ジークさんが言うには剣身が伸びたことで重心が剣先に移動したからだそうです。手元の方に重心を移動させる事って出来ますか?」


「おう、よく気付いたな。柄や鍔に少し装飾を施すことで重しに出来るぞ。前の剣は持って来ているなら、それに合わせて調節してやるぞ」


 そっちは持って来てないや。


「じゃあ取りに行って来るんで、その間に剣帯を作っておいてもらえませんか?」


「ええぞ、どんな素材でどんな形にするか選んでくれ」


 ソゾンさんの承諾を聞いて、ヤーナさんが受付の下から紙の束を取り出した。

 ある紙には革製品に使う素材とその金額が羅列され、別の紙には剣帯の完成形を絵で表している。剣帯だけの絵と各種族が装備した場合の絵を並べているのが凝っている。

 これは所謂カタログだな。ページを捲っていくと素材の特徴や色までしっかりと記載されている。


 カタログを見ながら、ヤーナさんが色々説明してくれる。

 安いけど傷が良く目立つ革、傷つきにくいけど高価で手入れが大変な革。ヴルツェルで飼っているような動物の革もあれば、魔物の革も取り扱うようだ。ただし、一部の革は在庫を置いていないから直ぐには作れないと言われた。


「これ、凄いですね。図書館にある図鑑より革の事は詳しく書いてありそうです」


 カタログを褒めると、ヤーナさんがありがとうと言ってきた。

 不意のお礼に戸惑う俺を見て、ソゾンさんが理由を教えてくれた。


「あの紙束はヤーナがコツコツ書いたんじゃ。あれを作る事の大変さにゲオルグが気付いたから嬉しかったんじゃろ」


 それは凄い。字も読みやすくて綺麗だけど、挿絵が凄く上手だ。


「ヤーナさんは画家になれそうですね」


「ふふ、ありがとう。旦那が鍛冶仕事を出来なくなったら、私が絵を売って稼ごうかしら」


「儂はまだまだ元気じゃ。弟子が一人前になるまでは仕事を止めんぞ」


 確かにソゾンさんは元気だ。当分倒れそうにない。出来る限り姉さんを育てて欲しいけど、でも弟子の手綱はしっかり握っておいてもらわないとね。


「アリーだけじゃない。ゲオルグもマリーも、もう儂の弟子じゃからな。しっかりやれよ」


 はい、がんばります。

 マリーと声を揃えて師匠に答えると、なんだか恥ずかしそうにしていた。




 ヤーナさんのカタログを元に剣帯を注文した俺は、マルテと一緒に剣を取りに帰ることになった。

 マリーは革製品の加工を見たいと鍛冶屋に残っている。俺も興味があったけど仕方ない。また別の機会に見せてもらおう。


 家に着くと、馬車が1台止まっていた。家に馬車で客が来るなんて珍しい。

 まあ俺には関係ないか。さっさと剣を持って鍛冶屋に戻ろう。


「あ、坊ちゃま。良い所に戻ってきました。王家と冒険者ギルドから客人がいらっしゃってます。先ほどの閃光を放った魔法について聞きたいそうです。魔法を使ったものが不在だからと帰ってもらおうとしましたが、戻って来るまで待つと仰られて、仕方なく応接室に通してます。どういたしましょう」


 ルトガーさんが珍しく慌てている。

 え、俺が対応すんの?

 どういたしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ