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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第1話 俺は二振の剣を手に入れる

 王国歴441年5月5日。

 ついに俺は魔法が使えないまま6歳の誕生日を迎えた。

 翌年の3月には魔力検査が控えている。もう1年も時間が無い。


 俺も何もできないまま魔力検査に行くつもりは無い。

 恐らく魔力の測定試験では何も出来ないだろう。しかし技能試験では何かが出来るはずだ。


 意志を持って取り組めば無理難題を解決するのも不可能では無いと、姉さんが示してくれた。


 今、俺の手には二振の剣がある。


 姉さんが長い時間をかけて作り上げた剣だ。


 誕生日プレゼントだと日付が変わった直後に渡された。

 まさに直後の5日0時過ぎ。

 その時自室で眠っていた俺は突然やって来た姉さんに叩き起こされ、ハイテンションで誕生日を祝われ剣を渡された。

 今すぐ使ってみてくれと言う姉さんを、深夜でみんな眠っているからと何とか抑えて帰ってもらった。


 サンタみたいに寝ている間を見計らって枕元に置いてくれればよかったのに。

 そう思いながら俺はすぐさま眠りについた。


 早朝目が覚め机の上に置かれている剣を見て、俺にもようやく感動が押し寄せてきた。


 深夜、寝起きでぼーっとしている中で何とか聞き取れた姉さんの言葉によると、どうやら1か月ほど前には完成していたらしい。

 よく誕生日まで黙って我慢していたものだ。それでも朝までは待てず、深夜に突撃することとなったそうだ。

 気持ちはよく分かるが朝まで待って欲しかったな。


 ベットから降りて剣を手に取る。

 短剣と長剣の二振り。鞘ごと反り返っている。鞘は質素で装飾が無いが、握りやすく滑りにくい。鍔にも柄にも装飾はほとんどない。わざと装飾を作らなかったんだろうか、後で聞いてみよう。


 そして一目見てもどこに宝石が仕込まれているのか分からない。これなら魔導具とは分からないだろう。注文通りだ。


 短剣の方を鞘から抜き放ち構えてみる。こちらも注文通り、軽い剣だ。グリップの感じもいい。

 長剣の方も同様だった。うん、剣の出来に文句は無い。あとはどうやって魔法を出すのか。宝石がどこにあるのか俺にも分からないからな。

 よし、剣を持って姉さんに会いに行くか。




 部屋を出て家人に聞いたところ、姉さんはまだ起きていないようだ。

 俺の事は無理矢理起こしてきたのにまだ寝ているのか。


 仕方ない、庭で素振りでもしていよう。


 短剣を置いて長剣を抜く。鞘を短剣の横に並べ、長剣の素振りをする。

 いつもやっている素振りだが違和感を感じる。なんだろう、何となく振りにくい。


「剣が長くなって重心の位置が剣先側に動いたんだ。それを意識していないから力の使い方が変わって、違和感を覚えるんだ」


 俺が素振りをしながら首を捻っているとジークさんが説明してくれた。


「剣を持っていないのに、よくそんな違いが分かりますね」


「新兵が良くやる失敗だ。少し上達すると新しい剣が欲しくなる。商売っ気が強い店で買うと重心の事なんか教えてくれないからな。買いに行く時は興奮していて些細な違いには気が付かないが、冷静な状態で長く素振りをすると違いに気付く。気付いた時にはもう遅いがな」


「へえ、じゃあ迂闊に武器を交換できませんね」


「そうだな。扱い慣れた武器が一番いい。俺は王国軍の将軍達に武器の規格は統一させた方がいいと何度も言っているんだが話は通らない。各将軍事に商人との繋がりがあって統一は無理なんだとさ。統一した方が訓練も補給も楽になるんだが」


「はあ、いずれ自分の兵士を持った時は規格を統一させますね。それよりもこの剣はどうしたらいいんでしょうか。違和感に慣れるまで降り続けるしかないですか?」


 確か剣道で小学生用と中学生用で竹刀の規格に違いがあったと思うが、まったく覚えていない。覚えていないってことは、その時は竹刀が変わっても違和感を感じずに稽古出来ていたと思う。


「そのまま慣れてもいいが、剣先側に重心があると操作し辛くなると俺は思うぞ。先端側に重心があると振った勢いを止めるのに余計な力が必要になるんだ。まあその分威力は出るけど。メイスって武器は先端に大きな重しがあって、それを振り回した勢いで敵を鎧ごと粉砕する物だしな」


 つまりは遠心力に違いが出るってことか。


「じゃあ鍔から柄頭の間に何か重しになるようなものを付けて、重心を手元側にしたらいいんですね」


「まあそういうことだ。アリー様に相談したら直ぐに調節してくれるだろう」


 そうか、完成して喜んでいた姉さんに注文を付けるのは心苦しいんだけど、相談してみようかな。


「ところでゲオルグ様。新しい剣でちょっと模擬戦をやってみないか?」


「ちょっとなんて嘘ですよね、絶対本気になるから嫌ですよ。それにここでやっているとまた母さんに怒られますよ」


 そうだったって顔をしたジークさんは逃げるようにどこかへ行ってしまった。

 逃げなくてもいいと思うけど、この前どれくらい母さんに怒られたんだろうか。


 そろそろ朝食を食べに姉さんも起きている頃だろう。

 そういえばまだありがとうと伝えてなかったな。特大の感謝を伝えないとね。

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