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第37話 説明不足

「慣れる……?」


 キメ顔をしている俺だが、イオには上手く意図が伝わっていないようだ。


「要するに今までの戦い方が魔物と合ってないから、十分な実力があるのに魔物に勝てないわけでしょ? なら新しい戦い方を身に付ければいいのさ!」


「それはそうですけども……どうやって?」


「そりゃもう数をこなすしかないでしょう!」


 そう、かつての俺のように!


「…………」


 自信満々に言い切る俺を、イオは何とも言えない顔で見つめてきた。


 何はともあれ、方針が決まれば後は行動に移すのみ。

 納得が行かなそうな顔をしたイオを連れて一旦管理区域を後にして開拓者組合(ギルド)へと向かう。このまま乱獲をしても良いのだが、どうせなら討伐依頼のある魔物を倒してお金を貰う方がお得だろう。


 そして開拓者組合に着いた俺たちは、リリカさんにそれはもう滅茶苦茶に怒られていた。


「管理区域の魔物を勝手に討伐するなんて何考えてるんですか!?」


「え、ダメなの?」


「ダメですよ! 管理区域は人の手によって魔物の数を調整してるんです! ある種の魔物が絶滅したらどうなるか、わかってますか?」


「その管理区域に住んでる人たちが喜ぶ」


「バカですか? バカなんですねオルフェさん!? あなたたち開拓者(ストレンジャー)が使う魔血(トランサー)が何なのか、お忘れですか? 魔物の血液ですよ! 魔物の!!」


「……あっ」


 ある種の魔物が絶滅したら、その型の魔血を愛用してる人が大変な事になってしまう……!


「気付きましたか? 開拓者というのは魔物と切っても切れない関係なんです。良くも悪くもね。数を減らしても絶滅させてはいけないんですよ」


「なるほど。そんなこと考えもしなかったよ……。ごめんなさい」


 ぺこりと二人で頭を下げる。


「わかれば良いんですよ。幸いな事に倒したのも一匹だけみたいですし、こっちで何とかしておきます。これからは気をつけてくださいね?」


 乱獲する前に開拓者組合へ来て本当に良かった……。

 もし乱獲していたらどうなっていたことやら。蜘蛛の魔物が絶滅でもしたら、アラクネに何を言われるかわかったものじゃない。


「ていうかオルフェさん。アラクネさんから管理区域のこと説明されてなかったんですか?」


「一切! 何の説明もされてないよ」


 一切という言葉を強調して答える。

 この台詞も何度目かわからないが、本当にアラクネは説明が足りない。本当に。


「戦闘に関する事しか本当に教わってないんですね……」


 呆れた様子でリリカさんが呟く。


「戦闘に関する事でも説明足りてなかったけどね」


 アラクネから十分に説明された事は一度たりとてない。大体何かしらか足りていない。


「にしても困った事になったなぁ……」


 あてにしていた管理区域は使えなくなってしまった。危険区域で小さい魔物だけを選んでイオの特訓をするのは俺の実力だと、ちと厳しい。

 俺一人なら大きな魔物から隠れて小さな魔物だけと戦えるが、イオと二人では隠れ切れそうにない。

 さて、どうしたものか。


「何かあったんですか?」


 一人で云々と唸っているとリリカさんがそう尋ねてきた。


 イオとの出会いから魔物との訓練をしなければいけない経緯を説明する。


「……なるほど。確かに揺籠学園出身の開拓者は対魔物に関する経験が欠けているとよく耳にしますね。とはいえ小さな魔物との戦闘訓練は中々難しいですね……。オルフェさんの時みたいに、アラクネさんのようなとびきりの実力者が付いていてくれれば何とかなるんですけど……」


 しかし残念ながらアラクネもミストさんも仕事で不在である。俺を鍛えるために割いていた時間の分、多く働いている様だ。なんだか申し訳ない。

 アラクネとミストさんの仕事後に頼むというのも選択肢としてあるが、これ以上二人の負担になりたくはない。俺はもう一人前の開拓者なのだ。自分でなんとかしなければならない。


「オルフェさんを魔物に見立てて戦う訳にもいかないし……。どうしたものかしら……」


 俺を魔物に見立てる……?


「それだ! それだよリリカさん!」


「えっ?」


「ありがとう! なんとかなりそうだ!」


 やることがわかったなら話は早い。

 さっさと訓練を始めよう!


 そして、俺はイオの手を取り開拓者組合を出たのだった。


「……なんだったのかしら……?」



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