泉の主VSオオボケドラゴン
ゴボゴボゴボゴボッッッ!!!
「おい…不味いんじゃないかこれは……。」
泉の中で何かが蠢いて居る、物凄い地鳴りのような音と揺れはその為だろう、光線を撃った時の揺れはもう落ち着いて居るはずなのだから。
「ハブ氏にげるぞ。」
「は?歯ブラシ?」
「ちっがーーーう!」
こんな事してるうちについに悲劇が起きた……。
ザバァーーーーーーッ!!!
バシャバシャバシャバシャバシャバシャ!
「わ…わーおぅ……。」
「で…でっけえ水龍だな……。」
飛び出したのは水中に住処を作る蛇のような外見の龍だった。
モンスター界の中でも危険な龍として知られており、ブラック達と違い知性を持っておらず、言葉での意思疎通が図れない。
「この林の主って、水龍セルマだったのか。」
「セルマ?何その伝説的なやつ。」
「お前のそれは多分ゼ○ダ。」
ボアはブラックの頭に自身の羽を振り下ろした。
ビシッと言う音がブラックの頭蓋骨と林中に響き渡った。
確かに未確認生物としてのセルマは伝説かもしれないが、ブラックが言うと確実にボケなのを知っている。
「シュ……。」
セルマは下をチロッと覗かせ、爬虫類の瞳で此方を見つめている。
「目と目が〜♪」
「ブラック!!!」
ブラックは何をされても懲りないのか、こんな状況でも平気で渾身のボケをかます。
お笑いの世界ではボケの新星と呼ばれ、事務所からお誘いが来るレベルのボケっぷりをかましているらしい。
無論、こんな無駄な事してる間に襲って来るのは当然。
「シャァアァァァッ!!」
大口を開け、巨大な毒の牙を覗かせたゼ○ダ…失礼しました、セルマが勢いよく身を乗り出しブラックに噛み付こうと襲いかかってきた!!!
「うわぁあああ!!!」
「避けろ!」
避けた……と言うのにはあまりにも雑で汚い…セルマの顎に背中をぶつけそのぶつかった時の力で転がった…と言うのが正しいのだろう。
全身びしょ濡れのブラックはあっという間に身体中葉っぱと土まみれになった。
「ゔぇ!口に泥!土の味がする!」
「ば…馬鹿野郎……。」
「何だと!」
「動きが鈍い……。」
「はぁあああぁぁぁーーーっ?」
「シャァアァァァッ!」
セルマは泉から全身が殆ど出て来ている、完全に攻撃態勢に入ったようで再度口を開け襲って来た。
「はー、こいつうざいわー。」
よっこいしょと、セルマの居る方角を向いたブラックは何故か一点を見つめ羽を伸ばした。
ボアはまた光線を撃とうかとしたが、エネルギー不足で攻撃出来ない。
ブラックに頼るしかないと思い、泉から下り横目で様子を見た。
(あいつ…飛んだ勢いでセルマの首を落とそうとしてるのか……。)
大方、飛んで勢いをつけ、羽で首を切り落とそうとしてるのだろうと推測した。
昔から戦いではそうやって敵を倒す事が多かったからだ。
「シャァァァァァッ!」
「ハイ、あんこくはどーほ〜(ダミ声)。」
「ギャアアアアアァァァァァ!」
「飛ばないんかーい!」
負けじとブラックは口を開け暗黒波動を光線にして放った。
暗黒波動とは何か…あまり良く分からないが食べ物食べたりして蓄積してる生活エネルギーの気がする。
「勝った。」
どしぃんっ!とセルマが倒れた、完全に瀕死状態になっており、なんか焦げてる。
「早!最初からやれよ。」
「いや、頭地面に埋まってたし、集中力要るから。」
「つっかえねーなー本当。」
ボアはハァっと溜息をついて、林から出ようと歩き出した。
木々はまだ揺れていた、恐らくセルマが倒れた時の風圧故にだと思われる。
「帰るぞ。」
「ハブ君、帰るってどこに?」
「…………。」
そうだ…決まった家なんて持たない、放浪しながら生きる生活をしていた。
一度家を買った際は3日で破壊光線を撃って駄目にして諦めたんだった。
「……コンビニ。」
「あ!忘れてた!!!」
「泥落としてこいよ。」
「へいへい。」
体の泥を落とすように促す、するとザブッと言う音が聞こえた。
ボアが音のする方角を向いた、するとブラックと見慣れない銀色の鱗の龍が…泉の真ん中で水遊びして居る……。
「おい!」
「あ、ハブ君先行ってて〜。」
「…カバン持ってくぞ、て言うかそいつ誰?」
「あ、どうも、ギルンです。」
ギルンと名乗った龍はペコリと頭を軽く下げた、ブラックと違い真面目さがあるように見える。
「敵じゃないのか。」
「はい、セルマの泉に住んでました、もっとも…怖くて逆に逃げることもできずに隠れてたんです。」
銀の龍は全身が鋭い鱗だらけであり、銀色のそれは水飛沫や光でチカチカと反射する美しさがあった。
誠実そうな龍に見える、真面目で何も疑う事がないような澄んだ目をしている。
この泉に住んでいたが、セルマの出現により水中の物陰に身を潜めていたと言う事だろうか。
話を聞いた感覚ではそんな気がする。
「ブラック、早く来いよ。」
「うんわかったー。」
「チッ。」
同年代くらいの龍を見つけて遊び呆けるブラックを尻目に、コンビニを目指して自分の足跡を残してボアは消えて行った。