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第14話 二尾の狐

 魔血(トランサー)が体を巡り、魔力が満ちるのを感じる。


 二足歩行に別れを告げて、両腕を地につけ四足歩行へ移行する。

 視力、聴覚、嗅覚が強化されて世界が変わる。

 なんて人間の感覚は窮屈なのだろうか。魔物になる度に思う。


 体を軽く動かしながら魔物の感覚を確かめていると、何かが近づいてくる気配を感じた。

 早速お出ましか。

 気配を感じた方向へ体を向けて構える。


 現れたのは1mほどの狐型の魔物である。淀んだ黄色の毛皮に包まれた体に二本の尻尾が付いている。前回の鼠と違い、狐は魔物と普通のでは明確な違いがあるようだ。

 この二本の尻尾に注意しておいて損はないだろう。


 魔物は鋭い瞳でこちらを睨みつけると、二本の尻尾をくの字に曲げてこちらへ向けた。

 魔物との距離は10mほど。この距離で何を仕掛けようというのか。


 二本の尻尾を注視していると、尻尾の毛が逆立ち膨らんだ。

 何かやばい雰囲気を感じて横に飛び退くと、俺がいた場所に細長い針のようなものが大量に突き刺さった。


 こいつ毛を飛ばして来やがった!


 毛は地面に深く突き刺さっている。これを食らったら今の装備ではひとたまりも無い。

 嫌な汗が背中を伝うのを感じた。


 魔物の尻尾が再び逆立つ。

 俺は横へ走り出した。止まっていたら良い的だ。

 走った後に次々と毛が突き刺さっていく。

 3秒ほどで毛の雨は止んだ。

 その隙を突き魔物へ突進するが、魔物も後方へと走り出した。

 ジグザグに走る魔物を最短距離で追うが、木や茂みなどの障害物を上手く使われて距離が埋まらない。


 暫く魔物の背を追っていると、尻尾が再び逆立つ。そのまま魔物は走りながら毛を無茶苦茶に放ってきた。


 仕方なしに横へ跳びのき毛を躱す。また距離が開いてしまった。

 毛を放ち終わった魔物は再び10mほどの距離まで近づくとそこで足を止めた。

 どうやらこの距離が毛の射程らしい。これ以上は決して近づこうとして来ない。こちらが歩を進めると同じだけ魔物も下がる。


 こちらの攻撃方法はどれも近距離ばかり。なんとかこの距離を詰めない限りこちらに勝ち目はない。

 さて、どうしたものか。


 考えている間にも魔物は容赦なく毛を飛ばしてくる。

 決して躱せないスピードではないが、このままジリ貧の状況が続くと魔血が切れて俺の負けだ。


 どうやら覚悟を決めなければならないようだ。


 両手に取り付けられた鉤爪に視線を向ける。

 これなら恐らく毛が直撃したとしても壊れることはないだろう。

 多少の被弾には目を瞑り特攻するしかないようだ。


 魔物の毛が逆立った瞬間に地を駆ける。

 少しでも毛を躱すために斜めに走り出した。


 しかし魔物もすぐに方向を修正してきた。

 ついに大量の毛が迫る。


 視覚に全ての意識を集中する。

 飛んでくる毛の中で顔や胸など致命傷に至るであろうものを見極める。

 その毛だけを片手の鉤爪で弾きながら前へ進む。

 弾き切れなかった毛が体に突き刺さる。鋭い痛みが走るが怯んでいる場合ではない。

 もう距離は5mを切っている。

 既に俺の射程だ。


 体を切り返し、可能な限り身を低くして全力で魔物に突撃した。

 魔物も近づかれ過ぎたことに気づいたのだろう。毛を放つのをやめて後方へ逃げ出そうとする。


 背を向けた魔物の後ろ足を鉤爪で深く切り裂いた。魔物はバランスを崩して倒れ込む。

 俺は倒れ込んだ魔物へ近づき、その首へ鉤爪を突き刺した。

 数秒ほど痙攣した後に魔物は動かなくなった。


 もう少し早く逃げ出せば間に合っただろうが、残念だったな。


 先ずは一匹目だ。


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