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3話-7

大きな浮き輪やビーチボール、シャチの・・・あれ何て言うんだろう、バナナボートとかって言うからシャチボートって言うのかな?ともかくそれ。シャチとイルカ、あとは普通のボートもあった。足踏みタイプのポンプを使って叔父達が次々と膨らませていく。僕はそんな前準備をワクワクしながら見ていた。


姉と運んだビーチパラソルが砂浜に立てられ、その下には真新しいレジャーシートが敷かれる。真っ青なそれは、もしかしたら叔父の会社にあったブルーシートだったのかも。シートが風で飛ばされないように真ん中にドンと鎮座ましましている大きなクーラーボックスには色んな飲み物が溢れんばかりだった。兄貴と義姉さんには内緒だぞとニヤッと笑う叔父の格好良さと来たらそれはもう眩いばかりだった。



僕が叔父の会社のお姉さんたちと浮き輪で遊んでいると、その横を姉はボートに乗せられて、お神輿のようにわっしょいわっしょいと声を掛けられながら沖へと連れて行かれた。足の届かない場所でせーのとボートをひっくり返されてキャーと悲鳴と笑い声を上げて海へと投げ出される姉。ずぶ濡れになりながらも楽しそうに笑っていた。会社の人達は姉を驚かせようと、潜ってはヒトデをボートの中に放り入れるものの、前にも言ったように姉はヒトデなんか気持ち悪がったりはしなかった。青灰色と朱色のコントラストがきれいなイトマキヒトデや黒っぽいナマコを大層喜んだ。ちなみに姉は釣りエサのゴカイや虫エサなんかも素手でいけるクチだ。実に頼もしい。


お昼ご飯は(のち)の叔母である彼女さん達女子チームが手作りしてくれたお弁当だった。腹ペコだったせいもあり夢中で食べたので個別の味の感想は、残念ながらない。早く食べて早くまた遊びたかったというのが大きいのだけど。



ギラギラ降り注ぐ昼下がりの陽射しは、泳ぐことで失い気味だった僕の体温にはちょうど良かった。僕はある程度泳ぐと唇が紫色になりガタガタ震え始めるという、七面倒くさい(たち)だった。それを叔父から聞かされていた今回のメンバーは唇が紫に変わりかけたりすると、すぐに海から上げてくれた。そして休憩と称して砂に埋められたりととても自然にケアしてくれたのでガチガチと歯の根が合わさらないような寒さを味わうことは1回もなかった。砂・・・ぬくい。

もっとも一番最初に気付くのはやはり姉だったのだけど。



泳ぎ疲れて砂浜で貝殻やきれいな石を探したりもした。姉が見つけた波にもまれて角の取れたブルーのガラスは曇りガラスみたいにちょっとだけくすんだ色合いをしていてとてもきれいだった。ポテンとしたその形も液体が固まったような何とも言えない造形で興味を惹かれる。姉は感嘆を上げる僕の方を見ると、掌の中にあるガラスをチラっと見て何のためらいもなく笑って僕にくれた。


「紫の石もきれいだったけど、これもきれいだね」


嬉しくてそう言う僕の言葉に姉は少し顔を顰め、髪の毛を一房クルっと人差し指に巻き付けながら口を尖らせた。


「こっちの方がずっときれいだとお姉ちゃんは思うけど」


そう言うと立ち上がって膝の砂を落とすと、バスタオル取ってを僕の肩に掛けた。自分もバスタオルをかぶるとグルリと空を見回す。しばらく見上げて視線を僕に戻すと、少し残念そうに笑った。


「雨が来るね」


僕も姉の真似をして空を見上げてみるけど、水平線の向こうに入道雲が見えるだけで、雨雲の予兆は全く感じられなかった。まぁ時間は15時前で帰り支度を始めるにはいいタイミングではあったのだけど。

まだ続きます。

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