ピリ辛チキンサンド
書いていたらヒーローがまだまだ出てきてくれなくなりましたが、あしからず。
ささっとお弁当を食べ終えたゆり子は昨日買ったばかりのサスペンス小説を読み始める。
新人賞をとった作家の2作目はテレビでも話題になっていた。
本を読むことは仕事でもあるがゆり子にとっては至福の時間。逸る気持ちを抑えて読み始める。
ゆり子が夢中になって読んでいるところに明るく高めの声が掛かる。
「ゆり子さーん!もうすぐお昼休み終わっちゃいますよー?急がないと!」
ゆり子がパッと顔を上げるとそこには後輩の白井さんが笑顔で立っていた。
「あ、ごめんごめん!また集中しちゃってて…」
「危うく遅れるところだった!ありがとう、白井さん」
公園の時計を見るとあと10分で昼休みは終わろうとしていた。
「んもー!ゆり子さんはしっかりしてると思いきや割とうっかりさんなんだからー!」
「私がしっかりしないと!って自然となるんですよねー」
そう白井さんは可笑しそうに言ってゆり子と一緒に歩き始める。
「白井さんは今日は外で食べてきたの?」
ゆり子も楽しそうに話しかける。
「そうなんですよー!今日はこの前雑誌に載ってたカフェのランチに行ってきました!」
「へー、あの食べたがってたサンドイッチだっけ?どう?美味しかった?」
ゆり子が味の感想を白井さんに聞くと、待ってましたとばかりにクワッと目を見開いて白井さんが話し始める。
「よくぞ聞いてくれました!ゆり子さん!」
「あの限定30食のピリ辛チキンサンドの美味しさときたら…!!」
「パリパリの鶏肉が甘辛のチリソースっていうんですかねぇ?なんかそんな感じのタレで味付けされてて、一緒に挟まってる野菜も瑞々しくて新鮮さが素人にも分かるんです!しかもパンもバターの良い香りがちゃんとするのにお肉の邪魔をしてないんですよー!」
「一緒に頼んだ果肉入りピーチティーも爽やかで最高でした!今度ゆり子さんも一緒に行きましょうよ!絶対他のメニューも美味しいですって!」
マシンガンの如く一気に喋り満足した白井さんは笑顔でゆり子に、来週のお昼休みに行きましょうね!と念押ししたのだった。
ゆり子たちは仲良く午後の仕事に戻っていった。




