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5話-1

僕にはアレな姉がいる。




ある晩、食卓で姉がポツリと言った。


「今日サキちゃんが学校に来なかったんだ・・・」


サキちゃんというのは、当時小学5年生だった姉が一番仲の良かった友達で、2年生の夏休みから5年生の間過ごしたこの街で親友とも呼べる間柄だったと思う。

うちにもよく遊びに来ていたし、姉もよく遊びに行っていた。さすがにこの頃には僕も姉の後を付いて友達のうちへ行きたがったりはしなかった。そのレベルは幼稚園でちゃんと卒業してたし。



「あら?そうなの?サキちゃん病気?今インフルエンザ流行ってるみたいだしね」


母ももちろん彼女のことを知っていたので、少し心配そうにしていた。当時姉はよく熱を出していたので、それを心配してのことかもしれない。あっ、付け加えておくとアレのせいで熱が出ていたわけじゃない。扁桃腺が腫れて年に何回も熱を出していた。これは姉が手術をするまで続いたが、扁桃腺を腫らすのがアレだったとは考えたくないレベルの回数ではあった・・・



姉は少し遠くを見るような何とも言えない表情で母の話を聞いている。手洗い・うがいをしっかりしないさいよと言う母の言葉に僕も適当に頷きながら、そっと姉を見た。



姉がなぜそんな嘘をつくのか分からなかったからだ。だって僕は今日サキちゃんを見ている。学校の帰りに校庭で、しかも姉と話している姿を目撃していたから。


(ちな)みに「サキちゃん」は名前ではない。名字だ。ヤマサキだったか、サキモトだったか、正しい名字は覚えていないけど、ショートカットでおとなしそうな雰囲気の彼女は、いたって普通の小学生だった。きっと姉がアレだなんて知らなかったと思う。

3年生の時に姉たちが行った林間学校では、先生のおふざけの一環である怪談話を聞き終わった後半泣きになりながら何とか肝試しをやり遂げたものの、夜トイレに1人で行けなくなって姉に付いてきてもらったと気恥ずかしそうに話していた。


うん、すごく共感できる。きっと僕もサキちゃんと同じような末路を辿りそうだったから、姉がノリノリでしようとしたその怪談話を聞くのは止めておいたのも良い思い出だ。まぁ、そんな感じに普通の子だった。



だから、姉の「学校に来ていない」なんていう嘘がサキちゃんに意地悪をしているような感じがして、すごく嫌な気分になったのだ。


「お姉ちゃん、何で嘘つくの?

僕今日、学校でサキちゃんとお姉ちゃんが話してるの見たよ?」


2段ベッドの上段から勉強机に向かっている姉へと不満たっぷりに声をかける。一瞬鉛筆の動きを止めた姉は、しばらくして僕の方をチラッと見て「そう」とだけ言った。

5話が始まりました。

よろしくお願いします

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