街までの道のり3
深夜
街へ続く道のりの外れにある洞窟の中、三体の龍がいた。
二頭は静かに寝息を立て、眠りについている。
一頭は目を閉じて、静かに考えた。
(…あの水竜以上の大型の龍な訳はない、洞窟に入れるとは思えない、入り口はそんなに広くないからな、じゃあ、中型か小型か…いや、そもそも毒とかで死んだのか……?)
考えても考えても、延々と疑問は解けない、それはまるで溶接された知恵の輪を解く様な行為に過ぎない。
(……最近不審なことが増えたな…こんな事例は以前はなかった。)
洞窟の中で起きた怪死だけではない、目を閉じた龍は過去の情景を思い浮かべた。
近いものでは林の中の泉で起きた水竜の出没、それ以前ではブラックと共に抜けた森で小型の鳥龍が大量に木の枝に引っかかり、または大地に落ち死んでいる姿。
それより以前では村の焼失、火山の近い村だったが噴火した痕跡はない。
「…。」
(…ありえないだろ、普通じゃあ…でも何が起きてんだかわかんねぇ、クッソ。)
(……間違いなく何かが起こる、起きている…。)
でもそれがなんなのか、考えるだけ分からなくなる。
もう一頭の龍は、月の光を僅かに浴びながら眠りにつくことにした。
〜翌日〜
「あーーーーー、寝たなぁーーー。」
「あ、ブラックさん寝癖が、羽にシワが付いてますよ。」
「あら本当。」
朝の爽やかな日差しを全身に浴びたブラックは自身の羽のシワを伸ばしていた。
ピシッと伸びた羽は全長2メートル以上はあるように見える。
「で、行くのか。」
「お前話始まる時に“で”って言う癖あるぞ。」
そんな関係ないことを突っ込まれるがブラックは構わず話す。
「街行くって行っても、なにしに行くんよ。」
その瞬間ビタンッとブラックの頬から破裂音が響き渡った、そこに重なるような怒号。
「お前が行きたいって言ったんだよ!!!言ったんだよ!!!!」
「え!ああそうか笑笑。」
あまり反省せずヘラヘラとしてる様子、そこへまたもや尻尾ビンタが飛んでくるが今度はフワリと滑らかにかわした。
「僕は街、探索したいです、外の世界はあまり知らないので。あれだったら街の人や不動産屋に聞いて、新しい住処も探したいところですし。」
そんな2人のピリッとした緊張感に耐えられないのかギルン君は自分の目的を語る。
「おう、それは良い。何とか安全なとこに住めると良いなぁ。」
「あ、オレも物件……。」
「お前は死ぬまで野宿でもしてろこのハゲ!!!」
「ほげええええエェェェェ!?」
ブラックはふとした拍子によく光線を出し、物を壊していた。
ダークな波動なんかで土地を吹っ飛ばし更地にしたことも。
無論、こんな扱いをされるのも仕方ないような気がする。
「うむ…現在位置からして、あと1〜3時間か。」
このように時間に大きな振れ幅があるのは、モンスターの存在があるからだ。
街に行くにはあと少しだがその手前に森がある。
そこには青々とした木が年中茂っており、モンスターの繁殖に大きく影響している…怪物の森と呼ばれていた。
「あの森、怪物の森ですよね。」
「ああ、そうだ。あそこは年中無休で草木が茂るから、モンスターの住処にピッタリなんだ。」
「ぷ、年中無休の森wwwファーーーwww」
不思議な笑い方をするブラックを置いて二体は歩き出した。
洞窟の外も鋭い岩場なので慎重に、森の方を目指し始めた。