第35話 新たな出会い
彼女の名前はイオと言うらしい。現在16歳。
とある貴族の末娘に産まれ、10歳の頃に追い出されるように揺籠学園へ入学した。
騎士になるべく努力を重ねるも成績は振るわず、何とか卒業することは出来たが、騎士になることは叶わなかった。
実家へ戻ろうとも既に長男が家を継ぎ、彼女の居場所はもうなかったと言う。騎士にもなれなかった出来損ないはこの家にいらない。そう言われたそうだ。
貴族に生まれたが、既に家はないに等しく、騎士にもなれなかった。
何者にもなれなかった彼女がこれから生きていく唯一の道、それが開拓者なのだと、彼女は語った。
話を聞いて、なんだか似ているなと、そう思った。
境遇こそ違えど、生きていく道が開拓者しかないのは俺も同じ事だ。気持ちは痛いほど理解できた。
だが俺と彼女とでは明確な違いがある。
俺はアラクネという師に恵まれたが、彼女には何もない。あるのはただその体一つだけだ。
彼女の実力は明確にはわからないが、2mクラスの魔物から逃げ回るほどだ、恐らく並の開拓者にも大きく劣るだろう。
開拓者になってどれくらいか聞いたところ、まだ一月も経っていないという。いつもは何とか隠れてやり過ごしていたが、今日は見つかってしまったらしい。
今回はなんとか俺が間に合ったから良かったものの、こんなことを繰り返していればいつかは死ぬだろう。
彼女も、それはわかっているけれど、仕事をしなければ結局生きていけないのだから仕方ないと、悲しそうに微笑みながら言われた。
その姿を見て、彼女を何とか助けたいと強く思った。安い同情や下心からではない。
彼女はもう一人の俺なのだ。アラクネに出会うこともなく誰の助けも得られなかった、俺なのだ。
「なぁイオ、これからは俺と一緒に開拓者として働かないか?」
「えっ?」
突然こんなことを言い出すものだから、イオは驚いて固まってしまった。
明らかに説明が足りていない事に気付いたので、慌てて俺の境遇や今までの出来事を話し、お互いが似ている事について語った。
初めは驚きに固まっていたイオだったが、話を聞く内に彼女も共感したのだろう、徐々に表情がほぐれていった。
「まぁこういう訳だからさ、イオのことを何だか放っておけないんだ。ダメかな?」
「ダメじゃないです! むしろこちらからお願いしたいくらいです。これからよろしくお願いします!」
「それは良かった。俺はオルフェ。これからよろしく」
そう言って手を差し出す。
「本当に……本当にありがとうございます……!」
差し出された俺の手を握ると、彼女はそのまま泣き崩れてしまった。
地面にへたり込み泣き続けるイオを何とか宥めてから、俺たちは鹿の縄張りを後にした。
これが生涯、背を預け合って共に戦うことになるイオとの出会いだった。




