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局地戦闘

「我々はルスデニア解放戦線であるっ!この学校は我々が占拠した。大人しくしていれば危害は加えない!」

おおっ、これはまた懐かしの70年代スタイルのテロリストだな。口上を読み上げるなんてこっちが嬉しくなっちまうぜ。


僕は廊下の窓で校庭でまくし立てているテロリストを見ていた。しかし、学校を占拠するって良いとこを突いたのかどうか微妙だな。これが女子高だったら童貞男子の妄想と片付けられるがうちは生憎共学だ。まぁ、男子高でないだけマシか?


確かに不特定多数の人がいる場所を狙うと、年寄りや幼い子のの開放を口実に当局に時間稼ぎをされてしまう恐れがあるし捕虜としても扱いが面倒だ。しかし、高校生しかいないならその手は使えない。未成年を理由に人質の交換を申し入れてもそもそも高校生がほとんどだから交換する意味がない。人質を総取替えしたなんて事案は聞いたことがないからな。


しかし、やつらの目的は何なんだ?ここから見た限りでもやつらの装備はかなりいい。まるでどっかの国の特殊部隊並みだ。校庭にいる人数はおよそ30名。しかし、占拠したと言うんだから各所の出入り口はそれなりの人数を配置しているはずだ。僕の概算でもこの高校を抑えるには10箇所30人は必要だ。となると最低でも60人。その全員が自動小銃で武装している。全くいつから日本はシリアになったんだ?これ程の人数の動向を掴めていなかったとしたら国家諜報部は大目玉だな。


しかし事態は更に深刻になった。テロリストが演説している最中に大型車両が続々校庭に乗り込んできたのだ。そこから降ろされたものがまた凄いもので、なんと旧ソビエト製の対空車輌シルカだよ!おいおい、それは幾らなんでもやり過ぎだろう。お前らこの国の軍隊と一戦交えるつもりなのか!米国製のB級映画だって戦車は滅多に出さないぞ?精々携帯型のミサイルくらいだ。


いやはやどうやってこの国に持ち込んだんだろう。というかどこから持って来たんだ?確かにシルカは50年以上前の骨董品だが、その装備されている23ミリ機関砲は当たりさえすれば最新の戦闘機だって撃墜できる威力を持っている。まぁ、当たらないが・・。


さすがに重車輌はシルカ2輌だけだったが、その他にも重機関銃やらロケット砲やらが大量に降ろされ各所に配られてゆく。テロリストの人数も増え今や大隊規模だ。やつらがスピーチを始めてから配置が完了するまでおよそ10分。これは完全に事前訓練をしている。というかあいつら絶対テロリストじゃないよ。動きが良過ぎる。兵器の種類に関しては旧ソビエト製で固めているけどそれだけでは断定できない。僕の所属する多国籍企業である『ゴールドゲインコウス』だって母体は米国だけどあれくらいの武器なんか書類一枚で準備できるからな。


しかし、これで驚くのはまだ早かった。テロリストの規模も大概だったが、この学校の対応もまるで漫画だ。なんと窓という窓に対弾シャッターが降ろされ校舎を要塞化してしまったのだ。そして校内放送が流れる。


「全校生徒に告ぐ。当校は謎の武力勢力に囲まれた。各学生は所定の役割に基づきこれに対抗せよ。今回は武器の使用は無制限とする。検討を祈るっ!」

ちょっと待て!いつから日本は学生が戦闘行為をするようになったんだ!しかも僕以外の生徒はそれをすんなり受け入れているよ!本来ならぴーぴー泣き喚いていなきゃ駄目だろう!僕は実は異世界に迷い込んだのか?


しかし、僕が愕然としている間にも他の生徒たちは無駄のない動きで武器を手に取る。

「あなたはどっち?」

廊下にいる生徒たちに小銃を配っていた女子生徒が僕に聞いてくる。どうやら扱える武器の種類を聞いているようだ。


「あっ、それじゃM4カービンを・・。」

僕は彼女が両手に掲げている銃の内、使い慣れているM4カービンを指定した。因みにもうひとつの方は89式自動小銃だった。

彼女は僕にM4と弾薬を押し付けると次の生徒にも同じ質問を繰り返す。中には自分から取りに来るやつもいた。


そして銃を受け取った生徒は防弾シャッターに開いている銃眼から射撃を始めた。それに対して校庭のテロリストも撃ち返して来るが、防弾シャッターは中々高性能らしい。敵の小銃弾はシャツターを貫通できないようだった。


「おい、君っ!君は屋上で3年生たちをバックアップしてくれ!」

「屋上?」

「ああ、今日は運動部系が試合でほとんど出払っている。まったく嫌な時に襲われたぜ!おいっ、そっちの君たちは1階で1年と合流するんだ!やつらを校内に絶対入れるんじゃない!」

ああっ、そうゆうことか。取り敢えず各階の生徒がその階を防衛するけど中間階の2年生は1階と3階の応援に回るんだな。で、人数がい過ぎても邪魔になるんで僕は屋上に回されたのか。しかし、屋上なんて空から攻撃されたらイチコロなんだが・・。いや、テロリストもさすがにヘリは装備していないか。


屋上に行くとそこには佐賀先輩と住吉とヘレニアが既にいた。盛んに校庭のテロリストに向けて発砲している。しかし、そんな生徒たちに向けてシルカの23ミリ機関砲弾が撃ち込まれた。さすがは4連装砲塔だ。銃弾の数が半端ない。しかし、連射は続かなかった。多分いずれ来るであろうこの国の軍用機に備えて銃弾を節約しているのだと思う。


その時、1階で爆発音が数回轟いた。

「くそっ、ロケットランチャーを潰せなかったぜ!」

ひとりの男子生徒が悔しそうに呟く。いやいや、お前本当に高校生か?一体この状況は何なんだ?


僕は身を屈めて佐賀先輩たちに近付く。

「佐賀先輩、ちょっといいですか?」

「おっ、こっちに回されたのか。なんだ?もしかして実戦は初めてか?」

いや、これくらいの修羅場は何度も経験している。でもさすがにこの日本でこんな事になるとは想像していなかっただけだ。


「なんで先輩たちは普通に抗戦しているんです?僕ら高校生ですよね?」

僕は先輩の問い掛けを無視し逆に質問する。

「あんっ?何を言っているんだ?この学校は対テロ戦闘員養成学校だぞ?テロリストに対抗するのは当たり前だろう?どうしたんだ?戦闘にビビってパニクったか?」


いや、僕は至って冷静だよ。しかし、その設定は初耳だ。後付にしてもちょっと無理があるんじゃないか?これじゃまるで僕の方がアホみたいじゃないか。

「すいません、その設定は初耳です。もうちょっと詳しく教えてください。」

僕の申し出に先輩は少し戸惑ったようだ。いや戸惑っているのは僕の方だよ。対テロ戦闘員養成学校?僕がここに来てから1週間経つが、そんな素振りは全然なかったじゃないか!


「はは~ん、君はどこかの組織のエージェントだな?短期で仕事を済ませて消えるつもりだったのか。うんっ、時々、君みたいなのが潜り込むとは聞いている。今回は災難だったな。」

いや、あんただって転校組だろう?全く一体どうなっているんだと僕は心の中で毒突く。しかし、こんな状況だろうと身分をぽろっと明かす訳には行かない。


「その話はまた今度ということで。この状況はどうやったら収拾するんですか?もしかして対テロ戦闘員養成学校の実地試験とかじゃないでしょうね。」

「まさか、彼らは本物のテロリストさ。多分、どこかの組織がこの国を潰しに掛かったんだ。で、一番目障りな俺たちを一番に潰しに来たんだろう。」

う~んっ、ちょっとこのパターンは今までなかったな。平和国家日本もとうとう混乱の渦に飲み込まれたのか。


「と言うことは別の場所でも同じようなことが?」

「多分本部は把握しているだろうけど俺は判らんよ。なんせ一介の戦闘員だからな。まっ、詳しい話は後だ。ぼけっとしていると流れ弾に当たるぞ!」


いや、そんなドジは踏まないよ。僕ってそんなに見た目が素人ぽいのかな?しかし、僕はどう行動すべきか迷う。任務を優先するならここは自分とこの3人の身柄を安全な場所に避難させたい。しかし、こいつらはやるき満々で銃をぶっ放している。僕だけが身を隠しても事が収まった時に、こいつらが死体になっていては任務は失敗だ。となるとこいつらを援護しつつ、この戦闘を乗り切らねばならない。それってちょっと無理過ぎじゃないのか?僕は米国のB級映画のヒーローじゃないんだぜ?


その時、別の場所から僕たちに声が掛かった。

「佐賀っ!校舎の裏から壁を登ってくるやつがいる!そっちで対処してくれ!」

「判った!おいっ、大和だったな。一緒に来い!」

やつに付いて僕は校舎の裏側の縁に向かって走り出す。この時点で僕は腹を括った。まずはテロリストを叩く!情報提供者の分別はその後だ!

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