1/5
ボソボソ卵焼き
ある晴れた日のお昼時、
職場の近くの公園のベンチに座りゆり子はため息をついた。
「はぁ…今日も失敗しちゃった…」
そう呟いたゆり子が見つめる手元には、朝焼いた卵焼き。
焼き目が強すぎる卵焼きは食べてみても見た目のような味付けをしており、ゆり子が目指す理想とは程遠いものである。
「なんでいつも焼きすぎちゃうのかなぁ…火加減に気をつけてるのにボソボソしてるし…」
「この前調べた方法でもなんか違ったしなぁ…」
そう呟きながらゆり子は黙々とお弁当の中身を片付けていく。
みなも図書館勤務の嶋野ゆり子は26歳の独身だ。
彼女のもっぱらの悩みは周りの友達が次々に結婚していくことではなく、弁当の卵焼きが上手く焼けないことである。




