3話-6
海と言えば日本海だと思うのはなぜだろう。
「泳ぐ」という前提は必要だが、それ以外の海が「なんかぬるい」と感じるのは一体どういう了見なのか。まぁ実際泳ぎ比べてみるとぬるいのだけど。気温・水温もさることながら人の多さもあるのだと思う。太平洋や瀬戸内海などLoveな人たちとちょっと険悪なムードが漂った事もあるのも・・・青春の1ページだと思っておこう。
そんな事はさておき、行先はやはり日本海だった。日本海をさんざん礼賛したもののウチの県に日本海はないので隣県に行くことになる。隣県とは言え2時間も地道を走れば日本海に辿り着けるのもウエイトが傾く一端を担っているのだと思う。
その日も前回川へ泳ぎに行った時と負けず劣らずいい天気だった。8月の前半、朝早いにも関わらず突き刺さるような日差しの勢いも絶好調。もちろん僕たちのテンションも高かった。僕も姉も着替える手間を省くために、もちろん水着を着て行った。気になる人はいないかもしれないけど、当時姉の水着はオレンジ色のセパレート(?)タイプっていうのかな?上下が分かれているやつだった。スクール水着は僕のも姉のも大きな名前付きゼッケンがついているので、そんなのは遊びに行く時には恥ずかしいから着ない。多分子ども達が迷子になっても見つけやすいように姉はオレンジ、僕は黄色の水着だった。
助手席に乗っていた当時は彼女だった叔母は、とても優しく僕たちに接してくれた。
叔父も優しくて、ジュース買ってくれたりおやつを持ってきてくれていたりととても楽しいドライブだった。だた僕は人見知り小僧で姉は空気を読むことに長けていたから、この時も甘やかな前部座席を察して後部座席でニコニコと大人しく座っていた。その上僕は車に酔いやすいタイプだったので、出発前に飲んだ酔い止めが効いていて少しウトウトもしていた。この後のお楽しみに向けて充電中であったと言い換えておく。
遂に曲がりくねった県境の峠を越えると、見上げる空は少し色を変えていた。
海が近いこと独特の少し薄く緑色がかかったような青色。何度見ても気分がいい。走る車の窓から海が見えるのを今か今かと待ちわびていた。
「うーみーーー!!」
海が切れ切れに見え始めると僕たちは窓を開けて大きな声で叫んだ。ちなみに姉は大人になっても言っていたようだ、さすがに大声で叫んだりはしてなかったようだけど。
全開の窓から身を乗り出さないように窘められながら、バサバサと髪を逆巻かせ大はしゃぎで民家や防砂林の間からチラチラと見え始めた海を眺める。
駐車場に到着した叔父の会社の人の車は5台。なんと子どもは僕たち2人だけだった。
お手伝いで大きなパラソルを姉を2人でえっちらおっちら運びながら、僕はキラキラ輝く海へ走り出したいのをぐっと抑えていた。
まだ続きます。