始まりはコンビニ…
さあさあ、やって参りました異世界。
とうとう始まってしまうぜ!!!
いやぁ〜出番を待って早半年、設定は半熟タマゴみたいな状態。
攻めるところがなさすぎる位にボロボロなある種の難攻不落な城。
今の状況例えるならこんな感じだぜ!!!
でもぉ…書かないと始まらない。
俺の物語は動き出したんだ…。
さぁ……一歩踏み出そうじゃないか……!
「は!!!夢か!!!」
う…頭に鈍い痛みが走る、何やら妙な…妙にリアリティーのある恐ろしい夢を見た様な気がしてならない。
「やっと起きたか。」
「あれ?ハブ君?どうした?」
ハブ…と呼ばれた翠のドラゴンは不愉快そうな顔で荒野に寝転ぶ黒い龍に話し掛けた。
「どうしたもこうしたもねーよ。」
「え?」
「お前……石につまづいて転んで脳震盪起こしてたんだぞ…全く馬鹿だな本当に。」
黒い龍は少し痛む身体をゆっくり起こし「ありゃりゃー。」とちょっと申し訳なさそうな顔をした。
完全に二足で立ち上がると、蝙蝠の様な翼についた泥を払った。
「そうか…俺はコンビニに行こうとして転んで…………異世界転生してしまったんだ!!!」
「いや転生してないだろお前、まーだそのネタ引っ張ってんのかよ、異世界転生流行ってるからって調子乗りすぎ。」
「調子ノリノリ♪ノ×スケおじさぁーーーん!」
「ヤメロ!著作権の侵害だろーが!!!」
「いやぁ…頭打ったわ……いててて。」
「まず病院行ったほうがいいんじゃないの…。」
ハブと呼ばれた龍は少し青ざめて、変なものを見るような目を向けていた。
「ごめん、サ×エさんのくだりはジョークだから、別に頭打ってパーになったとかじゃないから、理性外れてないから。」
はいはい、と流しながら聴いている様子の翠の龍、その視線は黒い龍とは正反対……荒野の端の道沿いにある【ヘブン・イケるん?】と書かれた看板に向けられている。
「でさ、コンビニ、行くの?」
「行く。」
そう、そう言えばそうだ。
そう言いたげな顔をして黒い龍は異世界・モンスターワールドに流通してる大手のコンビニ店【ヘブン・イケるん?】の方角を向いて大地を踏みしめた。
「ブラック…まだ羽に泥がついてるぞ。」
「え?マジィ?」
黒い龍の名はブラック、ブラック・ムーン。
簡単に訳して言えば黒い月である、そんな単純な名前だ。
人間で言う16歳、思春期真っ只中の若いパーリードラゴンである。
マジ卍とか言ってる年頃だ。
そしてそのブラックの仲間の翠の鱗と鋭い目が印象的な龍の名はボア・アシッド。
蛇に似てる故にハブor羽生、コブラ、カナヘビ、胴長、足なし、ミニチュアダックス・ヘビなどと呼ばれブラック・ムーンの愉快な仲間たちから大分自由な愛称で呼ばれている。
…無論本人は名前で呼んで欲しいそうで、ほぼ毎日怒り狂っている。
人間で言う年齢が24歳で、昔は暗殺者の仕事をしていて今もたまに請け負うらしい。
「何か買うのか。」
「新刊出てるから。」
「まーたアイドルかよ。」
「カッコいいべ。」
ブラックは持ち物を入れていた人間モノのリュックから1つの雑誌を取り出した。
表紙には雄の龍が五体写っており、かなり映りがいいように見える。
どうやらこの五体、人間で言う男性アイドルグループらしい。
つまり例えるならば、某ジャニー○グループ○ラシのような存在と言えるだろう。
「下らんな、ただのガキじゃねーか。」
「うっせー!!!」
カチンと来た勢いでボアに向けて口を開けた。
開けた瞬間から高威力の破壊光線が発射されてしまった。
衝動的にやったので手遅れだ。
「て…ゲボッ……テメェ…………!」
「ギャアアアァァァ!お前がガキとか言うからだろ!やめろよやめろよ!!」
破壊光線をまともに受け、傷だらけになった尾がブラックをバシッと跳ね飛ばした。
飛距離約100メートル。
見事に道外れの林の中まで飛んで行ってしまった。
「うわ……飛ばしすぎた……。」
「……連れて帰らねーとヤバイよな……。」
林の中には巨大な怪物が住んでると言う噂があった、狭い林だが何かが潜んでる可能性を完全には否定出来ない。
「……チッ。」
仕方無さそうに呆れた表情を浮かべて林の方角にそう長くもない脚で歩き出した。
その頃林の上空では、カラスの様な怪物がバカーッ、バカーッとしわがれた鳴き声を発して旋回していた……。