王様の耳は□バの耳。
何処からどう見てもいわゆる動物のソレだった。
というより、立って歩いていることすら問題外で ── 正直、誰も勝てる気がしないだろう。
「控えおろ~~~う!!」
「「「 ははーーーーーッ!!」」」
百獣の王よりも、もっと最強な生物が支配する王国。
カバの国。
つまり、王様はカバだった。
── 王様の耳はカバの耳 ──
確かに、それなりに愛嬌はある。
ただ、裸だったのが更に追い討ちをかけるのだ。
その姿は正に畏怖堂々たるものだったのだが、思わず口を塞ぎたくなってしまうぐらいに滑稽でもあった。
自分でいうのも何だが私は黄金の鬣と誰よりも優る屈強な四肢を持つ獅子だというのに、果たしてこれはいったい何のネタなのだと疑問に思う。
真っ裸の王様を見て、正直……
即座に堪えきれなかった笑いを、村外れにある井戸に盛大にぶちこみたくもなるだろう。
「王様の耳は……カバの耳ぃぃぃッ!!」
堪らず叫んだ。
すると…………
異形の者が這いずり出た。
長い黒髪が全身に付き纏う。
ノイズが溢れ、引きずり込まれた先にあったのは、真っ暗闇で。
やがて、何事もなかったかのようにひれ伏す行列は、ゆっくりと端から消え去ってゆくのである。
「うむ。今日も一日、平和であるなぁ……」
カバの耳には何も届かない。
井戸の中に落ちた声などは。