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3話-9

次第に強まる雨は県境の山道に差し掛かる頃になると、豪雨と言っても過言ではない程の大した降りっぷりを見せていた。どれ位の降りっぷりかと言うと、ワイパーを一番早く動かしても3m先さえ見通せないような有様だった。ヘッドライトを付けて徐行していたものの、さすがに恐怖を感じた叔父と彼女さんはどこかで車を停めることにしたらしい。周りの状態さえ分からないから、追突とかしたりされたりの危険性も十分あった。もともと見通しもそんなに良くない山道だしね。


避難先になったのは、県境のドライブインだった。スコールさながら次々と流れるように降る雨の合間・・・はなかったけど弱めな時を見計らってダッシュで店内へと駆け込む。昔懐かしい感じの喫茶店?レストランで茶色の革張りのソファーはクーラーでひんやりしていた。彼女さんがタオルを貸してくれたので、それで頭や顔を拭いて人心地付けた。店内にぐるりとある大きな窓は滝のように雨が流れていて、まるで水の中にいるような気分にさせられた。昼間のゴーグル越しに見た水中とちょっとだけ既視感があったせいかもしれない。姉もガラスに手をついて見上げるように外を(うかが)っていた。


そんな窓に夢中な僕たち(これには叔父も含まれる)にちょっと苦笑しながら彼女さんがメニューを開いて見せてくれた。食事ではなく喫茶するために店に入ることなどほとんどない家で育てられた僕はテンションが上がりつつメニューを覗き込む。まぁ、そんな家に育てられたのは僕だけじゃなくて姉もそうだけど。


叔父はパフェを勧めてくれたけど、メニューに載っている写真を見ても大きそうでちょっと食べ切れる自信がなかった。お腹が痛くなっても嫌だし・・・結局姉と相談した結果、僕はメロンフロートで姉はレモンスカッシュに決定した。緑に浮かぶ白と中に入ったチェリーの赤から構成されるコントラストはとてもきれいだった。もちろんしっかり完飲完食した。姉が自分のレモンスカッシュに沈むチェリーをくれたことはきっともう言わなくても分かってもらえる事だろう。



僕たちがジュースを飲み終わっても雨は治まる気配を見せなかった。叔父は煙草を(くゆ)らせながら、ゆっくりとコーヒー(多分)を飲んでいた。格好つけているけどサトウもミルクもたっぷりだ。僕が彼女さんとテーブルの片隅に置いてある星座占いの丸い機械(?)について話している間、姉は窓の外を眺めていた。外は真夏の16時前だというのに、随分と暗くなっていて国道沿いに建てられたドライブインの看板にも自動点灯機能だろうか、もう電気が灯っている。雨がひどく、窓も叩きつける水で滲んでいたから看板をぐるりと囲む電球の明かりがポツポツと四角くぼんやりと見える程度だったけど。


突然姉が窓に付いていた手を放し、少しビクッとしながら窓から離れた。

「どうした?」と尋ねる叔父に答えたのか独り言なのか姉は「あっ!来る」と呟いた。向かいに座る叔父には良く聞こえなかったようで、「え?」と聞き返して来たまさにその瞬間、目の前の大きな看板に雷が落ちたのだった。

まだ続きます。

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