第11話 人外魔境
「具体的な内容は魔物の種類によるけど、例えばあなたが使った鼠型の魔物だと、音と匂いだけで自分からの距離に魔物の種類から大きさや特徴など、色々な情報がわかるようになるわ」
俺が魔血を摂取した時はなんとなく魔物の気配がわかるだけだった。距離や大きさなんてまるでわからなかった。
「魔血への順応度が高ければ高いほど、私たち開拓者は強くなるの」
「あ、やっぱりあなたも開拓者なんですね」
「あら、そういえば自己紹介をしてなかったわね。ごめんなさいね。私はミストっていうの。そこの馬鹿と同じく開拓者よ。よろしくね、後輩クン」
ニコリと笑ってミストさんが手を差し出す。
「俺はオルフェと言います。こちらこそよろしくお願いします、先輩」
こちらも自己紹介をし、ミストさんと握手をする。
「さて、魔血に関する説明はこんなものかしらね」
「それじゃあ次は、俺たち開拓者とは切っても切れない外界についてだな」
バトンタッチと言わんばかりにアラクネが話し出した。
「もうオルフェには知識に関して何の期待もしてないから一から説明するぞ」
なんて失礼なことを言うんだ。何も知らないのは本当だけど言い方ってものがあるだろう。
「お前は考えてることが本当に表情に出るな。見てて笑えるくらいだ」
やかましいわ。
「外界は三つの区域に分かれてる。人の手によって魔物の数が管理されている管理区域。お前が住んでいたところだな。次に、人の手が十分に行き渡っていない危険区域。お前が死にかけたところだ。そして最後に未踏区域。文字通り人類が足を踏み入れたことのない区域だ。この大陸の大半は未踏区域だな」
管理区域と危険区域は聞いたことがあるが、未踏区域は初めて聞いた。未踏区域が大半を占めるってことは、やはり人類は崖っぷちなのだろう。
「管理区域と危険区域には明確な違いが一つあるんだが、何かわかるか?」
「人の手で魔物が管理されているか否かじゃないの?」
「面白いくらいに予想通りの回答だ。不正解」
わかってんなら何で質問したんだこの性悪男は。
「お前のその反応が面白いからだよ。正解はな、その地域の母体と呼ばれる魔物の個体が討伐されているかどうかだ」
もう何度目かわからない新ワード。もう驚かなくなった。
「オルフェはそもそも魔物がどうやって増えるか知ってるか?知らないよな。奴らは俺たち人間や他の生き物と違って生殖活動をする必要がない。ある程度成熟すると勝手に子供を産んで増えるんだ」
知らないって決めつけるの良くない。知らないけど。
ていうか魔物ってそんなポンポン増えるものなのか。それだとこの世界は魔物で埋め尽くされてしまうのではないか。
「魔物の数が増えすぎるんじゃないかって思ってそうな顔だな。奴らは食べれるものなら共食いでも何でも見境なしだ。自分たちで数を減らしあってるから増えすぎるってことはないぜ。その代わり、食べた分だけ産むから減ることもないんだがな」
質問する前に答えを先に言われた。
そんなにわかりやすく顔に出ているのだろうか。
「そしてこれが一番大事なんだが、奴らは不思議なことに自分より強い魔物を産むことがない。必ず自分より弱い魔物しか産まない」
知れば知るほど魔物は意味不明な生き物だな。何だってそんな生き物がこの世にいるのか不思議でならない。
「母体ってのはその種の魔物の中で一番強い個体のことを指す。だから母体が討伐されているかが重要なんだ。母体さえ倒してしまえば、強力な魔物がこれ以上増えることがないからな。後は強い魔物から順に討伐していけば、普通の開拓者には手に負えないような魔物がいなくなって管理区域の完成ってわけだ」
アラクネにしてはわかりやすい説明だった。見直してやろう。
「俺たち開拓者の仕事は母体を討伐して人類の生存可能な管理区域を増やしていくことだ。わかりやすいだろ?」
アラクネはキメ顔で言い放った。
「したり顔してるところ悪いけど、説明し忘れてることがあるわよ」
アラクネの頬がひくひくと痙攣する。キメ顔が今は恥ずかしい。
「魔物の縄張りについての説明がされていないわ」
「あ、忘れてたわ」
最後の最後で締まらない男だ。
「魔物は同じ種類で集まって縄張りを作るの。あなたが放り出された危険区域は鼠型の魔物の縄張りね」
道理で鼠としか出会わなかったわけだ。
「その縄張りのボスが母体ってことになるわね。私たち開拓者は縄張りごとに危険区域を切り取って管理区域にしているの」
「ってことだ。理解できたか?」
無理矢理まとめようとしても無駄だからな!
多分これで説明回終わりです




