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彼がこの世に生まれた経緯について私が知っていることは何もない。だけど、今も彼は私の傍にいます。  作者: 大野 大樹
一章 「お化け屋敷」の住人は「お化け」ではない。
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9.お気に入りワード予約って便利ですね

「彰彦兄さんから電話がかかってくるなんて、びっくりだな」

 本当に驚いたらしい声が、電話口から聞こえてきた。

 今まで夏から彰彦に電話をすることがあっても、彰彦から夏に電話をしたことなんてなかったから。

 西遠寺 夏。

 広島県在住の彰彦の従兄妹で、高校生だ。

 例の「お化け屋敷」FAXを送ってきた張本人である。

 親戚の中で、普段から付き合いがあるのは唯一、夏の家だけだ。

 夏休みを使って夏が泊まりに来たこともあった位、親しくしている。

 パソコン部に所属している夏は、普通より多少パソコンに詳しい。

 といって、プログラムを作る方ではない。あくまでもブログやら、ネットサーフィンやら、パソコンを利用する方中心だ。

「僕が集められない情報はないね」

 なんて、わざわざ自分からハードルをあげたりしてるあたりが「若いなあ」なんて思う。

「それで? 」

 夏が、口調を常の落ち着いたものに戻して聞いた。

「彰彦兄さんの事だから、よっぽどの用事がなければ、僕に電話なんてしてこないでしょ? もしかして‥あのFAXの苦情? 」

 彰彦が話す前に、かぶせて来るその口調が、ちょっと砕けたものになる。

 ふふ、と思わず彰彦が笑う。

「それはまたの機会にするね。今日は、インターネットの噂について聞きたいんだ」

 彰彦は、穏やかな口調で今までの話をかいつまんで夏に説明し始めた。

「『Souls gate』と西遠寺の関係ねぇ。で、彰彦兄さんが知りたいのは、関係があるのか、って点? それとも、なんで関係があるのが外部にバレてるかって点? 」

 夏の口調から遊びが消える。

「そりゃ両方。噂がどこまで広がっていて、そしてそのネタ元がどこか、で、その目的がなにか、も知りたい」

 彰彦は、ため息をそっとついて、そう付け加えた。



「夏君は何て? 」

 電話が終わって、客間に戻ってきた彰彦を待ち構える様に、古図が聞いた。

 気になってはいただろうが、電話のある玄関に古図が出てくることはなかった。

 きちんと、彰彦に向かい合うように姿勢を変える。

「夏君も知らなかったみたい。だけど、夏君だったらすぐに調べだしてくれるだろう」

 古図に向き合うようにすわりながら、彰彦が電話の内容を説明し始めた。

 夏の家にも警察は来たこと。

 『Souls gate』のこともその時に聞かれたこと。

 『西遠寺の噂』についても聞かれたらしい。

 勿論、夏君が警察に何かを話すこともなかったが、そのあと気になった夏君は、独自の情報網でこの二点について調べたらしい。

 曰く

「家のパソコンを使ったら、履歴が残って後々まずいことになっても困る」

 ということらしい。

 ‥高校生って感じする。

 スパイ映画じゃないんだから、後々まずいことって、なんだ。


「警察は、何なんでしょうねえ」

 古図が大袈裟にため息をつく。

「夏君は、‥なんとあの例のテレビ番組のこと知ってた。西遠寺の噂の話を警察から聞いてから気になって調べた時、一応って感じで「西遠寺」を「お気に入りワード」にしてビデオ録画してたんだって。「お気に入りワード」をいれておいたら、それに関連する番組を勝手に探して入れてくれるんだって、便利だね。この頃のビデオって」

「で、あったんですね。該当する番組」

「そうらしいんだ。でも、俺の家に来た時の番組じゃないみたいでさ。なんか検証番組って感じに聞こえたな」

「検証番組? 」

「うん。で、俺の家に撮影が来たことについては笑ってた」

「ああ、でもあれが流されてなかったのは、良かったですね‥」

 ‥流されてないと、なんで言い切るんだ。「西遠寺」のワードで引っかからなかっただけかもしれないぞ。‥今気づいたけど。

「本家の方に聞いてみるよ。知らないのは、末端の親戚ばかり‥ってことかもしれないし」

「ええ」

 さっき夏君から、「お化け屋敷」の番組はどうやら流れていないらしいとの追加の報告が電話で知らされた。


 お化け屋敷の住人は勿論ながらお化けではないんだけど、この噂の方は、どうもお化けっぽいな、そんなことを思った彰彦だった。

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