閑話 アマちゃんの接待
最近マギーがようやく枝豆を強請りに来なくなりました。
ホッとしています。いつの間にか枝豆の出荷が私の仕事みたいになっていましたからね。
「アマちゃん、お餅おかわり。今度は黄粉にして欲しいんだよ」
し、か、し。今の私は食堂のおばちゃんです。
あの日からすっかりずんだ餅の虜になったマキナ。
こっちに来る度にずんだ餅を食べまくるが、まったく体型の変化が無いマキナ。羨ましい。
「はい、黄粉餅です。黄粉が喉に詰まりやすいから気を付けて食べてください」
一緒にずんだ餅を食べるのに飽きた私が味変をしていると、マキナはそっちにも興味を持ちました。
黄粉以外にも餡子、砂糖醤油、磯部巻き。揚げ餅、お雑煮、ぜんざいとまあ色々食べさせましたよ。
結果今のブームは黄粉の様です。
私も座って餅を食べましょう。
美味しそうにかぶりつくマキナのタイミングを見て気になっていたことを聞いてみます。
「この前マギーに相談するって言っていた人材。あの話はどうなったんですか?」
出来ればこっちにも優秀な人材を回してほしいんですけど。
「実はまだ亡くなってないんだよ。こっちの世界の人間はダメになった肉体を機械に交換していくから、思ったより長生きするんだよ」
「脳だけになっても生きている。そういうやつですね」
工業化、機械化し過ぎている世界もどうなんでしょう。
魂の循環という点で考えると、長生きも良い事ばかりではないように思います。
とかなんとか言ってますが、優秀な人材が私の手元に来たらそう簡単に手放しませんよ。
ん、なんですかマキナ。そんなにじっとこっちを見て。何か顔に付いてますかね。
「アマちゃんが食べてるの美味しそう。いい匂いがするんだよ」
「餅の上にピザの材料を乗せて焼いたものですよ。餅とチーズは良く合うんです。和の餅に飽きたからイタリアンですね」
「アマちゃんがそんな料理を出来るなんて知らなかったんだよ。一口ちょうだい」
「どうぞどうぞ」
ふふふ、尊敬の眼差しです。
私が調理した物ではない、なんてもはや口に出来ませんね。
「ごちそうさまでした。今度来た時はそのイタリアン餅を食べたいんだよ」
「はいはい、用意しておきますね。その代わり優秀な人材が居たらこちらにもお願いしますね」
「それが言いにくいんだけど、あんまり地球は選ばれないんだよ。私の世界の人々はあまり食に興味が無いみたいで」
なんで地球の魅力が食べ物しかないみたいな言い方をするんでしょうか。
「余所の世界より芸術だって優れていると思いますし、他にはアニメとか漫画とかゲームとか色々楽しい事がありますよ」
「わかった。今度いい人が居たら、そっち方面で提案してみる。でもアマちゃんも私とマギーの世界以外からも勧誘した方がいいんだよ」
そんな人を友達が少ないみたいに。
少ないんじゃなくて、ここはあえて世界を選んでいると言わせていただきたいですね。
これから地球が発展するのに必要な人材を選んでいるんですよ。
「どうせアマちゃん以外の神が他の世界からいっぱい連れてくるから、自分はゴロゴロしてても大丈夫とでも思っているんだよ」
ぐっ。ぜ、ぜんぜん痛くないですよ。そんな分析されても痛くも痒くもないですからね。
「マキナの所には私以外の地球の神が来るんですか?」
「何百年か前に来てから、誰も来なくなったんだよ。アマちゃんが怒ったから」
「ああ、私を出し抜いてマキナの世界から人材を引き抜いた件ですね。いずれ私の管理区域内で工業化を先行させようと思っていたのに、酷い話です」
「同じ世界を管理している神なんだから、お互い仲良くするべきなんだよ」
「はいはい、今後は気を付けますね。じゃあおやつも食べ終わったし、今日は何をしましょうか」
数少ない友人からお説教なんて耐えられません。さっさと話を終わらせましょう。
「じゃあ地球の良さを私の世界の人々に伝えるために、何かプレゼンして欲しいんだよ」
そうきましたか。いいでしょう、その挑戦受けて立ちます。
マギーと違ってマキナにはゲーム以外の良さはあまり伝えて来ませんでしたからね。
よし、今日は上映会にしましょう。
アニメ、邦画、洋画、トレンディドラマ、海外ドラマなんでもありますよ。
数を熟すために映画系にしましょう。まずは派手なドンパチ物の洋画を見せて、日本の国民的なアニメでほのぼのとするのが良いですね。
マキナは恋愛物は好きでしょうか。どのタイミングでホラーを入れるのかも悩みますね。
マキナ、何時まで居ますか?
分かりました、日本時間で日付が変わるまでですね。ということは見れて4本。くうぅ、悩むぅ。
遊んでいるだけに見えますか?
いいえ、これは大事な接待です。これによって地球の未来が変わるんですから。




