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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第1章 俺は異世界で発育する
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第4話 俺は街を眺めて感動する

 寒い時期を経て過ごしやすい気候になり、俺は1つ歳をとった。


 1歳の誕生日、その日は今まで着たことがない服を身に付けた。いつもの服より肌触りが良く、派手な仕立てだった。高価そうな服をありがとう。


 ご飯も美味しかった。敢えて薄味にしていたんだろうが、今までの離乳食は美味しくなかった。あれはオートミールかな、粥っぽいのが美味しくないし、野菜をすり潰したのも美味しくない。たまに出てくる甘い果物だけが楽しみだった。その日は果物が沢山出てきて満足した。


 色んな人が来た。

 みんな楽しそうだった。

 何を言っているのかまだ分からないけど、多分おめでとうって言ってくれてるんだと思う。


 来てくれた人には満面の笑みで返した。

 来年までには言葉を学習して、きちんとお礼を言えるようになりたい。


 あーとかうーとか、言葉にならない声しか出せないが、1歳を迎えて身体はどんどん成長している。


 暖かくなってきた頃から掴まり立ちが出来るようになり、最近は壁をつたって歩く練習をしている。バランスが難しくてよく転ぶんだけど、怪我はすぐ治るからレッツトライ。


 マリーの方はちょっと遅いかな。ようやく掴まり立ちが安定してきた。でもまだ、つたい歩きはやらない。練習する俺の様子をじっと見ている。マリーは慎重な性格なのかも知れない。


 喋れるようになるのはいつ頃なんだろう。

 今は1つの音は出せるんだけど口が回らないんだよな。だからブーブーとかマンマとか、そういう言葉を最初に喋るんだろうか。


 あ、姉さんいらっしゃい。

 部屋に入ってきて早々、マルテと何か喋り出した。凄く楽しそうな顔をしてるけど、何か企んでる?マルテが関わるならそんなに危険がないとは思うけど。


 話終わったマルテが俺とマリーを抱き上げた。

 え?何?俺は今日は歩く練習をしようと思ってたんだけど。

 それにしてもマルテは怪力だよね。子供2人を軽々持ち上げて。


 部屋を出てどこに行くの?外?裏庭?

 良い天気だね。今朝まで雨だった。数日前の俺の誕生日もあいにく雨。最近は降ったり止んだりしているから裏庭の地面もぬかるんでいる。マルテに抱えられている俺たちには関係ないけどね。


 あれ?姉さん背が伸びた?マルテの胸の位置に顔がある俺と、真っ直ぐ目が合ってる。普段はマルテが屈んで目線を合わせているのに。


 もしかして浮いてる?空を飛べるの?すごいね、そんな魔法も使えるんだ。


 キャッキャと騒ぐ俺を見て、空中で宙返りしたりクルクル横回転したりしながら、縦横無尽に飛び回っている。おお、自由自在だ。いいなぁ、俺も飛びたい。


 飛び回る姉さんを捕まえようとマリーが手を伸ばしている。俺も俺も。届け。


 目一杯伸ばした手を姉さんに掴まれた。え?思っていたのと違う。


 姉さんの反対側の手は、マリーが伸ばした手を捕らえている。マリーは喜んでいるみたいだけど。


 俺たちの手を握ったままジッとしてる姉さん。どうしたんだろう。姉さんを注視する。


 姉さんを見ていると、その後ろにマルテが現れた。ちょっとマルテ、姉さんが動かなくなったんだけど?


 え?マルテ?


 えっと、俺たちを抱えていたマルテが、目の前の姉さんの向こう側にいて、手を振って立っている。ということは。下を見る。


 わあああ、俺たち浮いてるうう。姉さん手を離さないでね。落ちても死なないと思うけど、泥だらけはキツイ。マリーは理解してないのか、マルテの顔を見てはしゃいでいる。


 でも、手を引っ張られている感覚は無いんだよな。俺にも姉さんの魔法が作用して浮いているってことなんだろうか。


 姉さんはさっきまで飛び回っていた時の笑顔とは違って、いつになく真剣な表情をして手元を見ている。大丈夫?無理しないでマルテに返してください。


 意を決したのか姉さんが上を向く。もしかして上昇しようとしてる?


 マルテがちょっとずつ遠くなる。やっぱり上昇してる。どこへ行くんだ。


 裏庭は家の壁と塀によって囲われている。マルテの背を超える高さの塀だから、普段は塀の向こうを見えないけど、今はよく見える。隣の家、向こうの家、みんな綺麗な建物だ。この辺りは住宅街なんだろうか、家ばっかりだね。


 最初は驚いたけど少しずつ周りを見る余裕が出て来た。反対にマリーは泣き顔だ。まあ普通は怖いよね。空いている方の手で頭を撫でてあげる。大丈夫だから暴れないでね。


 どこまで行くんだろう。姉さんは何をしたいんだろうか。いつも通り魔法を見せるんじゃ無いのかな。


 家を超える地点まで上昇したところで、姉さんは動きを変え、俺たちを屋根の平らな部分に座らせた。


 ホッとして周りを見る。おお、良い景色だ。


 遠くまで街が広がっている。街を横切るように川が流れている。あそこは広場かな。常に煙突から煙を出している家もある。

 大きなお城がいつもよりしっかりと見える。お城の反対側にも大きな建物が2つ。あっち側には窓がないから普段は見えないんだよね。


 部屋の中では聞こえない音も聞こえる。人々の喧騒。動物の鳴き声。金属同士がぶつかる音。木々が揺れて葉っぱが擦れる音も新鮮だ。


 そして何よりも、街の上には大きな虹。


 これを見せたかったんだろうか。怖がっていたマリーも喜んでいる。姉さんも自慢げだ。


 これが今、俺が住んでいる街か。うん、気に入った。

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