表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/103

8.足りないもの。

二話投稿分の二個目。


 手に入れていると気付くと、嬉しくなる半面、もっともっと欲しくなる。

 足りないものに気が付くようになる。

 そう。

 別に足りないとかおもったこと、今までなかったんだ。

 何も欲しいものなんてなかったし。

 それに、身の回りには何でもあって、自分に何かが足りないなんて思わなかった。

でも、自分にたりないものがあるって気付いた。

 足りないもの。欲しいものが出来た。

 でも、それは家族の愛情でも、性欲とかそういうものではない。それだけは分かる。

 安定が欲しい。そして、絶対的な安心が。

 俺にとっての安心も安定も楠だ。

 楠が欲しくてたまらないのは、魂の枯渇を埋めたいから‥。

 それは、多分、暗闇で灯りを求めるのと同じ行為。

 暗いのは、嫌だから。

 寒いのよりも、嫌だから。

 寒いなら、縮こまって座り込んでいればいい。でも、暗いと何もしようと思えなくなる。

 もう駄目だって思う。

 動けなくなる。

 明るいのは、‥希望だ。

 これがあるから、なんとかやっていけるって思える。

 今自分にとってのそれが楠だから、‥自分は楠を求めて止まない。

 天音っていう変な子供が

「バランス」

 って言っていた。

 多分、今が丁度いいバランスなんだろう。

 だから、これ以上、俺が楠のことを求めて力をつけるといけないんだろう。‥だのに、何かを欲しがるエネルギーって、何よりも強い。

 こんな気持ちに自分がなるなんて、今まで思いもしなかった。



「柊さんは、火だから」

 楠が言った。

 それはそうだろうって納得できた。

 寂しくって、焦がれて、手に入れて、焼き尽くして

 今まで沢山のものを失ってきた

 だけど寂しくて

 人を求めた。



 聴くものを虜にする声と、笑顔。

 それは、さながら魔性の様だ。

 人を夢中にして、虜にする。

「あの声は、後天的なものなんだろう‥」

 楠からそう言われた梛は、その意味を考えて、ゾクッとした。

 自然にではなく、故意に。

 柊は、故意にその力を身に着けた。

 だけど、それは「欲望」ではない。ただ、精神の安定を得るために。

 柊はひたすら、自分の精神の安定を望んでいる。

 楠はそれを与えてくれる。無条件に。

 求めなくても。

 求めたら、楠はどんな顔をするだろう? 

 誘ったら、逃げてしまうだろう。

 楠は柊のあの声が苦手なんだ。

 楠の卦は坎だから、特別耳がいいのかもしれない。

 天音から八卦の話を聞いて、梛は、将来これを形にしようと目下勉強中だった。で、坎の卦の身体部分は耳、その他、腎臓、性器、尻、肛門、子宮(中男で男だのに? そこらは、まだ勉強不足で分からない‥)だということもその時知った。

「‥だけど、今は楠がいるから、柊の兄ちゃんは‥安心だね」

 誰彼構わず誘わなくたって‥。もう、寂しくない。きっと。

 梛が楠に言った。

 ‥そうだと思うし、そうだったらいいと思う。

「そうだ‥ね。たぶん、僕らもそうだ」

 って、楠も言う。

 そして、寂しいのは柊だけではなかった。ここにいる、みんな寂しかった。

 ‥柳さんや桂さんは知らないんだけど。



 柊は、黙って窓の外に映る研究室を見ていた。

 研究室は、前に立つ本社ビルの陰になっているから、夜になって本社ビルの電気が消えると、真っ暗になる。

 夜景とかとは‥無縁の景色になる。

 ぼんやりと、楠がパソコンを操作している姿が闇に浮かぶみたいに映っている。

 ‥楠は「坎」水の卦だ。それも、特に強い。俺の火の卦をゆうに凌駕している位強い。

 ‥多分、楠は「ひと」ではない。

 ‥幽霊でも、「臣霊」(この前伊吹さんに聞いた)でも勿論ない。

 ‥もっと、特別なもの。

 ‥多分、神の。‥水の神だろう。名前は分からないが。

 ‥あの天音って子もきっと‥。

 ‥ひとじゃない。

 ‥あの二人は、いくら何でも強すぎる。

 ‥レアって一言では言い表せない位‥。



 ‥俺にとって楠は特別だから‥。

 ‥俺は、楠が「欲しい」

 ‥まったく、火の力の消された世界はどんな平然な世界なのだろうか。

 ‥それこそ、俺が望む世界だ。



 その気持ちが強くなり、‥平然ではいられなくなる。

二分の二

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ