リベンジ卵焼き
やっとかっこいいヒーローの登場かと思いきや…
先日図書館で調べた和食の本を元にゆり子は理想の卵焼き作りにリベンジしていた。
今回はだしを加えるとふわふわになると書かれていたのでゆり子は今度こそと思い卵焼き器とメモした調理過程を交互に見返した。
「慎重に、焦らずにやればいけるはずよ」
そう自分自身に言い聞かせて卵液を注ぎ巻いていく。
最後の一巻きも無事に巻き終わり、ゆり子はホッと息をついた。
「ふぅ、見た目はいい感じね。味はお昼に食べて確認しなくちゃ」
一先ず満足そうなゆり子は出勤前からお昼を楽しみにしていたのであった。
お昼になり、今日も晴れていたので公園で食べることにしたゆり子はいそいそとお弁当箱を取り出す。
今日は卵焼きに時間をかけてしまったので冷凍のミニハンバーグをメインに、得意のキンピラと常備している五目煮、胡瓜の浅漬け、ベランダ菜園のミニトマト、ご飯は白米にした。
「さてと、卵焼きの味はどうかな?」
緊張しつつも卵焼きに手を伸ばし、一口かじる。
食感は今までで一番上手くいったと思える出来栄えだ。しかし、出汁が強すぎて卵の甘さが薄れてしまっている。
もぐもぐと咀嚼しながらゆり子は今回もダメだったと内心落ち込むのであった。
「うーん…今度こそ美味しくできると思ったのになぁ…」
「はぁ…」
思わず溜息の出てしまったゆり子にその時、大きな影がさす。
(また白井さんかな?)
そんな風に思いゆり子が顔を上げるとそこには知らないサラリーマン風の男性がいた。
「あの…?」
戸惑いつつもゆり子が声を掛けると男性と目が合う。
男性がゆり子の戸惑いの視線に慌てて返事をしようとするが、その前に大きなお腹の音がゆり子の耳に届いてきたのだった。




