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彼がこの世に生まれた経緯について私が知っていることは何もない。だけど、今も彼は私の傍にいます。  作者: 大野 大樹
一章 「お化け屋敷」の住人は「お化け」ではない。
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5.西遠寺の噂(5-3)

「いやぁ、いい人たちでしたねぇ! ウナギも美味しかったし。ウナギは‥いい。実に」

 現金な川田が満足げな様子でしきりに頷いている。

 外はすっかり夜になって、星が出ていた。

「そうかい」

 そっけなく田邊が返事した。先刻から何かを考えている様だ。

「どうしたんですか? 元気がないですよ? 先刻の幼馴染さんのことが心配なんですか? 」

「ん? 」

 田邊が西遠寺家を出てから初めて川田を見る。

「でも、びっくりしました。二人が幼馴染だなんて。西遠寺さんと田邊さん、まるでタイプが違うから。意外な感じがしました。家が近所だったんですか? 」

「昔はな。小学5年の時に引っ越すまで、俺もこの辺りに住んでいたんだ近所に同じような歳の子供がいなかったから、小さいころはよく遊んだな」

 田邊が言った。

 首を前後左右に大きく傾け、そのまま首を回す。考え事をして、ずっと同じ体勢をとっていたため、肩がこったのだ。

「引っ越した後も、付き合いが途絶えなかったって、なんかすごいですね」

「いや、小学校が俺は後一年で卒業だったから、俺だけは、元の学校に残ったんだ。その時、西遠寺の家に下宿させてもらってたんだ」

「へえ~」

「卒業したら、流石に連絡することもなかったんだけど、‥西遠寺も親父さんのとこに‥たしか京都だったかに行ってたらしいし、で、この前の西遠寺の捜査の時に、ホントに久しぶりに会ったんだ」

「へえ、最悪の再会ですね」

「そうだな」

 ‥下宿しているとき、西遠寺の親父さんに会ったことはなかった。単身赴任といっても、一年間一日も帰って来ないってあるんだろうか。

 ‥というか、本当にいるんだろうか? 

 ああ、京都に親父さんを頼って行っていたって言っていたな。

 京都で、何をしていたんだろう?

 実際は、なんてことはない。京都の私立中学校に通っていただけのことだ。

 その時、彰彦は父親と一緒に住んでいたわけではないし、‥会ったのも数えるほどだ。

 彰彦の父親は忙しい。

「その、最悪の再会以前の西遠寺さんの事は、田邊さんは知らないんですね」

「まあ、そうだな」

「つまり、田邊さんは西遠寺さんのことをあまり何も知らないわけですね。どうせなら、西遠寺さんの同級生に聞いてみませんか? 西遠寺さんの潔白を証明するため、西遠寺さんのこと一つでも知っておいた方がよくないですか? 」

 川田が手帳を出してきて真面目な顔をした。

「その間も何も。京都に行ってたんなら、この辺の同級生はわからんだろう」

 田邊は、彰彦がいつ、京都にいたかすらもしらない。

「その判断は、調べてから! ですよ! 」

 表情で、あからさまに難色を示した田邊に、川田がきっぱりと断言した。

「あーー。それも‥。そうだな」

 まだ、何かを考えていた田邊だったが、納得したのだろう。その語尾が強くなった。

 ‥関係ないと決めるのは、調べてからでも、確かに遅くはない。


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