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5話-6

何とも言えず穏やかな時間を過ごした僕は、そのまま文庫本を最後まで読み切った。ふーっと息を吐きながら机の上に手を滑らせるように伸びをすると姉と目が合った。


「面白かった?」


おもしろかった!!まさかあの子があんな事になろうとは!と力説する僕にほほ笑みながらも姉はテキパキと片付けをしていく。それをぼんやりと眺めていると「お腹空いたね、お弁当食べよっか?」と言われてカウンターの上部にある壁掛け時計を見ると13時がやってきそうな時間になっていた。


姉の提案に頷きながらリュックを手元に手繰り寄せ、お弁当を出そうとした僕の手を姉はさっと掴んで司書室の方へ歩いていく。図書の先生に冗談交じりにお礼を言うと、そのまま図書室から出た。僕は?を浮かべつつ姉を見上げる。角を1つ曲がったところで僕の手を離した姉は「図書室でお弁当食べちゃダメなんだよ?市の図書館でも飲食禁止って書いてあったでしょ?」


確かに書いてあるのを見た事があった僕は、手に持ったリュックを背負い直して姉の後を付いていった。


到着した先は姉の教室のようだった。3階にあるその教室は僕の教室なんかとは比べ物にならないくらいに眺めが良かった。窓を少しだけ開けるとザァっと風が吹き込んですごく気持ちがいい。姉が机を2つ向き合わせてくっつけた陽当たりの良い窓辺の席に座ると、水筒からお茶を注いでくれた。母の作ってくれたお弁当はなんだか美味しくてあっという間に食べ終わってしまった。


ちょっと手持ちぶさた気味に教室を見回すと、将来なりたい職業の絵が貼ってある僕のクラスと違って(当たり前だけど)姉の教室の後ろには短歌?俳句?みたいなのが貼り出されていた。姉のももちろんあったけど意味はさっぱり分からなかった。「さっぱり分からなかった」という事だけ憶えている。結局誰の作品?を見てもよく分からなかったのだけど。ただサキちゃんの作品は何度見直しても見あたらなかった。


「サキちゃんのがないね?」

「うん、この授業の時はもう入院してたからね・・・」


姉は少し寂しそうな、悔しそうな微妙な表情を浮かべて答えてくれた。

僕のお弁当箱と自分のをまとめてカバンに入れた姉は、掃除道具入れの中から布巾(ふきん)を取り出して食卓として使用した机を丁寧に拭くと、窓を一度全開にして風を全身に受けた。ふわりと(なび)いた長い髪をぐいっとおだんごみたいにまとめて、姉は大きくひとつ息を吐きだした。


姉は自分のカバンの中からマンガを3冊取り出して、それを僕に手渡しながら口を開く。


「お姉ちゃん、ちょっと行くところがあるから、ここで待っててね」

まだ続きます

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