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生徒会選挙始まる

まずは僕たちは同志を募り、生徒会選挙に立候補した。全役職14名全ての枠にだ。これが僕らの宣戦布告である。勿論これは表の面であり、本当の活動は裏で行なわれる。


選挙期間は土日も含めて1週間。次の月曜日が投票日だ。今回は後期なので3年たちは立候補できない。円城 結衣 (えんじょう ゆい)たちは表面上引退だ。よって学年長も含め全ての役職に新人が立つことになる。勿論、僕らが両立した立候補以外は全員前生徒会のひも付きだ。推薦人も元生徒会役員たちである。


だらと言って立候補した者たちが傀儡という訳ではない。確かに生徒会側に立ってはいるがそれぞれ委員会やクラスで重要なポストを任され見事にやり遂げてきた云わば叩き上げたちだ。決して元生徒会役員たちの威光を振りかざす二世議員たちではない。


まずは生徒会長に立候補した二ノにのみや しずく真城ましろ 優斗ゆうとは2年生ながら来月の文化祭実行委員の主力として活動している。今年はウチの学校としては10年ぶりに飲食系の模擬店舗を出店できるよう生徒会と学校側へ交渉し見事勝ち取ったという実績がある。

これは我々には痛手だ。何といってもEやFランクにも人気が出たのだ。もしかしたら自分たちが置かれている状況も改善してくれるかも知れないという勝手な思い込みが学生たちの間に広まってしまった。


次に副会長に立候補した新堂しんどう 彩華あやか楠木くすのき 右京うきょうはそれぞれ文系と運動系の部活動運営委員会のトップを務めていた。文化祭の件がなければこいつらが会長に立候補していたはずである。それ程の実力者だ。


会計や書記に立候補した者たちもそれぞれ所属するグループで認められている猛者たちである。この学園では実力がなければ上には立てない。家柄やツテでは精々代理や委員にしかなれないのだ。しかし、それも全ては表向きの説明だ。実際には全てを戦闘ヶ原ひたちが牛耳り操られていた。文化祭の件も彼女が段取りしたシナリオだし、新堂と楠木が部活動運営委員会を纏め上げられたのも戦闘ヶ原ひたちが影で指示していたからだ。


この学園で上に立っている者たちは、知らず知らずの内に戦闘ヶ原ひたちに操られている。もしかしたら本人たちは気付いてもいないのかも知れない。全て自分の実力で勝ち取ったと思っているかも知れない。可哀想なマリオネットたち。やがて戦闘ヶ原ひたちの手を離れ世間に飛び出して行った時、初めて己の実力を思い知らされ愕然とすることだろう。


それに対して僕らが推薦した候補者はパッとしない面々だった。ランクだけはCであるがこれと言って校内活動で実績を残している訳ではない。まぁ、敢えて言えば人柄だけは良いメンバーを見繕ったのだ。だがそれでいい、本当の戦いは別のところにある。その戦いに勝利すればおのずと彼らが選挙に勝つ。この学園のシステムがそうなっているのだ。だから彼らは人柄だけをアピールすればいい。実務は別の優秀な者が肩代わりすればいいだけだ。彼らはラノベの表紙である。内容は伴わなくてもよいのだ。


「どうだい?少しは手応えがあるか?」

僕は精力的に駆け回る森下に声を掛ける。彼女はこの3日間、休み時間と放課後全てを使って生徒たちに改革を訴え続けていた。


「反応は・・、ないわ。」

少しやつれた表情で森下は答える。

「そうか、だが勝負は蓋を開けるまで判らないからな。そう、落胆するなよ。」

「そんな楽観的な希望にすがる気はないわ。選挙は事前データでほぼ判ってしまうのよ。」

森下は校内勢力図のようなデータが記載されている紙を前に頭を抱えている。


「ほうっ、運動部系はがっちり楠木に抑えられているな。文系の新堂はそれ程でもないがそれでも過半数は堅いか。二ノ宮と真城は下位ランクの浮動票もがっちり抑えている。こりゃ完璧だな。」

「敵を褒めてどうするのよっ!」

森下は僕の人事のような言い草に気分を害したようだ。


「森下、確かに僕らはデータ上は劣勢だ。だが人の心は移ろうんだよ。選挙日直前にスキャンダルが発覚すればイメージはがた落ちだ。その影響はイメージがいいやつほど大きいのさ。」

「どうゆう事?まさか、怪文書をばら撒くつもり?」

「まさか、相手を誹謗中傷するのは選挙違反だ。バレたら失格だぜ?そんな危ない橋は渡れ無いよ。」

まぁ、もっとも相手が自作自演で僕らに罪を押し付けてこないとは限らんがね。


「なら、どうやって・・。」

「まっ、それは僕に任せてくれ。ちょっと違反ぎりぎりのグレーなことをするから君は知らない方がいいよ。僕のスタンドプレーにしておけば、仮に追求されても陣営までは巻き込めない。」

僕の言葉に森下は肩を落とす。どんな手を使ってでも勝つとは言ったが、実際に汚い手を使うのには抵抗があるのだろう。だから僕だけでやると言われた時は正直ホッとしたはずだ。だがすぐにそんな自分が嫌になったのだろう。


汚い仕事は人任せで自分は安全圏にいる。普通の人ならラッキーと喜ぶところだが森下は違うようだ。でも森下よ、こんなの世間じゃ普通だぜ?もっと強くなれよ、ダイヤモンドや金を手に入れるには泥にまみれて地面を掘らなきゃならないんだ。道端に落ちていた物を拾っても有り難味はない。結局、もっとないかと道端で無為に人生を過ごす事になる。


「まっ、そうゆう事だからそっちは僕に任せろ。君たちは通常の選挙戦を戦えばいい。そして最後に勝つのは僕たちだっ!」

すまんね、僕はチート持ちなんだ。僕に掛かればどんな努力も水の泡になっちまうのさ。


「判ったわ・・、でもあまり無茶はしないでね。戦闘ヶ原ひたちはしたたかよ。甘く見ていると足元をすくわれるわ。」

「ふっ、お前こそ僕を甘く見ているな。僕を誰だと思っているんだ?この世界の創造主、神と同等のチカラを有する大魔王タケルだぜ!」

僕のオチャラケに森下は思わず吹き出す。あれ?そこまでウケましたか?そんなにギャップがある?

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