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2話-6

緩やかに浮上する意識の端で外からゴミ拾いに勤しむ近所の人の談笑が途切れ途切れに聞こえ始めた。

目を窓に移してカーテンの隙間から外を覗くと、ワイワイと和やかにおっちゃん・おばちゃん達が活動していた。いつものように遮光カーテンがぴっちりと閉めてある。薄暗い中、手探りでカーテンを引っ掴むと思いっ切り開けた。

その反動でグイッと起き上がりベッドの上で胡坐をかく。少し伸びをしながら腕を曲げたり伸ばしたりしてみると、昨日感じた鈍い痛みはもう残っておらず、その事に少しだけホッとした気分になっていた。


しばらくぼんやりとしていたもののご近所の皆さんに勇気をもらった僕は「よしっ」と気合を入れて、ドアを見る。

ドアは昨晩の通りぴったりと閉ざされたまま、バリケードたる本棚にも異変は見られない。

ひたひたとした違和感がある気がする。でもそれが何かは分からない。

おっかなびっくりドアに近づき、本棚のこっちからドアをつついてみる。遊び部分が動くだけ。うん、いたって普通のドアだ。


ルーチン作業で、ドアの横の電気のスイッチを切る。とりあえず着替えを出そうと洋服ダンスに手を伸ばしかけたところで僕は固まってしまった。


何故、今部屋の電気が付いたんだろうか?

もう何日も夜間は部屋の電気とベッドの電気は点けっぱなしで寝ていたはずだ。だから、起きたらドアの隙間確認と電気の消灯がルーチンになっていたんだ。


なのにどうして?


そう言えば、起きた時に薄暗かった。ってそんなわけないじゃないか。

部屋の電気とベッドサイドのライトで、この部屋でベッドが一番明るい場所のはずなのに。

勢い込んでベッドに再びダイブしてライトを確認する。やはりライトは点いてはいなかった。スイッチはちゃんと切ってあった。


ベッドに備え付けられているライトもあるのだけど、元々本を読むのにそれじゃあ光量が心許なかった僕はスタンドライトを置いていた。それがきっちりOFFになっている。蛍光灯切れとかそういうのならまだ何となく許せたものを。まぁ部屋とスタンドライト2つがいっぺんに蛍光灯切れなんて起こしていたらそれはそれで怖いか・・・


昨日のことを思い出してみても火事場のクソ力を発揮するほどのあの状態で電気を消すなんてありえないし、そもそも消そうとも思わないだろう。記憶に残る昨晩の最後の情景だって煌々と電気は点いていた。


意味が分からない。誰かが消した?誰が?


今や部屋の中は明るいし、外も陽気な気配がしているのに、じわりじわりと僕の心に恐怖が降り積もっていく。

とりあえず、本棚をどかしてこの部屋を出よう。少し震える手を握りしめてベッドから降りると勉強机が目に入った。


その瞬間、僕は叫んでいた。今まで声を殺すようにこの事態に対してきたのに、それはあっけなく決壊してしまった。なりふり構わず、持って行きようのない感情が渦巻いて言葉にならない悲鳴がこぼれ出る。


机の上には昨晩姉に貸したマンガ5冊と姉のメモが残されていたのだ。


「マンガありがと。寝る時には電気は消さないと睡眠に良くないよ。おやすみ」

まだ続きます。

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